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四話 ギルド長官からの誘い

 記憶喪失の侍・アオイコウケンはエドランドの東地区の牢屋にて夜を明かした。ここの牢屋はギルド直々の取り調べでは無く、ギルドの子飼い達である岡っ引の支配する牢屋だ。だからこそ、昨日のバグでアシュラという強力なモンスターを退治した謎の男がギルドに拘束される事も無く一夜を過ごせたのである。


 朝食はご飯に豆腐とわかめの味噌汁。それにタクワンが付いている質素なメニューだった。それを食い終わったコウケンは、牢屋の外にいる茶髪セミロングの岡っ引の少女に声をかけた。


「ご馳走様でしたヘイコ。やはり米と味噌汁とタクワンは素晴らしき三種の神器でござる」


「褒めすぎよ。この牢屋の飯は質素だけど出るだけマシと思ってね。本来ならエドランドの住人で無い以上は何も出せない規則だから」


 牢屋から食器トレーを受け取り、ヘイコは歩いて来た門番に渡した。そして、袋に包んでいたコウケンの青い鞘の刀を出す。


「一応、貴方が昨日アシュラを倒した人間というのは気付かれて無いはずよ。でも、ギルドの連中が血眼になって探してるだろうから早めにギルドに行きましょう」


「ギルドに行くなら、ギルドの連中にも会っていいのでは?」


「ギルドと言っても受付の連中と兵士の連中とじゃ人間性が違うのよ。粗暴な兵士連中とは関わらない方がいいわ。昨日も言った通り、まずはギルドに登録してエドランドでの居住権を得ないといけない。ギルドに登録すれば仕事にもありつけるし、一石二鳥よ」


「なるほど、なるほど。このエドランドはダンジョンで活躍出来る人間が正しい存在。記憶喪失だろうが何だろうが、全ての正義は強いかどうかという事でござるね」


「そう、その通り。エドランドではダンジョンで活躍出来る人間がダンジョンシーカーとしてのランクが上がり、貴族にだってなれる可能性があるのよ」


「ならば、ヘイコはダンジョンへ行きたいでござるか?」


「私はこのエドランドの岡っ引よ。ダンジョンにはギルドからの仕事が無ければ行くわ。ダンジョンにはお宝があるからね」


 欲望と金とダンジョンの街であるエドランドはギルドという組合が街を管理している。ギルドは正規の人間だけでは無く、街の細かい所に目が届く無頼のような連中も岡っ引として飼っていた。

 ギルドの仕事をするとギャンブルなどの場も閉鎖される事無く、ギルドは逃げた罪人を捕らえられ、岡っ引達はギルドが公認しないグレーゾーンの場で儲けられており、お互いに必要な存在であった。


 岡っ引達は公式には非公認だが、ギルドの末端として十手を持つ事を許されている。これは武器としても使え、尚且つギルドの息がかかっている人間という公式の手形のような役割も果たしている。


 ギルドと岡っ引は曖昧ではあるが、持ちつ持たれつの関係なのである。しかし、岡っ引のギルドへの反逆行為は何があろうが許される事は無い為に、賢い岡っ引達は必要以上にギャンブル場などの稼ぎ場を広げないように注意して生活している。


 その話を聞いたコウケンはヘイコもギャンブル場などを持つ胴元なのかと問うが、それには首を振った。


「私はそもそも岡っ引の警察権が欲しくてなったからね。ギルドは基本的にダンジョンシーカーのレベルが50以上無いと兵士として入団出来ないし、管理職の殆どは貴族で構成されてるから一般市民としては自由に入れない。岡っ引の方が自由に動けてギルドの威光を使えるから楽なのよ」


「なるほど、なるほど。ヘイコには余程の目的があるでござるな。おそらくそれはヘイコ自身の人生そのもの」


「まぁ、そうね。それに貴方を利用させて貰うわよアオイコウケン。貴方は私を記憶喪失から復活する為に利用すれば良い。ギブアンドテイクよ」


「ギブアンドテイクか。いいでござる」


 すると、一人の岡っ引の男が血相を変えてこちらに走って来ている。男は話を伝達すると、また駆けて戻って行った。


「最悪ね……もうバレてるなんて。腐ってもこのエドランドを支配するギルドか」


 吐き捨てるように言うヘイコの顔をコウケンは見た。どうやらギルドから使いが来て、アシュラを倒した謎の男の出頭が要請されていたようだ。それはこの牢屋にいるアオイコウケンに他ならない。


「ギルドに出頭要請があるのは仕方ないけど、相手が悪過ぎる。まさか、ギルド長官直々に面談するなんて……」


 強気なヘイコですら震えていた。

 このエドランドを管轄するギルド長官とは、そんなに恐ろしい人間なのだろうかと思うコウケンは、


「ギルド長官とはヘイコが驚くような英雄豪傑のような男でござるか。一度手合わせしてみたいでござるよ」


「手合わせしたら確実に全ての精気を吸い取られて死ぬわよ。そもそもギルド長は女よ。しかも、かーなーり難のある人間だから下手に余計な話をしない方がいいわ。あの女に手籠にされた男は数知れないからね」


「ギルド長官は女……」


 何やら危険な感じがするギルド長官にコウケンは興味を持った。


「記憶喪失を取り戻すなら、自分を世界に知らせた方が早いでごさろう」


「もう逃げられ無いし、その気合いがあれば何とかなるかもね。ギルド長官マジでやばいから」


 ギルドに赴き、ギルド長官と面談するのを楽しみにするコウケンは言う。


「それ程の人物ならば、味方にしたら心強いでござるよ。記憶喪失であろうとも、拙者はこのエドランドの住人。故に、センゴクダンジョンで活躍して世界にアオイコウケンの存在を知らしめ、この世界に貢献するでござる」

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