引っ越しはあっという間
馬車に乗り込んでから暫くして実家に着いた。
「私は家を出る準備をするから、今までありがとうね」
私はメイドに別れの挨拶をして部屋に入った。
「こういう時の為に荷物を纏めておいて正解だったわね」
私の部屋は例の物置小屋になっていた。
何せ義妹に元々いた部屋を奪われてしまったのだから、でも都合が良かった。
例の洋服ダンスがあるんだから。
「これのお陰で今まで頑張ってきたんだから感謝しないといけないわね」
さて、感慨に浸っている暇はない。
私は荷物を持って洋服ダンスの中に入った。
「はい、引っ越し完了~」
タンスから例の部屋にやって来た。
そこには家具や電化製品が置いてある。
と、玄関が開いた。
「おぉ、クレアちゃんいたのか」
「ソーイチロー、私遂にこっちで暮らす事にしたわ」
「と言う事は、例の婚約者がやらかしたのか」
「えぇ、婚約破棄されたわ。私笑いそうになったもの。本当にゲームや小説みたいな事をやる人がいるんだなぁ、て」
私はニッコリ笑いながら言った。
彼の名は藍田宗一郎と言ってこの部屋を含んだアパートの管理人だ。
彼との出会いが無ければこの日本での生活は成り立たない。