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第七話 ~北島永久の逆襲・体育祭では彼女の本気を味わいました~ ⑨

 第七話 ~北島永久の逆襲・体育祭では彼女の本気を味わいました~ ⑨





 昼休み。教室に戻った俺たちのグループは昼ごはんを食べていた。

 グラウンドのど真ん中で永久との『結婚式』を挙げた俺たちのグループは否が応でも皆からの注目の的だった。


「あはは……なんて言うかかなり見られてるよね」

「ふふふ。ですが嫌な視線では無いですよ。どちらかと言えば好意的かと思います」


 苦笑いをしながらそう言う俺に、永久が微笑みながら言葉を返した。


「はぁ……流石の私もあんたの覚悟には恐れ入ったわ。まさかグラウンドのど真ん中で挙式するとは思わなかったわよ」

「凛音……」


 やれやれと手を広げながら、凛音はそう言っていた。

 そして、永久の目を見ながら言葉を続ける。


「でも、永久。これで勝ったと思わないことね。私はまだまだ全然諦めてないんだからね!!」

「ふふふ。わかってますよ、凛音さん。こんなのは貴女に言わせれば『ごっこ遊び』としか思えませんでしょうから」


 ニヤリと笑う永久に、凛音も笑みを返した。


「はぁ……なんて言うか、霧都も大変だよね」

「あはは……うちのおにぃとは違うベクトルで大変な思いをしてるとは思うよね」


 流と桐崎さんが、二人で並んでお弁当を食べている。

 こちらを見ながら、同じような苦笑いを浮かべていた。


「午後の種目は練習してきた男女混合リレーと大縄跳びと綱引きね。霧都!!あんたは短距離走では情けない姿を見せたんだから、シャキッとした姿を見せなさいよね!!」

「あはは……石崎くんとはアンカー対決になりそうだな。短距離走でのリベンジとはいきたいな」


 100m走ではギリギリ負けてしまったからな。

 リレーでは彼に勝ちたいとは思ってる。


「ふふふ。霧都のかっこいいところを見せてくださいね」

「そうだね。永久の期待に応えられるように頑張るよ」



 美鈴の作ってくれた弁当を頬張りながら、俺は永久の言葉に笑みを返した。




 そして、昼ごはん食べたあとにしっかりと休息を取った俺たちはグラウンドへと戻って行った。

 俺はグループと別れを告げ、桐崎先輩の元に行った。

 そこで先輩と軽く話をしてから放送席の方へと足を進める。


 すると、そこには既に三郷先輩がパイプ椅子に座って待っていた。

 先輩は俺の姿を見つけると、ニコリと笑って俺に言ってきた。


「これはこれは、新婚さんの桜井霧都くんではありませんか。どうですか、あれ程の美少女を嫁にした今のお気持ちは?」

「あはは。今の気持ちは最高ですね。俺にはもったいないくらいの綺麗なお嫁さんですよ」


 俺がそう返すと、三郷先輩はやれやれと手を広げる。


「去年は桐崎くんが学園の美少女を相手に堂々と二股宣言をして、今年は桜井霧都くんが北島永久さんと結婚式を挙げた。なんなの、生徒会役員は借り物競争で問題を起こす決まりになってるの?」

「いや……そういう訳では無いんですけどね……」


 先輩の言葉に、俺は苦笑いを返す。


「まぁ良いけどさ。私としてはなかなか面白いネタだと思えたからさ」


 でもさ、


 と三郷先輩は言葉を続ける。


「こういうのを良く思わない人間も居るってことを覚えておいた方がいいと思うよ」


 真剣な目で語られた言葉に、俺はしっかりと視線を逸らさずに首を縦に振った。


「わかりました。肝に命じておきます」



 そして、午後の部が始まる時間になった。



『さぁ!!昼ごはんを食べてたっぷりと休憩も取って元気いっぱいになったかと思います!!これより海皇高校体育祭、午後の部を開始致します!!実況は午前と変わらずこの私、放送部の三郷と、新婚さんの桜井霧都くんになります!!』


 新婚さん。の言葉に、グラウンドから笑い声が聞こえてくる。

 だが、三郷先輩の言うように、全員がと言う訳では無い。

 中にはやはり面白くなさそうな生徒も少なからずいる。


 去年の桐崎先輩の一件もあるし。

 誰かに呼び出されたりとかもあるかもしれないな。






『桜井。お前も俺と同じで『味方』と『敵』がハッキリしやすいタイプの人間だ』

『……そうですね』


『誰かに呼び出されたり、何か問題ごとに巻き込まれることが今後あると簡単に予想出来る』

『去年の体育祭の貴方のようにですか?』


 俺のその言葉に、先輩はニヤリと笑った。


『そうだな。そしてお前にも同じことが起きる可能性は決して低くない』


 あんな結婚式を挙げたくらいだからな。


『彼女の愛の深さには驚かされてばかりですよ』

『あはは。良い事じゃないか。あれ程の美少女に愛を向けられてるのは光栄なことと思えよ』

『そうですね。不満なんか無いですよ』


 そして、先輩は俺の目を見て言ってきた。


『暴力沙汰に巻き込まれた時、絶対にお前は手を上げるなよ?』

『それは当然です。何があってもこちらから手を出すことは無いです』


 ただ、永久に危害が及ぶならその限りでは無いけど。


『権力者とのコネなら俺は結構持ってるからな。何かされたら俺を頼れ。暴力なんて生ぬるい方法じゃないやり方で報復してやるからな』

『あはは。ありがとうございます。心強いです』


 俺はそう言って、先輩に背中を向けた。


『それじゃあ放送席に戻ります』

『おう。午後の部も頑張れよ。石崎の弟にはリベンジをしてくれ。あいつが俺にドヤ顔をしてきてウザくて仕方ないんだからな』

『永久にかっこいい姿を見せたいので善処しますよ』



 俺はそう言い残して先輩の元を去った。





『皆さんこんにちは!!午前に引き続き、生徒会庶務の桜井霧都が三郷先輩の相方として実況をさせていただきます!!若くしてめちゃくちゃ可愛いお嫁さんを手にすることが出来て幸せいっぱいです!!』


 俺がそう言うと、グラウンドからは笑い声が聞こえてきた。

 だが、やはり若干名はつまらなそうにしている。


 あの面々には気を配ることにしよう。


『それでは皆さん!!怪我に気をつけて午後の部も頑張って行きましょう!!』



 こうして、海皇高校体育祭の午後の部が幕を開けた。

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