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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。
瑛子は、みんなを休日に呼ぶことにした。せっかく自宅に招待するのだから、ゆっくり話をしたかったからだ。
その日は瑛子は朝から夕食を作り始め、早めに準備をすませてみんなを出迎えることにした。メニューはバターチキンカレーにした。甘いカレーが好きなので、玉ねぎは通常の二倍入れハチミツも入れる。
みんなの口に合うだろうか? そう思いながら作っていると、横で勝が
「何か手伝うことはあるか?」
と訊いてくれた。が、これはいつもみんなにお世話になっていることに対しての、感謝のおもてなしだ。なので、勝に手伝ってもらうわけにはいかない。瑛子一人で勝の手は借りずに、デザートのシフォンケーキまで一人で作った。
カレーにシフォンケーキは微妙かも……とも思ったが、冷凍庫に入っている余った卵白を消費したかった。瑛子は、いつも在庫処分で申し訳ない。と思いつつ全ての準備をすますと、自分の格好を見た。流石に自宅だからといって、タンクトップに短パンって女としてどうなんだろう?
そう思っているうちに、インターホンが鳴る。時計を見ると午後の三時を回っていた。約束の時間だった。瑛子は、ヤバいもう来た、とエプロンを外すのも忘れ、玄関に走る。玄関ではすでに勝が対応しており
「いらっしゃい、今日はゆっくりしていって。瑛子が朝からウキウキでご飯作って待ってたよ」
と、いらないことを言っている。勝は瑛子を見ると
「瑛子、なんて格好してる!」
と言ったが、瑛子は
「だって、カレーを作るときに服についたら染みになるじゃない。だからエプロンしたの。慌てたから外すの忘れただけ」
と、エプロンを外す。呼ばれた面々は目を覆った。神成緑が
「瑛子、そういう問題じゃない。とにかくもう少し露出の少ない服に着替えてきてくれ。俺らはそれまで待ってるから」
と言ったので、暎子は自分がとんでもない格好をしていると気がついて
「やだ!」
と、今更ながら胸と足を隠しながら自室へ着替えに戻った。暎子はちゃんとした女子高生なら、服装も考えるのだろうけど中身アラフォーなせいか、こういう細かいところが無頓着で変なものを見せてしまって、申し訳なかった。
そう思いながら、前世で男性が、女性の肩の所からはみ出している下着などを、見たくもないのに見せられて、うんざりする。と書いてあった記事をネットのどこかで読んだのを思い出していた。
かけてあったワンピースを着ると、一階に降りていった。リビングに入ると、勝がみんなの分のお茶とお菓子を用意してくれていた。本当はもてなしとして、これも自分でやりたかったが仕方がないと思いながら
「さっきはとんでもないものを見せてしまって、ごめんなさい」
と、とりあえず謝る。催馬楽学が視線を反らしながら
「いや、とんでもないと言うか……。と、とにかく気にしてないから大丈夫だ。それに、そのワンピースもいいと思う」
と言い、栗花落先輩が
「うん、僕もそのワンピースは似合ってると思う。あと、櫤山さんは少し隙があるって言うか、まぁ、そんなところもいいのかもしれないけど」
と言って苦笑いをした。瑛子は
「ありがとうございます、そうやってみんなが甘やかすのになれちゃうと駄目ですね、気を付けます」
と頭を下げた。神成緑が
「瑛子はそう言うところ、少しずれてるんだよね」
と言って微笑んだ。瑛子はなんのことかわからず、とりあえず笑ってごまかした。
その後、学校のことやテレビのことなど、他愛もないことを話した。だが、みんな瑛子に気を遣ってか、先日の事件の話題は誰も口にしなかった。それどころか、あの事件から数週間、学校でも誰一人としてその話題を出さないようにしていた。瑛子は、事件の解明のためにも、その話をするのは避けて通れないと思っていたので、あえてこの場でその事件のことを口にした。
「ところで、この前の事件のことなんですけど。三年生の間で流されていたあの噂って、どうやって誰が流したんでしょうね? 芦谷先生は気を遣ってるのか私にはなにも話してくれないから。みんなは何か聞いてますか?」
瑛子がそう訊くと、神成緑が苦い顔をして
「少しは聞いてるけど、瑛子に話せるほどの情報はないよ」
と言った。瑛子は歯切れの悪い神成緑の言葉に何か隠してると思い
「でも、私は当事者ですよ? 少しの情報でもなにかわかったことがあれば教えて欲しいです」
と食い下がる。そこに栗花落先輩が
「櫤山さんの場合は、何かわかったら直ぐにでも自分で解決しようとするよね。たしか僕らが二回目にあった時も、バケツの水をかけた生徒の襟首掴んでなかったっけ?」
と言ったので、瑛子は恥ずかしくなり
「あの時は必死だったんです」
と顔を赤くしながら言うと、神成緑が
「この件に関してだって、もし俺らがメモのことを知らなかったら、自分で何とかしようとしただろ?」
と瑛子のほっぺたをつついた。瑛子はその頬をつついている指を握ると
「そんなこと、ないです。たぶん」
と言うと、催馬楽学が
「それに、当事者だからこそ、あまり耳にしない方がいいこともあるよ」
と言った。そこに勝が
「瑛子、みんなはお前を心配してくれてるんだよ」
と言いながら、追加のお菓子をテーブルの上に置いた。そしてみんなの顔を見ると
「いつも瑛子がお世話になってます。本当にありがとう」
と頭を下げた。瑛子は、涙腺が緩んでしまい
「お父さん、いいから。もう」
と、背中を押してリビングから廊下に追い出して一言
「ありがとう」
と言って、なんとか涙を引っ込めると、リビングに戻り
「そろそろ夕飯にしましょうか」
と笑顔で言った。
バターチキンカレーはかなり好評で、瑛子はホッと胸を撫で下ろした。やはり男の子は食べる量が半端ない。と感心しながらみんなの食べる様子をながめた。食後のデザートにシフォンケーキを出しお茶を飲みながらくつろいだあと、栗花落先輩が
「皿洗いするよ」
と言い出した。瑛子はいつものお礼のつもりだったので
「それだと、お礼にならないじゃないですか」
と言ったが、催馬楽学も神成緑も
「自分の食べたものぐらいは、片付けるよ」
と、台所へ向かって行った。瑛子もあとを追い結局みんなで片付けた。それらが全て終わる頃には、夜の七時になっていた。これ以上遅くなるといけないので、これでお開きとし、勝が
「僕が君たちを車で家まで送るから、乗りなさい」
と車で家まで送っていった。
瑛子は、自宅に招いたついでに、色々この前の件について聞き出そうと思っていたので、結局なんの情報も得られなかったことを残念に思っていた。
するとその時、インターホンが鳴った。家に誰もいない状況での、この時間の来訪者に驚きながら、インターホンのモニター越しに誰が来たのか確認する。
カメラに映っていたのは芦谷先生だった。瑛子はホッとして玄関のドアを開けた。
「芦谷先生、こんばんは。こんな時間にどうされたんですか?」
と言うと、瑛子が出てきたのに少し驚いた様子で
「櫤山、ご両親は?」
と訊いてきた。瑛子は
「母は今日は仕事で、もう少ししたら帰って来ると思います。父は今友達を家に送りに行ってるところです」
と、答えると
「わかった。それならまた時間をあらためて伺うことにする」
と、踵を返したので
「えっ? 先生、急いでいないのなら、家で待っててください! もうすぐ帰って来ると思うんで」
と言ったが
「いや、誰もいない家に二人きりは良くない」
と言うので
「そんな長時間二人きりじゃありませんし、それに先生いてくれれば一人にならなくてすみますし。それに、今日はちょうど神成君たちにバターチキンカレーご馳走したところで、ちょうど残ってるし。ついでに食べていきませんか?」
と言ってみた。なんとしても引き留めて、この前の件について聞き出したいのもあるが、純粋に心細いのもあった。
必死な瑛子の様子に、芦谷先生も折れて
「そう言うことなら、ご馳走になろう」
と言ったので、瑛子は芦谷先生を家にあげ、リビングに通した。瑛子は台所へ行きナンを焼き直し、ルーを暖め、芦谷先生の前に置いた。
「お口に合うかわかりませんけど」
と言うと、芦谷先生は
「うん、うまそうだ」
と食べ始めた。瑛子は向かいに座って両手で頬杖をつくと、芦谷先生が食べる様子をぼんやり見ていた。そして、芦谷先生が家に訪問して来た理由を考えていた。恐らくこの前の件についてだろうと思った。
親がいないとわかると、帰ろうとしたと言うことは、私には話す気はないのだな。と、思っていると、芦谷先生が
「櫤山、そんなに見られていると流石に食べずらいのだが」
と、言った。瑛子はハッとして
「すみません、先生がイケメン過ぎて、見とれました」
と言って席を立ち、台所へ行くと振り向かずに
「デザート、シフォンケーキですけど食べますか?」
と、訊いた。返事がないので振り向くと、そこに、食べ終わった食器を持った芦谷先生が立っており
「いや、デザートはいい。ご馳走様。おいしかった。食器を洗いたいのだが」
と言うので
「私、洗いますよ?」
と答えた。芦谷先生は首を振り
「そこまでしてもらうわけにはいかない。片付けぐらいはしなければ」
と言うので、洗ってもらうことにして、横で皿を拭いた。思わず
「チャーミーグリーンみたい」
と、瑛子が呟くと、芦谷先生が
「そうだな」
と、瑛子には聞こえないように呟いた。
誤字脱字報告ありがとうございます。