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2 困惑

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 呆気にとられながら隣に座った学は瑛子に微笑みかける。


「宜しく」


「宜しくお願いします」


 戸惑いながら瑛子もそれに答え微笑み返しす。


 間近でイケメンな学をみて、目の保養だと思いながら見つめ返していると、学の向こう側の席に座った栞奈がこちらを見ていることに気づいた。


 瑛子がそちらに視線をずらすと、栞奈が般若のような形相でこちらを睨み負のオーラを放っていた。


 もしかして瑛子は学が好きなのかもしらない。そう思いこっそり学に伝える。


「反対側に座った子、ずっと彼方のことみてますよ」


 学は怪訝な顔をして栞奈の方を見たので、瑛子はあらかじめ机の上に配られていたプリントに目を通し始めた。


「後ろの席の生徒は、問題を解決したか? では始める」


 護はこちらの様子を見ながらそう言うと、黒板に自分の名前を書き軽く自己紹介をした。


 続けて、生徒一人一人の自己紹介に移り、それが終わるとこの後行われる入学式の段取りの説明をした。


「うちのクラスは入って一番奥の二列の席だ。教室の廊下側の二列を先頭に、順に左隣の者とペアを組んで並んで座れ」


 すると栞奈が手を挙げ、護に発言の許可をもらうと話し始める。


「先生、私の隣がいません」


 そうなのだ。教室は横に六列、縦に5列である。そして、栞奈の右隣は空席になっているのだが、前方の空席は窓際最前列でちょうど並んで二席の空席になっていた。


 なので、先生の言った通りに座ると隣の席と若干のズレが生じてややこしいことになる。


 瑛子は先ほど睨まれたこともあり、ここは栞奈に譲ってあげるべきだと思い、手を挙げ発言許可をもらうと言った。


「そもそも、私が一番後ろに一人で座るはずでした。なので丹家さんは催馬楽君と座って、私は一番後ろに座ります」


「えっ? でも、それじゃあ喪山さんに悪いですぅ」


 上目遣いでそう言いながら護を見つめた。


 私の名前は櫤山(たもやま)だってば!


 心の中で突っ込みをいれながら微笑む。


「いいんです。一人は寂しいでしょうから」


 一時でも社会に出たことのある瑛子は、一人でも全然問題なく過ごせる。それ以前に言うかどちらかと言えば一人の方が気楽でもあった。


 ただ、学生時代の時の誰かと群れていないと孤立する、一人になることを異様に恐れる感覚も良くわかっているつもりだった。


 社会に出ればそんなのくだらないことだったと気づくが、学生のうちは学校内での生活が全てで、それに従わなければならない、と言う空気がある。


 それなら、中身アラフォーのメンタルが強い自分が一人になった方が良いだろう。そう思ったのだ。


「ではそれで」


 護は短くそう答えた。


 もめることさえなければ、どうでも良いことなのだろう。


 そう言う認識のズレを理解しないまま、教師が取った行動によって、生徒間が問題を起こすのかも知れない。


 ぼんやりと、瑛子はそんなことを考えていた。


 不意に視線を感じ横をみると、瑛子の顔を真剣な眼差しで見つめる学の視線にぶつかる。


 瑛子はなんだかんだ言っても、本当は栞奈と並びで座りたかったツンデレの学が、瑛子に感謝を伝えてくるのかと思いながら声をかける。


「どうしました?」


 学は優しく微笑むと瑛子に言った。


「君はとても心根の優しい人なんだね。他の人の寂しさがわかるなんて」


 瑛子は自分に前世の記憶があり、人税経験が豊富だからこんな行動が取れただけだと思いながら答える。


「ありがとうございます。でも買いかぶり過ぎです」


 そう答えると、筆記用具を片付け席を立った。


 体育館へ移動していると入学したばかりでしゃべる相手がいないせいか、生徒たちは静かに移動していた。


 すると栞奈が瑛子に近寄って来た。


「喪山さん、さっきは列変わってくれようとしたからいい人なんだと思うけど、催馬楽君に色目とか使わない方が良いよ? 女子に嫌われるから」


 そう小声で早口で言うと哀れみの表情で瑛子を見つめる。瑛子は、私の名前は櫤山なんですけど、お心の中で突っ込みながら苦笑して返した。


 瑛子は栞奈のこの発言から、栞奈という人間はなんだか面倒くさい人物なのかもしれないと感じた。


「忠告ありがとう、丹家さんや催馬楽君には関わらないようにするね?」


 そう答え、目を合わせないようにして足早に体育館に向かう。するとそこで学に腕をつかまれる。


「今、丹家さんに何か言われてなかった? 大丈夫?」


 学に関わると、また栞奈に絡まれる。そう思い、慌てて自分の右腕をつかむ学の手を外そうとしながら言った。


「心配してくれてありがとうございます。催馬楽君は心配性なんですね、でも……」


 だが、学はそんな瑛子の左手を優しく包むように握った。


「そうか、本当は怖がっていたんだね。また丹家さんに絡まれるといけないから、体育館まで付き添うよ」


 そう答えて瑛子の右腕を掴んだまま、横を歩きだす。


 いやいや、そういうことじゃない。一緒に歩くほうが不味いんです。


 そう思い、学に必死に訴える。


「大丈夫ですよ? 本当に、これ以上催馬楽君にも迷惑かけられないし、丹家さん良い子で、私にさっきの席のお礼言いに来ただけですし」


「わかってる。後ろから見てたけど、そんな雰囲気じゃなかったのはわかってるから」


 学はそう言うと微笑んだ。


 どう言えば伝わるのか、瑛子はこんわくしながらそっと栞奈のほうを見る。


 すると背後で栞奈が、負のオーラを放っていた。瑛子は栞奈に申し訳なく思いながら、学に付き添われ体育館へ入った。


 催馬楽学が隣に座ってしまうのではないかと心配したが、体育館に入ると瑛子の腕を離した。


「また後でね」


 学はそう言い残すと栞奈の横に座った。


 ホッとしながら瑛子も着席する。


 瑛子は、学はとても面倒見のよい人間なのかもしれないが、それが栞奈のほうへ向いてくれることを祈りつつ前方を向く。


 その時、誰かが瑛子に話しかけた。


「隣の席、空いてる?」


 声のほうを見ると、振り向くと緑が立っていた。驚き戸惑っていると、緑は優しく微笑むと言った。


「俺、新入生代表の挨拶を読むことになってるんだ。それで端の方が前に出やすいから、ここ空いてるなら座っていいかな?」


 当然よろしくないが、入学式当日から問題を起こす訳にはいかない。瑛子は笑顔を作ると返す。


「どうぞ」


 席に着くと緑は瑛子に小声で話しかける。


「やっぱり、君とはなにかの縁を感じるよ」


 その縁を私ではなくヒロインの栞奈に向けて下さい!


 そう思いながら思わず栞奈を見ると、栞奈が鬼の形相でこちらを睨んでいるのに気づく。やはりヒロインである栞奈は、緑にも興味があるのかもしれない。


 そんなことを考えていると、横で瑛子を見つめていた緑が、瑛子の視線の先を辿り栞奈が瑛子を睨んでいるのに気づき尋ねる。


「君たち、ケンカでもしているの?」


 栞奈の般若顔を緑に見られてしまったことを残念に思いながら、瑛子はヒロインをフォローする。


「違います、違います。彼女目が悪いみたいで。遠くを見るときはあんな顔をしてしまうみたいですけど、可愛い子なんですよ? 話してみれば良い子だってわかるはずです。今度話しかけてあげてくださいね」


 栞奈には頑張ってもらいたい。できればそれを横で出歯亀するポジションが一番望ましいのだから。


 そのためにも、瑛子は栞奈をしっかりフォローをしなければと思った。


 本来なら、栞奈と同じクラスになれたのだし親友になって真横でそれを見たかったが、今までの栞奈の行動や言動を思い返し、それは無理そうだと思っていた。


 そんなことを真剣に考えていると、緑が優しく瑛子に尋ねる。


「それは本当? 俺は君が彼女に睨まれて悲しそうにしているように見えるけど。だいたい、なんで君はここで一人で座っているの?」


 瑛子は慌てて答える。


「そんなふうに見えました? でもそんなことありませんし、大丈夫ですよ? それに、生徒が一人余ってしまって、どちらにしろ誰かがここに座らなければならなかったとので、仕方がないと思います。心配してくれて、ありがとうございます」


 そこまで言うと、微笑んで話を逸らす。


「それにしても新入生代表なんて、凄いですね」


 緑は少し照れた様子で答える。


「そんなことないよ」


 そんなことなくはない。確か挨拶は入試がトップだったものが任命されるはずだ。


「そんなことありますよ。あっ、入学式、始まるみたいです。挨拶頑張って下さいね、応援してます」


 そう言うと前方を向いた。

誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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