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「以上が、本日のD型怪異との戦闘報告です」

 第一監視基地、研究棟6階の所長室。夕日がビルの影に沈みかけている。この部屋から潰瘍は見えない。単なる管理職にはおあつらえ向きの部屋。

 広瀬所長は太った腹に手をおいて、リンからの定型文な報告書&武器要求の稟議書(りんぎしょ)、ニシの短い報告書と付け加えられたカナの所感を眺めた。たぶん、読んではいないだろう。

「わかった。上に伝えておこう。武器の方も、来週の便で届くだろう」

「ですが、予想を上回る脅威なので急いだほうが」

「そうか、わかった。じゃあ緊急のドローンで運んでもらおう。この、えっと、M2機関銃のモジュールと弾薬一式なら明後日には届くだろう。備品リストにあったからな」

 下からの要求を“いなし”、上からの要求にこたえる、まるで水のような男。つかみどころがない。カナの所長への印象は初めから変わっていない。

「で、最近、備品の破損が多いようだが」

「監視ポストのことでしたら、昨日の報告書で」

「ああ、壊されていた、とかいう」

 意外にも読んでいるようだ。

「隊員の中には、人為的な悪意が介在していると噂する者もいます。先月から続く監視ポストの破壊、異常な怪異の出現。まさか常磐の上層部は“なにか”しているんじゃないかと」

 水の男の眼光が光った。

「そう、思うんだね」

「いえ、すみません、発言を撤回します」

 所長は、バサリと書類を放おった。

「口には気をつけたまえ。社会人とはそういうもんだ。とはいえ、仮にだが、俺が知ってても教えないだろうが、あいにく知らん。俺たちの会社はエネルギー分野で世界に光をもたらした。魔導機関と魔導セルで文字通り電気を、な。潰瘍も東京、富山、岐阜、サンフランシスコ、あとどこだったか。とにかく各地で拡大の封じ込めに成功している。孤児たちの生活を支え、第三次世界大戦(あの戦争)からの復興と雇用問題さえ解決してきた。そんな会社の一員である君が、陰謀論を唱えるとは、悲しいねえ」

「すみません」

 仕事は嫌いじゃない。だがこの部屋は大嫌いだ。

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