13.5
文字数的にも流れ的にも入れられなかったのでこっそりと失礼します。
「えー、ゴホン。先日に挨拶をと言っていたのが今日に伸びてしまったことをお詫びする。改めて、薬士見習いとしてこの王城に一ヶ月間勤める、シトラ・リン・レリンス様だ」
「初めまして、レリン王国から参りました、シトラです。一ヶ月間、ここで勉強をさせていただきます。不慣れなことばかりで、色々と未熟ですが、どうかご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします!」
「「「いえええええい!!!」」」
「シトラ様だーいかーんげーいでぇぇえす!!」
「ようこそシトラ様ぁ!!」
なんというか、出来上がっている。流石のシトラも引き攣った笑いを浮かべてしまう程度には酷い。
ただ昨晩は本当に申し訳なかったので、これくらいの無礼講は呑み込もう。節度を弁えてはいるようだし。
昨夜、イソラが捕らえた侍女の話を聞いているうちに、シトラが挨拶するための時間がなくなってしまった。
とてもガッカリしていたと、クロから揶揄い混じりに聞いたシトラは大慌てでバルトリスに頼み、こうして無事歓迎会を開催できたのだ。軽食や酒、細やかな祝い品等はツァラフ姫の助力がなければ皆無だったに違いない。
「ツァラフにはお礼をしなきゃいけないわ」
「まあ、本人は頼られた時点で既に満足していたようですが」
「シトラ様〜薬草の保護、ありがとうございました〜!!」
「おい酒臭えぞ!」
「とっ捕まえてシリカの葉を突っ込んどけ!」
「にしても本当に良かったんですか? 俺、平民なのに」
「貰えるものはありがたく貰っとけよ」
会話だけでなんとなく力関係がわかる。自国を思い出す光景に、シトラは小さく笑った。
バルトリスがジークと肩を組んで踊ったり、是非乾杯をと言って列ができたりと、本当に騒がしい歓迎会で。でも心から楽しそうに笑うシトラを見ると、誰も何も言えなかった。
そう、ツァラフ姫に監視を頼まれたテリアですらも。
翌朝、その様子を聞いたツァラフ姫とラシュイル姫は、なんとなく悔しいと意見を一致させた。そしてホームでも何かしらの催しをと、密かに計画を練り始めるのであった。