表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/27

16

文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 瑛子宛の手紙には


櫤山(たもやま)瑛子様

 貴女はご存知ないかもしれませんが、貴女の周囲にいる人達の手元には、同封した手紙が高校の入学以前に郵送されており、彼らはその手紙の内容にそって貴女の側にいます。貴女を本当の意味で守ろうとしている訳ではありません。決して彼らを信用しないことです』


 と、書いてあった。瑛子は同封されている怪文書に目を通す。


神成(かんなり)(りょく)

 入学の日に出会う、唯一の星が世界の秘密を握る。その星は、みんなから狙われている。その星を守り、手に入れた者が世界を知る』


催馬楽(さいばら)(がく)

 入学の日、彼方の隣に現れた純粋な星は、世界の秘密を握る。その星は、みんなから狙われている。その星を守り、手に入れた者が世界を知る』


栗花落(つゆり)(かなめ)

 新生のその星は、まばゆく輝きその目に停まる。その星は、みんなから狙われている。その星を守り、手に入れた者が世界を知る』


芦谷(あしや)(まもる)

 彼方の直ぐそばに、彼方を見つめる純粋な星がいます。その存在に気づき、手に入れれば世界を知る』


 読み終わり瑛子が思ったことは、この怪文書を書いた人物は間違いなく“晴れ彼”を知っている、もしくはプレーしたことのある人物だろう。と言うことだった。

 その人物はゲームの内容を再現するために、こんな怪文書をわざわざゲームの登場人物に送りつけたように感じた。


 だが、怪文書を全員分読んでいて、ひとつだけ気になる点があった。それは芦谷先生あての怪文書だけ入学の日や、新生などの入学式の日に新入生と出会うと言うと匂わせる一文がないと言うことだ。

 この文章だと、まるで以前から側にいる人物に目を向けさせようとしているように見える。


 そして、なぜ神成緑が入学式の時に、あんなにも強引に瑛子に近づいたのか疑問が溶けた。彼との一番最初の出会いは、スマホを拾ってもらった時だ。瑛子はあの時スマホを受け取った時に、最も星のチャームが見える方法で受け取った記憶がある。

 しかも落としたスマホが足元に滑ってくるなんて、神成緑からしたら仕掛けられたように感じただろう。

 そして、催馬楽学も隣に座った時に、瑛子が優しくヒロインに話しかけている姿をみて、この怪文書と合致していると思い、近づいたのではないか。それに彼も神成緑と同じく、スマホに付けている星のチャームを気にしていた。

 栗花落先輩と出会った時も、目立つ出会いかたをした上、天井に星があると瑛子は発言した。

 芦谷先生には、送ってもらう車の中で、星は純粋だと言った記憶がある。


 それらは全て偶然の出来事だった。だが、その偶然の出来事が重なり、本来ならヒロインに向けられるべき、ゲームの登場人物たちの目が、瑛子に向いてしまったのだ。


 更に、それによって、瑛子は妬まれ、嫌がらせを受ける結果になった。その状況は“狙われている状態”となり、怪文書を送られた者たちは、瑛子が本当に“狙われている”と思っただろう。


 ヒロインの今までの言動から“晴れ彼”の内容を知っているのは確かだ。こんな手の込んだことをして一番特をするのは、ヒロインしかいないので、彼女が一番疑わしい。けれどあの丹家栞奈に、こんな手の込んだことができるとは思えなかった。


 そして、この怪文書を制作した者にとって、最早瑛子は邪魔者以外の何者でもないだろう。

 ヒロインが軌道修正をかけているが、瑛子の存在でそれらが全て失敗に終わっている。

 でも、だからと言って殺意を向けるほどのことなのだろうか? これでは乙女ゲームどころではなくなってしまい、本末転倒である。


 それにしても、この封筒を渡してきた人物は、瑛子をつけていたのだろうか? そして、わざわざ瑛子に渡した目的はなんだったのだろうか? おそらくこの情報を流した人物は、瑛子が前世の記憶を持っているとは知らないはずだ。でなければ、こんな情報を流してしまえば、手の内が露見することになる。


 わからないことも多かったが、わかってきたこともあった。なぜみんなが瑛子から怪文書の存在を隠したのか? それは、最初に近づいた理由に、少なからず後ろぐらいことがあったからなのだろう。瑛子はショックと言えばショックだったが、友達と言える存在になってからの彼らは、本当に心配してくれているようだったので、それを責める気にはなれなかった。

 しかも、あんな怪文書を送られては、気になって調べたくもなるだろう。


 もしも、瑛子に前世の記憶がなければもっと、相当ショックを受けただろうが、前世の記憶がある今では、そりゃ、こんな圧倒的モブに、あんなイケメンたちが仲良くしようとする訳がないのよね。と酷く納得してしまっている。

 今となっては、変に勘違いして浮かれたりして、生き恥さらさなくて良かったじゃない。と自分を納得させた。


 芦谷先生のことを考えると、胸が痛んだ。瑛子は先生が、瑛子が生徒だから気にかけてくれている、と言うことを、重々承知している。それにしても、やけに気にかけてくれているような気になっていた。だが、それはこの文章を読んだからこそなのだろう。まぁ、そもそも瑛子はまだ高校生だ、あの常識人の芦谷先生が相手にするはずもない。


 みんながどんなに優しくても、勘違いしないようにしよう。それがあの怪文書に縛られて、瑛子を守ろうとしてくれている彼らに対する最大限の礼儀なのではないだろうかと思った。


 きっとこの件が解決すれば、自然とみんな離れていくだろう。瑛子の側にいる必要など全くないのだから。

 それでも、いや、だからこそ早くこの件を解決せねばと瑛子は思った。この怪文書の内容に縛られていてはいけないのだ。みんなが縛られずに自由になること。今はそれが最優先である。


 そのためにも、まずは情報の摺合せが必要だと瑛子は感じた。明日は学校へ行き、みんなに正直にこの書類をもらったことを話し、前世の記憶をかいつまんで説明しよう。信じてもらえるかわからないが、おそらくその情報があれば、解決への近道になるはずだ。


 瑛子は、両親に明日どうしても学校へ行かなければならない理由ができたと話し、芦谷先生にも連絡を入れた。反対されたが、どうしても必要なことだからと押しきった。


 次の日、神成緑と栗花落先輩が瑛子を迎えにきた。もしかしたら、二人に送り迎えをしてもらうのは、これが最後になるかもしれない。と思いながら笑顔で、二人に朝の挨拶をした。神成緑は心配そうに


「瑛子、本当に大丈夫なのか? あれからそんなに日が経ってないのに」


 と言い、栗花落先輩は


「学校に着いて、思い出したりして無理そうだったら直ぐに言って」


 と言ってくれたので


「はい、心配かけてすみませんでした。でもいずれ、学校には行かないといけませんから。逃げてられません」


 と答えた。

 学校に着いて、教室へ行くと催馬楽学も


「瑛子、辛くなったら直ぐに言ってくれ」


 と声をかけてくれた。瑛子は、無理に明るく振る舞えば、それはそれで無理をしているのではないか? と疑われるので、普通に過ごした。

 午後になり、芦谷先生に話してみんなで応接室に集まることになった。

 芦谷先生が


「で、櫤山何があった?」


 と、訊いてきたので、瑛子は封筒から昨日の手紙を出し、テーブルの上に乗せた。そして、その手紙を手に入れた経緯を、ざっと話した。芦谷先生が一瞬険しい顔をし


「その後、誰からも接触はないな?」


 と瑛子の無事を確認した。瑛子は


「大丈夫です。その後は父と一緒でしたし」


 と言ったあと


「とりあえず、みんなに内容を見てもらいたいんです」


 と言うと、芦谷先生がそれを制し


「まて、それは証拠品だ。コピーを取って原本は預からせてもらう」


 と、書類を直に触らないように慎重に持つと、職員室へ持っていった。一瞬だが、手紙の中身がみんなにも見えたようで、芦谷先生が戻って来るまで、みんな無言だった。

 芦谷先生がコピーを持って戻って来ると、全員に配った。瑛子はそれに全員が目を通すのを待った。神成緑が手紙を読み終わった瞬間に顔をあげ


「瑛子、俺たちが黙ってたのは……」


 と申し訳なさそうに話し始めたので、瑛子は首を振り


「私は別にみんなを責めるつもりもなければ、怒ってるわけではないんです。まず、確認したいのはそこに書かれていることは、事実であるか? と言うことと、それをふまえたうえで、私もみんなに秘密にしていたことがあるんで、信じてもらえるかわかりませんけど、話しておきたくって」


 と、言った。みんなが顔をあげて瑛子を見た。瑛子は説明し始めた。


「信じてもらえないかもしれませんが、私には前世の記憶があります。その記憶の世界で『晴れた空のしたで彼方と』略して“晴れ彼”って言うゲームがあるんです。そのゲームは女性向けのゲームで、一定のイベントをクリアしながら、男性と仲良くなって、ハッピーエンドを目指すゲームなんですが、そのゲームの舞台がここ星春(ほしばる)高校なんです」


 そこまで瑛子が話しても、誰も笑う者はおらず、瑛子がその先を話すのを黙って聞いていた。

誤字脱字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ