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ぬるーりバッドエンド(オムニバス)  作者: 彼方のハートにヘドロ爆弾(仮)
本編
6/23

5. 異世界の神は・・・

【とある神】

 僕は神界へやって来た盗賊の少女を、地球に送り飛ばした。

 僕の星『ヌェーヨ』を消滅させようとする危険分子を、手元に残したくなかったからだ。


 彼女は今後どうなるか見ものだな。お、大柄な男に捕まったけど、黒い服を着た男に助け出された。


「ふむ、面白さを分かち合うため、ちょっと地球の神のところへ遊び行こうかな。」


「その必要はないぞ。『ヌェーヨ』の神よ。」


 その声は地球の神のものだった。どうやら僕が人間を送ったことに気が付いて此方に来たらしい。


「勝手なことをしてくれたな。貴様のせいで我が星『地球』の魂の比率が崩れてしまったではないか。」

 地球の神は神経質そうな顔をこちらに向け、僕に文句を言ってくる。

 普段は放任主義なくせして、なに細かいことを気にしているんだ。


「無断で送ったのは悪かったって、でも1人くらい大した誤差じゃないだろう。」

 一応謝っておくが、1人送ったくらいじゃ大した害にはならないだろう。


「確かにすぐに害がでる程ではないが、そういう小さなことが後々大きな事象へと変化することもあるのだ。我が星の民はそれをバタフライエフェクトと呼んでだな・・・。」


 クドクドと説教臭い言葉が続いていく。うーん、参ったね。こんなに怒らせるとは思わなかったよ。仕方ないな~。


「あぁ、わかったから説教はそれくらいにしといてよ。こうしよう、僕が送った少女の代わりに、君の星から1人を預かろうじゃないか。これで魂の問題は解決されるだろう。」


 こうしてお互いに人間を交換することが決定した。僕の方からは既に送られているので、後は貰い受けるだけだ。


「では地球からどれでも好きな人間を持って帰るがいい。」

「僕が選んで良いんだ。そこは適当なんだね君って。」


 なら、どうしようかな、そういえばさっき盗賊少女を庇っていた男がいたな。勘違いで庇ったようだけど、悪い奴ではなさそうだし、彼にしようかな。





【(元)喫茶店の自称ナイスミドルなマスター】

 自称ナイスミドルなカフェのマスターは何度も後ろを振り向きながら家に帰る。


 ストーカーから逃げるため、働いていた喫茶店に退職願を提出してきた日のことである。

 後ろからあのメガネをかけた男が付いてきているのではないかと、気が気ではなかった。


 突然そんな彼の元へ、空から強い光が射して体を包み込んだ。何が起こったかは分からないが、あまりの眩しさに目を閉じてしまう。


 暫く時間が経つと、だんだんと光が弱まってきた。


 マスターは恐る恐る目を開けると、そこには真っ白でなにも無い光景が広がっていた。


 え、俺ボケてる?まだ若いつもりだけど認知症か!?


「あはは、別にボケている訳じゃないよ。僕が君を此処へ呼び寄せたんだ。」

 はっと声の方へ顔を向けると、1人の少年が立っていた。


「やあ初めましてだね。僕は『ヌェーヨ』という星の神だよ。君から見たら異世界の神様ってやつになるね。・・・ちなみに認知症は後1年後に発症する予定だけど、今は未だ大丈夫だよ。」


 へっ、俺1年後認知症なの!?

 っていうか神って言ったよ、どういうこと!?いや、やっぱり認知症の件の方が問題だな。今からでも認知症治療に詳しい医者を・・・。


「いや~君は変わっているね。急に此処、神界へ連れてこられたのに認知症の心配を続けられる人間は君が初めてだよ。まぁ、認知症の告知をしたのも始めてなんだけどね。」


 少年はそういって笑顔を作る。


 なんか、おかしいな?

 あれ、、、俺って今声出していたっけ?もしかして神様だから心の声を聴けちゃうパターンか!うっひょーマジモンの神様じゃないっすかー。


「・・・すごいね君、この状況でそのテンションもすごいけど、それを一切顔には出していないところが何よりもすごいよ。」


 そう、マスターはあれやこれや考えても一切表情には出さず、クールなナイスミドルの演技が可能なのである。

 女性にモテたいがために習得した技術ではあるが、その成果がストーカー被害に遭うだけという非常に残念な運の持ち主だ。


「えっと、なんだっけ、あ、何の説明もしていなかった。君の前に立っているだけですごく調子が狂うよ。」

 少年の見た目をした神は、はぁっとため息をつく。


「で、本題。君を此処に呼んだ訳を説明しようじゃないか。」


 ふむ、良いだろう話したまえ。なんつって~神様に上から目線! これも聞かれちゃうんだよね。恥ずかしー。

 でも見た目はナイスミドルなのさ。キラーん。


 おそらく今考えたことも聞かれたのだろう。露骨に顔を顰める。


「あぁイラっとした。少し前に世界を消滅させようとした盗賊のお嬢さんが此処に来たけど、彼女より君の方がヤバい奴な気がするよ。」


 なんかとんでもないヤツと比較された。しかも俺の方がヤバいって。どんだけ~。


「君の心の声を聴くと疲れるから、心を読む術の『悟り』は解除するよ。」

 そう言ってまた、ため息をつく。先ほどよりため息は大きくなっていた。


「じゃあ、今度こそ説明するね。君を此処に呼んだ訳なんだけど、それは君に異世界へ行って貰いたいからさ。」


「異世界ですか・・・。詳しくお伺いしても宜しいでしょうか。」


「口でしゃべる分には、渋い雰囲気を醸し出すね君・・・。あぁもう、つい突っ込みを入れたくなっちゃう。」


 その後も何回か話を脱線させながら説明を聞く。


 少し前に彼の星『ヌェーヨ』から、地球に少女を送り飛ばした。

 しかし地球の神が、魂のバランスが崩れると文句を言ってきたことで、逆に1人地球から引き抜くことになったらしい。

 そして白羽の矢が立ったのが俺というわけだ。


 マスターは口元に手を当てて、少し考えるような仕草を見せた。

 その姿は深い知性を感じさせる雰囲気を醸し出していた。


 だが実際に彼が考えていたのは、異世界って言ったらチートを使ってハーレムを築き上げるご都合主義展開じゃん~。などといった知性の欠片も無いものだ。


「かしこまりました。地球そして『ヌェーヨ』の両神様からの願いです。お受けいたしましょう。」

 渋い声でそう応える。


「そう言って貰えると、助かるよ。じゃあ、早速君を僕の世界へと送り届けるね。」


 それを聞いてマスターはすごく焦った。

 何故ならば、まだチート能力を貰っていないからだ。どうにかしてハーレムを作るためのチートを貰わなければならないのだ。


「申し訳ないのですが、少々お待ちいただけますか。」

 マスターは交渉に持ち込むため口を開く。


「うん何かな?一応話くらいは聞くよ。」


「有難うございます神様。私は地球の日本という国で育ったため、日本の環境に適した体となっており、今のまま『ヌェーヨ』へと行くには病原菌への抗体など色々と不安があるのですよ。」


 それっぽいことを言っておく、実際に気になるところではあるしね。


「確かに今のまま君が『ヌェーヨ』に行ったら、病気になっちゃうね。ゴメンうっかりしていたよ。」

 両手を合わせ、テヘペロと謝ってくる。

「じゃあ、君に『一切不健康にならない体』を上げよう。これで1年後の認知症も大丈夫だよ。」


 おっと、思わぬところで認知症の予防ができてしまった。しかもだいぶチートっぽい能力じゃないか。あれか、毒とかをばら撒いて無双できるやつじゃないかな。

 しかし、できればもっとモテそうな能力が欲しい。



【とある神】

 うむ、うっかりしていた。そりゃ環境によって病原菌は違う。あとで盗賊少女も病気にならないようにしとかなくちゃね。


 しかしそんな所に気が付くなんて、案外頭が回るじゃないか。


 なに、なんだって!?

 平和な日本に居た彼は戦うすべを持っていない。身を守る力も必要とはね。

 たしかに、『ヌェーヨ』はモンスターとかもいるし、人間に敵対している魔族なんかも存在する。治安も日本に比べたら雲泥の差だ。

 仕方がない、彼が身を守れるように『成長しやすい体』を上げよう。これも仕方ないことだ。


 なに、なんだって!?

 成長しやすい体だとしても、自分はもう歳をとっているので、体を酷使することが出来ないとはね。

 たしかに、彼は認知症一歩手前まで来ていたのだ。そこそこの歳だと言えよう。

 仕方がない、彼には『若くて歳を取りにくい体』を上げよう。『歳を取りにくい体』は、僕に足りない考えを教えてくれた彼へのサービスだ。


 なに、僕の世界で子孫を残せるか気になるだって!?

 確かに、生物としては当然の疑問ではある。

 仕方がない、彼には『他種族とも子供を作れる体』を上げよう。


 なに、僕の世界で使えるお金が欲しいだって!?

 確かに、最低限の金銭は必要だろう。

 これは盗賊少女が持っていた金品を渡しておこう。代わりに彼の貯蓄は盗賊少女に上げておこう。これなら等価交換になるだろう。

 ※盗賊少女は王城から金品を持ち出しているため、莫大な資産を持っている。勿論等価交換どころの騒ぎではない。


 なに、ハーレムが欲しいって!?

 いや、流石にそれは上げられないよ?


 じゃあ、他に何ができるかって!?

 あれ?コイツかなり要求多くない?まぁ、こちらの都合で異世界に送るわけだし、少しぐらいは譲歩してやるか。

 ついでに、僕の力を自慢してやろうかな。





【(元)喫茶店の以下略】


 はっはっはっは。笑いが止まらないぜ。この神ちょろすぎる。

 この先、バラ色の人生まったなしじゃないですか。


 いかん、いかん。顔がにやけるところだった。さも当然の要求をしている振りをしなければ、過剰要求していることに気づかれてしまうからな。

 しかし、最初からハーレムを作ってもらおうかと思ったのだが、流石に無理だった。


 しかし、ただでは転ばぬのがこの俺だ。そこから更に何ができるか聞きだしてやろうじゃないか。


 そんなことを考えていると、少年神は何処からか光る球を取り出した。


「これは『星の秘宝』といって、『ヌェーヨ』を管理するための装置なんだ。これを使えば大抵どんなことでも出来るんだよ。」


 なんと!それは凄い。それさえあればチート能力どころではないじゃないか。

 是非欲しいところだが、流石にこれを貰うことは出来ないだろう。


「君を不老不死にすることもできるし、龍も殺せる超人にすることもできる。後は、やろうと思えば大陸を消し飛ばすこともできるんだよ。」


 こわっ!超危ないヤツじゃないですか。しかし、そういう取り扱い注意なものほど触りたくなるのが男の子だよね。もう、おじさんだけど。


 少年神は得意げに話を続けており、こんなことや、あんなことと奇跡の力をどんどん説明してくる。

 若干どや顔が入ってるし、これは自慢されてるんじゃないかな?


 俺も俺で、神の期限を損ねないよう、いちいちリアクションを取るようにしているから、更に神の機嫌が良くなって話が長くなる。


 俺はチート能力で「すごーい!」とか「流石ッ!」って言われたいのであって。自分が他人に言いたいわけではないのだよ?


 お~神のやろう、段々鼻高々にふんぞり返り始めた。もうふんぞり返りすぎて目線が上に向いちゃっているよ。


 あれれ、今なら見られていないし、ちょっとこの『星の秘宝に』触れそうじゃない?

 俺は少年神に気づかれないように、そっと『星の秘宝』へ手を伸ばした。


「あ、そうそう、言い忘れていた。」





【少年神】

 うむ、自慢するのって気持ちがいいな。


 あ、そうだ、万が一これに触られたら星自体が消滅する危険があるし、注意しておかないと。


「あ、そうそう、言い忘れていた。この『星の秘宝』は他人の持っていかれると僕の星『ヌェーヨ』が消滅しちゃうから・・・・あれ?」


 あれ?『星の秘宝』が無いぞ?





【(元)以下略】

 ふーん、これでチートを使い放題なのか。持ってみると結構軽いし、光っていること以外はそんな大した事なさそうだな。


「この『星の秘宝』は他人の持っていかれると僕の星『ヌェーヨ』が消滅しちゃうから・・・・あれ?」


 神は自分の手元に『星の秘宝』が無いことに気が付き素っ頓狂な声を上げた。


 というか、今星が消滅するって言わなかった?


 あれっ?


【とある神】

【(元)喫茶店の自称ナイスミドルなマスター】


「「えぇ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」」






 その日、惑星『ヌェーヨ』は消滅したのであった。


盗賊少女の夢は、喫茶店のマスターが叶えました。

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