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第十五話 ~朝の公園で凛音から勝負を挑まれました~

 第十五話






「……と、言うわけで今日から凛音もトレーニングに参加するって話になったんだ」

『なるほどね。朝から君も修羅場に巻き込まれて大変だったね』


 永久さんは俺の部屋で身支度の続きをしている。

 支度の途中でこちらに来ていたからだ。


 自室が使えないので、俺は居間で流に朝のトレーニングの追加メンバーの話を電話でしていた。


「凛音の件に関しては、流の方から桐崎さんには伝えて欲しいかな?」

『了解だよ。多分断ることはしないとは思うけど、苦笑いくらいはされそうだね』


「あはは……二人の喧嘩を止める役割になってるからね……」

『情けない男二人には出来ないことだよね……』


 なんて話をしていると、


「お待たせしました。霧都くん」


 制服姿の美少女が居間へとやって来た。


「じゃあな、流。また後で」

『じゃあね、霧都。頑張ってね』


 そう言って俺は流との通話を切った。


「電話の相手は星くんですか?」

「そうそう。凛音が参加するって話を伝えてた。彼から桐崎さんにも話をしておいて欲しいって言っておいたんだ」


 流が桐崎さんと話口実にもなると思うしな。


「ふふふ。あの二人も少しずつ仲良くなってますよね」

「そうだね。二人三脚の息もあってるし、あれなら期待出来そうだよね」


 なんて話をして、俺は自室へと向かった。


 そして、手早く着替えを済ませると俺の姿を見た永久さんが微笑みながらこちらに来る。


「ネクタイがズレてますよ?」

「……え?確認したと思ったけど」


 なんて言うと、


「嘘です」


 チュッ


 キスをされた。


「朝から君の刺激的な嘘に頭がクラクラするよ」

「ふふふ。二人きりじゃないと出来ませんから」


 身支度を終えた俺と永久さんは、家を後にして公園へと向かった。






『公園』




「おはよう、凛音。さっきぶりだな」

「おはようございます。南野さん」


「あら、遅かったわね。どうせ家の中でイチャイチャでもしてたのでしょう?気合いが足りないわよ」


 既に体操着姿になっていた凛音が、フンと胸を張りながらそんなことを言ってきた。


「さっさと着替えて来なさいよ。時間は限られてるわよ!!」

「なんで初参加なのに、あんなに偉そうなんだよ」

「ふふふ。南野さんらしいですよね」


 更衣室。なんてものは無いので、男女に別れたトイレで着替えを済ませる。


 着替えを終えて外に出ると、


「おはよう、霧都」

「おはよう、桜井くん」


 流と桐崎さんも合流した。


「一番乗りは凛音だったよ。二人も着替えたらトレーニングをしようか」

「そうだね」

「うん!!」


 二人はそう言うと、着替えをしにトイレへと向かった。


「準備体操はもう終わってるのか?」

「ふん。当然よ」


 凛音はそう言うと、公園の空いたスペースを指さす。


「準備体操が終わったら短距離ダッシュで勝負よ!!」

「面白ぇ。男女の力の差を見せてやるよ」


「ふん。私が部活でどれだけ走らされてるか知らないわね?この鍛え上げられた両脚の力を見せてやるわよ」


 なんて言いながら、凛音は下のジャージを脱ぐ。


「…………っ!!」


 薄い胸とは違い、脂肪と筋肉のバランスの取れた凛音の脚。


 白くてふっくらとした永久さんとは違い、すらっとしてて綺麗だと思ってしまった。


「…………あら?どうしたのかしら、霧都。食い入るように見ちゃって」

「…………いや、なんでもないよ」


 満更でもないような表情の凛音から、俺は視線を背ける。


「ふふん。まぁ、脱いだはいいけど、外ではやっぱり寒いわね。ジャージを履き直すわ」

「そうしてくれ」


 なんのために脱いだんだよ……


 とは思いたくなるが、彼女の脚に見蕩れてる姿なんか永久さんに見られたら一大事だ。


 下のジャージを履き直した凛音に、俺はほっと一息をついた。



 そして、着替えを終えた三人と合流し、二人一組になって準備体操をした。


 俺は永久さんと。流は桐崎さんと。

 凛音は柔軟体操をしていた。


 身体も温まって来たので、俺は凛音から挑まれていた勝負へと向かう。


「永久さん。ちょっと凛音に喧嘩売られてるから買ってくるね」

「ふふふ。では応援してますね」


 視界の端では、流と桐崎さんが二人三脚の練習を始めていた。


「それじゃあ北島さんには、どっちの方が回数をこなしていたかを審判してもらおうかしら」


 凛音はそう言うと、ストップウォッチを永久さんに渡す。


「五分の短距離ダッシュを三回やるわよ。インターバルは一分。トータルの回数が多い方が勝者よ」

「いいぜ。帰宅部だけど、トレーニングは欠かしてないんだ。こてんぱんにしてやるよ」


 俺と凛音は公園の空いたスペースへと向かう。


 端から端まで大体二十メートル。この距離の往復を勝負する。


 ちなみに、中学時代の勝負ではほぼ互角。

 やや俺に軍配が上がることがあった気もするがな。

 バスケ部の瞬発力とスタミナはやはり侮れない。


「位置について……よーいドン!!」


「うおおおおぉ!!!!」

「ふん!!声を出せばいいって訳じゃないわよ!!」


 俺と凛音は勢い良く走り出す。

 スピードは俺の方が上。スタミナは凛音の方がやや上だろう。


 最初のうちに回数に差をつけて、その差で逃げ切るのが作戦だ。


 そうして始まった俺と凛音の短距離ダッシュ勝負。

 結果は……



「凄いですね。引き分けですよ」

「はぁ、はぁ、はぁ……現役バスケ部に引き分けなら勝ちみたいなもんだろ……」

「はぁ、はぁ……な、何言ってるのよ。あんたこそ、中学時代より体力落ちてるわよ……」


 そんな会話をしながら、俺と凛音は永久さんからスポーツドリンクを受け取る。


「ぷぁ……キンキンに冷えたスポーツドリンクを飲むと生き返るわね」

「それはたまに羨ましくなるよ……」


 常温のスポーツドリンクを飲みながら、俺はそう呟く。

 俺もこんな時は冷えたドリンクを飲みたいとは思うよ。


「霧都くんにちょっと試してもらいたいことがあるんです」

「……永久さん?」


 彼女は冷たいドリンクと『ストロー』を用意してくれた。


「知覚過敏にはストローが良い。と聞きました。もし良けれは試してみてはどうですか?」

「あはは。ありがとう、助かるよ」


 そう。ストローで喉の奥で飲むようにすれば、冷たいものも楽しめる。ただ、ストローを用意するのも面倒だなぁって思ってたんだよね。


「うん。大丈夫だね。こうして飲めば冷たいものも楽しめるよ」

「ふふふ。それは良かったです。使い終わったストローは『私が』処理しておきますね」


 私が。を強調してたような気もするけど……気にしないでおくか。



 そうしながら、俺たちは時間の許す限り、朝の公園でトレーニングをしたのだった。

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