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賤混者

「俺の名は、ルシフ。大丈夫?」


「は、はい。有難う御座います。私は、リリーと申します」


「リリーか……可愛らしい名前だね。今の奴等はいったい?」


「私も分かりません。恐らく、盗賊か野党か……暗殺者か……お金で雇われたのでしょう。背後関係を聞きたかったのですが、もう無理でしょうね」


「ああ、殺しては不味かったのかな。すまないな」


「いえ、助かりました!ありがとうございます」


リリーは、ルシフを見上げ、


「ロマニア、ですよね。私もロマニアに戻る所でした。宜しければ一緒に行きませんか?」


「それは助かるよ。ずっと田舎の方に暮らしていたから、このあたりの地理には疎くて」


「田舎……ですか。普通の街であれば、街道が繋がっているので。街道から外れているという事は、小さな村とかでしょうか。一度街道に出れば、後は街道沿いに進むだけなので、そこまでが少し大変ですね……移動手段もなくなりましたし」


「ああ、馬車の馬も殺されてしまったからね」


リリーの案内で、街道に向かって歩き出す。


「ルシフさんは、何故王都に?」


「貴族の紹介で学園に通える事になってね。お婆さんが王都で仕事をして、貴族の方を治療したのだけど、それが凄く感謝されて。孫の話題になって、俺を学園に推薦してくれたらしいんだ」


「お婆さん、凄い薬師なのですね」


「薬師というか、魔女かな」


「魔女ですか?!」


魔女。

人の身にて魔導を極める道を棄て、悪魔と取引した者。

本来であれば、迫害されて然るべきでは有るが。


この国は、力に貪欲な国。

力ある者には、一定の権利を認める。

公職には近づけないものの、地方にて細々と暮らす事は認めているのだ。


……もっとも、ルシフの祖母、アカネアは、地元では領主よりも敬意を払われる存在ではあるが。

元々は、近くの深海の森にて君臨せし魔女。

国の方針の変更により、近くの村に移住してはや100年超。

今では、その地方に就任した領主は、アカネアに挨拶に参るのが慣例化している。


「魔女のお孫さん……まさか、魔術を?」


魔術。

人の身の最高峰、聖女や最高司祭、そして勇者……そういった存在が操る人智を超えた力、秘蹟。

その対極となる概念、本来は人の身では行使できないもの。

魔女は、悪魔と契約する事で、第参階位(サード)までの魔術を行使する。

その威力は、第捌階位(エイス)の属性魔法すら凌駕する。


ルシフは少し言い淀むと、


「魔術を使えると、目立つかな?」


「それは当然です!第参階位(サード)と言わず、第壱階位(ファースト)ですら、常識を覆す力。学生レベルでそこまで力があれば、首席卒業も難しくない筈です!」


ルシフは困った様に。


「それは困るな……俺の目的の為には、目立たず、程々の成績で、ひっそりと学園を卒業……そうで無くては困る。リリーさん、すまないが、学園で目立たない為、学生の基準、というものを教えてくれるかな?」


「基準……ですか。例えば、先程の剣技……あの剣技であれば、学園首席の剣技すら児戯、それだけでも頂点を取れるでしょうね。その上、魔術まで扱うとなれば……」


「あの程度の剣技すら駄目なのか……」


「むしろ、首席をとった方が早いのではないですか?」


ルシフは、リリーを見つめ、


「キミも気付いているだろう?俺は──人間ではない。ある程度までなら許容してもらえているが……基本的には人外だ。あまりにも圧倒的な力を振るえば、同じ人として見て貰えない」


ルシフは、賤混者(ハーフ)

魔物の血が混じった存在。

国によっては、立派な討伐対象だ。


「……分かります」


「分かるのか?!」


あまりにも自然なリリーの同意に、ルシフはツッコミを入れた。

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