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五話 混浴温泉での全裸話し合い

 記憶喪失の侍であるアオイコウケンは、人々に貢献する為にバグの発生により現れたアシュラ王の息子であるモンスター・アシュラを倒した。これにより、エドランドを支配するギルドから目をつけられ呼び出しをくらってしまう。


 その呼び主はエドランドの裏の支配者であるギルド長官であり、コウケンと身元引き受け人の岡っ引・ゼニガタヘイコはギルドへ向かって歩いていた。その途中の道で、ヘイコは絶対に聞いておいて欲しい事をコウケンに伝える。


「……ギルド長官が話すかわからないけど、これだけは聞いておいてね。ダンジョンの下層にあるセンゴクロードの事だけはね」


「そもそもダンジョンとセンゴクロードにはそんなに違いがあるでござるか? ダンジョンは妖怪のようなモンスターが多い。センゴクロードはモンスターより強い人間のような英霊が多いぐらいしか情報が無いでござる」


「センゴクロードには霊気を溜め込む霊柱(れいちゅう)があるの。おそらくそれが、センゴクロードを形成している結界のような物。これを破壊すれば、おそらくセンゴクロードはこの世界から隔離されるはずなの。そうすれば、ダンジョンのバグのような件は起きない。もし、センゴクロードのような英霊達がここに現れてしまったら、エドランドは崩壊してしまうわ。一夜にしてね」


「一夜にして……だがギルドの面々なら対抗出来るのでは?」


「無理よ。センゴクロードの英霊達は一騎当千の強者。ギルドの連中では勝てないわ。あのギルド長官ならわからないけど、他のメンバーなら殺されるだけでしょう」


 ふむ……とコウケンは腕組みして考えた。そしてヘイコは念を推すように言う。


「これはギルドでもトップクラスの人間しか知らない事よ。絶対にエドランドの人間には話さないで。もし話したら、あの程度の牢屋じゃ済まなくなるわ。おそらく切腹か打首獄門ね」


「全く、記憶を取り戻すのは結構大変そうでござるなぁ」


 こうしてコウケンは新たな目標を得た。ダンジョンのモンスターが強くなっている原因である呪いの霊柱を壊して行く。その場所は強い英霊のいるセンゴクロード。そうして、二人はエドランドのギルドに到着した。





 エドランド中央地区にあるギルドの建物は緑を基調にした質素な建物であり、多くの人間は入口にある受付センターでダンジョンへ向かう登録や、討伐したモンスターなどの報告やお宝を売るなどの事をする場所である。


 だが、今はその場所に行くわけにはいかない。そのギルドの最深部にある長官室に向かわないとならないのである。これを断った場合、コウケンもヘイコもエドランドにて罪人となり死ぬまでギルドに追い続けられる事になる。


 ギルド受付センターの奥にあるスタッフ専用建物の入口に、一人の黒髪少女が現れた。オカッパ頭のメイド服を着た小さな少女が案内してくれるようだ。


「ロンドリスビチナです。略してロリビッチです。よろしく!」


「よ、よろしく」


「よろしくでござる」


 そのビチナはムッとした顔で拳を二人に向けている。


「硬いな二人共。硬いのは突起物だけにしとかないと、ギルド長官に殺されちゃうよ? クフフ」


 ニンマリと小悪魔な笑みを浮かべていた。このビチナによりリラックスして肩の力が抜けた二人はとある一室の前に辿り着き立ち止まる。


「ギルド長官殿。ゼニガタヘイコ。アオイコウケンの両名入ります。張り切ってどうぞー!」


 いきなり背中を押されて長官室に入る。


『……』


 目の前の机のイスに鎮座する金髪巻き髪美女を二人は見た。その美女の目は青く、服は緑の軍服に長靴。頭にはギルド長官である帽子をかぶっている。軍服の前ボタンは全てオープンであり、黒いブラジャーから豊かな乳房が見えていた。その破廉恥な女こそが、エドランドギルド長官・シザクラシキブだった。


「ようこそ我がギルドへ。私がギルド長官のシザクラシキブだ。以後よしなに」


 そのシザクラシキブに二人は辞儀をする。うーんと頬杖をついたシキブは手を叩く。


「ビチナの奴、あんまほぐせてないな? まぁいいか。月は出ているからな」


『……?』


「独り言だ気にするな。ここでは互いの身分の差があり、話にくい。全裸になって私の温泉に来い。全てはそこで話そう」


『……え?』


 コウケンとヘイコは互いに顔を見合わせた。シキブが先に長官室を出るとビチナが室内に現れ、二人はシキブの温泉へと重い足を運んだ。




 男も女も全裸だ――。

 温泉の湯気こそ出ているが、よく目をこらせばお互いの肌は丸見えである。そこの主人の金髪巻き髪の美女は堂々と自分の豊かな乳房を晒して立っている。


 目の前には首から下げた葵御紋の印籠以外は全裸丸腰のコウケンがおり、コウケンも堂々としていた。隣にいる岡っ引のヘイコは顔を真っ赤にしつつ、胸と股間を手で隠している。両方の巨乳をドラムのように叩いたシキブは言う。


「全裸ならば武器の持ち込みも不可能だ。ここでなら互いに身分関係無く自由に話せるだろう。ある程度はな。まぁ、楽しめ」


『……』


「ノリが悪いな二人共。仕方ない、湯気を増やせば大事な所だけは隠せるだろう。ビチナ! まだか!?、」


「はいはい皆さん、お飲み物をどーぞー! きゃ!?」


 と、現れたロリ案内少女の全裸であるビチナが酒を運んで来たが、派手に転がった。しかし、お盆の飲み物は一切こぼれていない。

 見るなとヘイコはコウケンの顔を背けさせる。だが、そのシザクラの言う通り大事な所は見えなかった。何故なら、葵御紋の印籠から謎の精霊が現れたからである。


「お、お主は葵御紋の精霊でござるか?」


「ワシは葵御紋印籠の精霊ユゲールです。よろしこ」


 ユラユラしている青い少女の精霊だった。


「葵御紋の精霊……ねぇ」


 シザクラは女豹のような鋭い目をコウケンに向けていた。そのユゲールは緩い感じで話し出す。


「そこの女。ワシを盗もうとしても盗めないよ。ワシはこの男の一部のようなものだから。悪さも程々にな。ホホホのホー」


「盗む? 何の事やら」


 シザクラはあくまでもしらばっくれているようだ。


「それとワシは戦いには使えないから呼んでも無駄だよ。温泉で霊気を溜めるのが趣味なのさ」


『……』


「話を続けるといいさ。ワシは一休みするから。でも大事な所は隠せるから安心して。ユゲユゲユゲール」


「葵御紋の印籠の精霊ユゲール。いいものを見させてもらったよアオイコウケン」


 そうして、ユゲールの魔法で各々の大事な所に湯気が生まれた。起き上がるビチナは二人に酒を勧める。

二人はそれを拒否して、温泉に浸かった。一人猪口で酒を飲むシキブは、


「毒など入っていないぞ。リラックスしろ二人共。特に岡っ引のヘイコ。お前は肌も晒せない程貧相なのか」


「長官ほどのスタイルじゃないし、恥ずかしいのよ!」


「フン、青いのぅ。それに引き換え、コウケンは堂々としてていい。一物の具合も良かったであろう? ヘイコよ?」


「し、知らないわよ! 早く本題に入って!」


「しっかり見ておった癖によく言う。まだまだ子供だな」


 微笑むコウケンもそれに言及した。


「確かにギルド長官は立派な大人でござるが、ヘイコはまだまだ子供でござるな」


「いや、私おっぱいそこそこデカいし子供じゃないけど」


「下の毛もしっかり生えてない人間は子供でござるよ」


「――! ブチ殺す! びゃああああっ!?」


 キレてコウケンに攻撃しようとしたヘイコは全身が痺れた。そして湯船に沈む。ニシシ……とビチナは湯船の外から笑っているが、足がつったようで悶えていた。やれやれという顔のシキブは、


「抱えてやれコウケン。この温泉では下手に暴力的な行為をすれば痺れて倒れてしまう。わざわざ温泉で全裸丸腰で話し合いをしたいという私の気持ちを理解してくれたかな?」


「かたじけないでござるシキブ殿。本来ならば、ギルド長官と対面はおろか会話も出来ずに始末されていてもおかしくは無い。この好意を感謝とし、拙者達は真剣に返答するでござる」


 ヘイコを抱き抱えたコウケンは頬を叩き意識を取り戻させた。ヘイコは湯気で大事な所が隠れて羞恥心が消え、覚悟が決まったのか胸と股間を隠さずに温泉に浸かる。ようやく準備が整ったと思うシザクラシキブは本題に入る。


「ゼニガタヘイコよ。お前がこそこそとダンジョンの下層にある一般市民の知らないセンゴクロードについて調べているのは知っている。ならば答えてやろう。私の知るセンゴクロードとやらをな。そして教えてもらおう、アオイコウケンという男の全てをな」


 そうして、ギルド長官・シザクラシキブとの全裸温泉会談が始まった。

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