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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 夏休み前になり、教室で和木野(わきの)美依(びい)


「海かプール行こうよ。瑛ちゃん水着買えば?」


 と言ったが、瑛子は最近成長期でサイズが変わってきていたので


「バイトする予定だから、買ってもいいですけど、最近胸回りとかサイズが変わってきちゃったから、せっかく買っても来年着れなくなっちゃうと勿体ないですし」


 と答えた。すると、和木野美依は


「なんで? 今のうちにしか着れない水着だってあるし、瑛ちゃんスタイルいいからビキニとか着なよ~」


 と肘で瑛子をつついた。瑛子は


「いや、ビキニはちょっと」


 とは言ったものの、水着買ってプールとか行ってもいいな、私これでも若いんだし。と思った。

 そんなふうに和木野美依と、夏休みの計画をたてたり、水着の話をしたりして、瑛子はしみじみ、これが普通であって以前がやっぱり変だったのよね。と思い始めた。


 夏休みに入り、瑛子は早速アルバイトを始めた。社会人を経験している身としては、自分で稼いだ自由になるお金がないと、居心地が悪かったからだ。それに夏休みに好き勝手できるのは、一年生の時ぐらいだろう。今のうちに遊んでおこうと、バイトがお休みの日は、和木野(わきの)美依(びい)を誘って遊びに行ったりもしていた。

 そんなある日、和木野美依が夏休みの宿題を手伝って欲しいと言ってきた。


「だって瑛ちゃん頭いいし、教え上手なんだもん」


 と言うので、瑛子は


「では、瑛子先生に任せなさい。可愛いびぃちゃんに手取り足取り……ふっふっふっ」


 などと冗談を言いながらも、その話を受ける。レポート提出の必要な宿題だったため、学校の図書室で資料を見ながら行った方が、効率が良いと言う話になり、和木野美依が部活の用事で登校する日に予定が決まった。

 当日、学校の前で待ち合わせをしたが、和木野美依に


「ごめん、先に用事だけちゃちゃっとやってくるから、教室で待ってて」


 と、言われたので、教室で待っていた。それにしても、と瑛子は思う。自分が学生の頃、学校の図書室とか便利なものがあるのに、なんで利用しなかったんだろう? そう思いながら、誰もいない教室の中を眺めた。そして、二ヶ月ほど前、ここで“体育祭だより”を書き終わるまで芦谷(あしや)先生が待ってくれていたことを思い出す。カレー、ご馳走することはもう二度とないだろうな。と、楽しかった日々を懐かしく思った。

 そして思う、あの日々のどこまでが本当で、何処までが嘘だったのだろう? と。


 瑛子は、エアコンの利き始めた教室で、机に伏せて目をつぶった。

 そのままうたた寝をしてしまった瑛子は、誰かに頬をなでられた感触がして目を覚ました。頭を軽くあげて、寝ぼけ眼で見ると和木野美依に体を揺さぶられていた。


「起きた? 瑛ちゃん、気持ち良さそうに寝てたね。よだれ垂れてるよ?」


 と和木野美依に言われて、瑛子は慌てて


「えっ? うそ、ほんと?」


 と口許を拭き


「昼下がりの誰もいない教室が、心地よすぎました」


 と笑って答えた。その後、図書室へ移動し宿題を二人でやった。人気のない学校の図書室は、誘惑がなく、必要な参考書や資料が直ぐに取り寄せられる環境なのもあり、思いの外はかどった。瑛子が


「たまに来て、一緒に宿題やったら結構早めに宿題終わりそうですよね? またやりません?」


 と、和木野美依に言うと、和木野美依も


「それ、名案かも。ついでに返りにどっかでお茶しようよ! それで、遊ぶ計画立てよ!」


 と、楽しそうに微笑んだ。

 そんな和木野美依や、アルバイトをこなすことで、夏休みもあっという間に過ぎていった。

 夏休みが明けて、二学期が始まった。学校に来るとやはり色々考えてしまったりもしたが、文化祭があったので、今度はその準備に終われる。しみじみ、学校って本当に行事が忙しいと、実感した。

 そんな日々の中、突然瑛子に対しての嫌がらせが再開した。以前と違い、上靴に何かが付着しているとか、配られたプリントのうち大切な一枚だけ抜かれているなど、本当に嫌がらせなのかどうか判断に困るようなものが多かった。なので、瑛子は芦谷先生に報告しようか迷ったあげく、しばらく様子を見ることにした。


 瑛子のクラスは文化祭で演劇をすることになっていた。水戸黄門を少しコミカルにアレンジしたものをやることになったのだが、瑛子は、なんで水戸黄門? 渋すぎやしないかい? もっと、ラブストーリーとかあるだろうに、最近の高校生の考えることはわからん。と思いながら、道具係に立候補して衣装や小道具を作る作業に追われていた。


 ヒロインは、悪代官に手込めにされそうになる町娘に立候補していた。瑛子は、なんだヒロイン、『アーレーお止めになって~。帯ひもくるくる~』を、やりたかったのかな? てっきり“疾風のお(えん)”の役をやりたいと騒ぐかと思ったけど……。まぁ流石に高校生は、疾風のお娟知らないか。と言うか、知っていても高校の文化祭でお色気担当を出すのは不味いよね。と、そんなことを思い内心苦笑いした。

 催馬楽(さいばら)(がく)は格さんの役になった。瑛子は催馬楽学の真面目なところが役に合ってると思った。


 ヒロインは最近瑛子と催馬楽学の関わりがないことに、上機嫌で催馬楽学に絡んでいた。文化祭の準備をしている時もこれ見よがしに、瑛子の目の前で


「学君、ごめん、これ重くって持てなーい。持ってもらっていい?」


 と言って、催馬楽学が


「しょうがない。今回だけだ」


 と言って持ってあげると、瑛子をチラリと見て


「学君、優しい」


 と、見せつけるようにベタベタしたりしていた。瑛子は持ち前のアラフォースキルで、全てスルーすることにした。と言うか演劇の準備で忙しくて、相手にしていられないと言うのが正直なところだった。


 小道具の印籠は売っていたので、買えば早いのだが、そういった小物も全て手作りでないといけなかったので、授業が終わると、瑛子たち女子は衣装や小物を作る作業。男子生徒は大道具を作るのに一生懸命になった。遅くまで残らなければならなかったが、それがまた楽しくもあった。


 そんなある日、嫌がらせをされてると決定的にわかる出来事があった。その日も文化祭の準備で遅くなり、一緒に作業をしていた和木野美依と下校するため、下駄箱へ向かった。

 下駄箱の前で下履きを出そうと、靴に指を入れる。と、冷たい物に指先が当たった。瑛子はなんだろう? と、思いながら靴をひっくり返すとカッシャーンと音がし床に何か落ちた。見るとカッターの刃だった。

 横で見ていた和木野美依が


「うわっ!」


 と叫んだあと、落ちたカッターの刃を見て


「瑛ちゃん、これ、ヤバくない? 大丈夫? 先生に言った方がいいよ」


 と言ったので、瑛子は頷くと、慎重にそのカッターの刃に指紋がつかないよう、そっと拾いあげた。そして、鞄からお昼ご飯を入れていたフリーザーバックを取り出し、その中に入れた。袋に日付と時間、場所を書き込む。和木野美依が


「何してるの?」


 と言うので、瑛子は冷静に


「証拠の確保」


 と言った。今までされてきたことも、日時とどんなことをされたのか記録に残し、証拠がある場合は全て確保してきた。瑛子は


「前に結構騒ぎになったじゃないですか、だから文化祭が終わったら、全部の証拠持って先生に報告しようかと思ってます」


 と和木野美依に言った。和木野美依は


「瑛ちゃん、文化祭待たないで早く言った方がいいと思うよ? 先生もそう言うの報告欲しいだろうし」


 と言ってくれたが、せっかくみんなが楽しみにしている文化祭に、水を差すようなことになったらと思うと、直ぐに報告する気にはなれなかった。瑛子は


「文化祭まであと数日なんで、大丈夫ですよ」


 と笑った。和木野美依に


「私は瑛ちゃんのその冷静さ、尊敬する」


 と言われ、だって中身はアラフォーだし、と内心思いながら笑ってごまかした。


 文化祭当日、演劇が始まるまでは他クラスの出している出店や、メイドカフェなどを和木野美依と回ることにした。

 最近は文化祭の忙しさと、和木野美依が色々と気を遣ってくれているお陰で、そんなに嫌なことを考えずにすんでいたが、やはり、嫌がらせが再開したことや、芦谷先生やみんなと仲良く話せなくなったことは、瑛子にとって辛い現実として、いつも頭の片隅にあった。時間ができるとついつい考えてしまい、気丈に振る舞ってはいるものの、ストレスを感じていたのだ。

 だからこそ、今日は思う存分楽しんでやれ、と思った。


 瑛子たちの演劇の時間となり、召集がかかったため体育館の裏手に集まった。演劇中、瑛子は小道具係として舞台袖でセットの交換などを行う黒子の役割だったので、そのスタンバイをした。

誤字脱字報告ありがとうございます。

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