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最終話 ~永久と凛音の戦い・決戦の中間テスト~ その⑨

 最終話 その⑨





 図書室を後にした俺たちは、自分たちの教室へと戻って行った。


「じゃあ二日目の中間テストも頑張ろうな」

「おう。ケアレスミスに気をつけてやってくぜ」


 石崎にそう告げて、俺は自分の教室の扉を開く。


「おはよう桜井。今日も勉強してから来たんだな」

「おはよう鷲宮。まぁな。とりあえず次期生徒会長として恥ずかしくない成績は残したいからな」


「真面目だなぁ。まぁそれがお前の良いところだしな!!俺は何とか赤点回避出来れば良いってレベルだぜ!!」

「それでいいのかよ……まぁ鷲宮は部活もやってるからな」


 そんな話をしながら教室の端に視線を向けると、昨日と同じような格好をした凛音が机に突っ伏していた。

 見るからに『体調不良です』と言ってるようなスタイルだな。


「凛音はずっとあんな感じなのか?」


 俺がそう問いかけると、鷲宮は少しだけ心配そうな視線で凛音を見ながら俺に言葉を返す。


「そうだな。俺が登校してきた時にはもう既に教室に居たからな。なんでも今日は家族の人に送ってきてもらったみたいだぜ」


 家族の人に送ってもらった……何故昨日はそうしなかったんだろうか?

 仮病だってことを知られたくないなら、昨日から送ってもらえば良かったのに。


 少しだけ疑問に思った俺は凛音のところに行くことにした。


「おはよう凛音。今日も体調が悪いのか?」


 俺がそう問いかけると、腕の隙間からこちらを覗き見るように凛音が視線を向けた。


「……そうね。まぁ昨日と同じように薬が効いてくればマシになると思うわ」

「そうか……」

「テストの点数には全く影響は無いわ。永久にも手を抜くなと伝えておきなさい」

「永久もそのつもりだからそこに対しては心配するなよ」


 俺がそう言葉を返すと、凛音はニヤリと笑った。


「それで良いわ。ほら、そろそろ時間になるわよ。席に戻りなさい」

「そうだな。じゃあな凛音」


 俺は彼女にそう伝えたあと、自分の席へと戻った。


「凛音さんの様子はどうでしたか?」


 席に戻った俺に、永久がそう問いかけてきた。


「昨日と同じだね。まぁ鷲宮の話だとかなり早い時間から教室に居たみたいだな。今日は自転車で来ないで静流さんに送ってもらったみたいだよ」

「昨日は自転車で来て、今日は家族の方の車で来る。一体どうしてそんなことをしたのでしょうか?」

「さぁ……それは俺もわからないな」


 そして、俺と永久が首を傾げていると教室の扉がガラリと開いて担任の根岸先生が姿を現した。


 それと同時にSHRの始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。


「皆、おはよう。それでは桐崎、号令を」

「はい!!」


 俺たちは桐崎さんの号令で立ち上がり、根岸先生に一礼をしたあと席に着いた。


「中間テストは今日で最後になる。ケアレスミスに気をつけるようにしなさい……」


 教壇で諸連絡と試験に対しての話をする根岸先生。

 その言葉を聞きながら俺は少しだけ考えていた。


 何で凛音は今日は車で来たんだ?

 静流さんは専業主婦だ。だったら昨日も車で送って貰えたはずだ。仮病だとバレるような要素を持ち込んだ理由がわからない。


 チラリと凛音に視線を向けると、気だるげに外を眺めていた。

 どうやら本気で『調子が悪い演技』を続けているようだ。


 まぁあの様子ならクラスメイトや根岸先生には疑いはもたれないだろうし、俺くらいの付き合いが無ければわかるはずもない。


 そもそも、仮病を使って試験に望む。なんてことをする理由が他の生徒には無いからな。


 俺を自分の家に呼び付ける。そのために仮病を使ってお見舞いに行かなければならない空気にする。


 その第一段階はクリアしている。


 この感じなら俺は試験が終わったら凛音の家に行かないといけないな。

 ただ、一体何をするつもりなんだろうか?


 お昼ご飯を食べて解散。なんてことは無いだろうな。


「……それではこれでSHRは終わりにする」


 根岸先生はそう言うと、SHRを終わりにして教室を出て行った。


 一時間目は英語のテストだ。変なことを考えていてはケアレスミスの原因になってしまう。


 凛音が一体何を考えているかはわからないけど、やっぱり目の前のテストに集中しないといけないな。


 俺は軽く頬を叩いて気合を入れた。


「ふふふ。気合い十分ですね霧都」

「そうだね。凛音が何をするつもりなのかはわからないけど、それよりも先ずは目の前のテストだからね」

「そうですね。私も負ける訳にはいきませんからね」


 永久はそう言うと小さく拳を握りしめていた。


「お互い全力を尽くそうね」

「はい。頑張りましょう」


 こうして、俺たちは一抹の不安は抱えながらも二日目の中間テストに挑んで行った。

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