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第三話 ~放送室へと向かった俺は、全校生徒に向けて俺は真意を語っていった~

 第三話




「凛音!!!!よくも約束を破ったな!!なんてことは言わない!!だけど!!こんなことして何になるって言うんだよ!!」


 放送室の前へとやって来た俺は、感情に任せて凛音に対して言葉を投げつけた。


 こんなことを言っても、何の解決にもならないことはわかりきってる。

 だが、どうしても我慢が出来なかった。


「ふふふ。永久の所ではなく私の所に来たのはどうしてかしら?」


 俺の言葉なんか意にも介さずに、凛音は微笑みながら言葉を返してきた。


「永久なら理解してくれてると思ったからだ。俺がここに来たのはお前の真意を聞きたかったからだよ」

「あらそうなのね。てっきり、弁明でもしに来たのかと思ったわ」


 ケラケラと笑いながらそう言う凛音。

 彼女はそのまま後ろの放送室の扉を開けて、俺を中へと誘った。


「入りなさい。アンタが全校生徒に対して自分の話をする機会をあげるわ」

「……どういうつもりだよ。俺にそんなことをさせるなんて」

「私ばかりが話すのはフェアじゃないでしょ?それだけの話しよ」

「……はん。勝手に盗撮や盗聴をしてるような人間がフェアを語るなよ」


 だが、これは俺にとっても都合がいい。

 凛音の言葉に従うのは癪だが、利用させてもらうか。


 そう結論をつけた俺は、凛音とともに放送室の中へと足を進めた。


「……お前も来るのか」

「当たり前でしょ。私とアンタが会話をする形で全校生徒に情報を届けるのよ」


 ……何故だ。どうしてコイツはこんなに『余裕』なんだ。

 俺の言葉次第では全校生徒に対して『嘘つき』だと知らしめる結果になると言うのに。


 だが、凛音はテキパキと放送の準備を進めていき、機材の前の椅子に座ってボリュームを上げた。


「全校生徒の皆さんさっきぶりね。南野凛音よ。さっきの話で山野先生が飛んできたけど、優しい先輩二人が私のことを守ってくれたわ」


 そんな事を言いながら、凛音は再び放送を始めた。

 それを聞いた俺は、凛音の正面にある椅子に腰を下ろした。


「さっきの放送を聞いて、当事者の霧都が私の元にやってきたわ。ふふふ。私のアレがヤラセかどうか、彼の話を聞いて欲しいと思うわ」


 凛音にそう言われ、俺はひとつ咳払いをした後に全校生徒に対して話を始めた。


「皆さんこんにちは。生徒会庶務の桜井霧都です。南野凛音が流した先程の音声に対しての話をしに来ました」


「ねぇ、霧都。皆が聞きたいのは『私と貴方がキスをしたりしたかかどうか』だと思うわ。あの音声の内容は『実際にあった行為』かしら?」


 …………そうだ。

『あの行為自体は本当にあった事』

『俺が永久と付き合っていながら、凛音ともキスをした』

 これは『事実』なんだ。


「……そうだな。俺は永久と言う彼女がいるにもかかわらず、お前ともキスをした。それは事実だ。まぁ……あの行為を録音されているとは思いもよらなかったがな」

「そうね。愛しの霧都との行為だったから形として残しておきたかったのよ。可愛い乙女心だと思って欲しいわね」

「……何が可愛い乙女心だよ」


 そう言葉を返したあと、俺はマイクに向かって話を続けた。


「中間テストの期間の最終日。俺は体調不良の振りをした凛音と共に、こいつの見舞いという形で彼女の家へと向かった」


 もうこいつが『仮病を使っていた』と言うのを黙っている義理はない。

『あの日のこと』をこうして全て話しをしていくつもりだ。


「静流さんの運転する車で凛音の家へと向かった俺は、凛音と共に部屋の中へと入った。理由は『何故こんな仮病なんてものを使ったんだ?』ってことだった。こいつの性格は良く知ってる。『永久を油断させて点数を減らすようにする』なんて真似をする性格では無いからだ」

「ふふふ。流石は十年来の幼馴染ね。私の事を良く知ってるわね」


「……そこで俺はベッドの上にいた凛音に問いかけた。『何故こんなことをしたのか?』と。その時、こいつは小さな声で理由を吐いた」

「私としては普通の声で言ったつもりなのだけど?」


「……きちんと聞き取れなかった時点で声量は関係ないだろ。俺はもう一度凛音に対して利用を問いかけたんだ」

「私が仮病を使ってまで霧都を家に呼んだのは、彼に私の『はじめて』を渡すためよ。ふふふ。そこで私は霧都とキスをしたわ」


「……そうだな。俺は凛音に『無理矢理』という形でキスをした」

「そのシーンを皆に見てもらいたいと思ってるけど『その画像だけは』見せることが出来ないの。ふふふ。ごめんなさいね」


 ……そうだ。凛音が『公開しない』と約束したのはあの写真だけ。俺はそのことをまるでわかっていなかった。


「俺と凛音のキスシーンは、待機していた静流さんの手によってデータとして残されてた。そして、この画像を出回らせない条件として、凛音に対して『永久にした行為をする』と言うのを約束させられたんだ」

「ふふふ『愛の言葉を言いながらキスをする』永久にはしていた行為よね」


 悪びれもせずにそう言う凛音。

 彼女にとって『この展開』は想定内だと言うのか?


「……だから、あの音声の内容は『事実』ではあるけど『本意』では無い。これが俺の見解だ」

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