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パーティー【サイエンス】 3

(アキトside)


パーティー【サイエンス】のリーダーであるアキト()は悩んでいた。



自分以外のメンバーは既に、この世界に残る事を早々に決めてしまい。

決断を下せないのは自分一人……



自分と同じ独身者のナカジマは、『稼いだ金と名声を捨ててまで帰る気は無い。』とさっさと居残りを決めた。

親友のホリイも『妻子がある身で、置いて帰る訳には行かへんやろ!』と帰還を拒否。 

タカヤマ、フジミヤも妻帯者なので、当然残る事に決めた。



ユイナーダにいる元メンバーのヨネザワにも連絡を取ったところ、やはり『妻子がいるし、ここでなら自分の手で、【夢の超特急】を作れるかも知れない!』と、やはり残る事を決めてしまった。



さっきまで話していたタマキさんが教えてくれた情報だと、召喚された国を出る時別れた部員は、何度もエルフの嫁を得ようとあちこちのエルフの里を襲撃して逮捕され、件の帰還魔法の最初の実験で()()()【強制送還】されたそうだ。



何故()()()送還されたとわかったのか疑問に思うが、エルフ側の話しによると、【神のお告げ】だと言う。



という事はやっぱり、悩んでるの俺だけか……



実は『そろそろパーティーを解散しよう』という話しが出ていたのだ。



ホリイの長男は父親譲りの頭の良い子供で、奥さんの実家のあるユイナーダ王国の学園の【練金科】に進学したいと希望している。

その為、『来年には向こうに移住したい』とこのクエストを受ける前に言われた。



ナカジマは今まで貯めたお金で、商会を作りたいと前々から言っていたしな。



タカヤマとフジミヤはそれぞれの奥さんから、『危ない仕事はそろそろ辞めて欲しい。』と言われているのも知っている。



もし向こうに帰れる事になった時の為にと、なるべくしがらみを作らない様にして来たつもりだったが、いざとなったらそれも無駄な抵抗だったな……



向こうに残して来た家族の事は気になるが、俺一人で帰っても針の筵なのは間違いない。

こっちでの記憶を消されたら、皆んなの事を説明出来ないから余計にマズいだろう。



そうなると帰るという選択肢は、無くなる訳だ。



あの公爵家の坊ちゃん、俺に名刺を渡す時にこっそり『もし残る場合、良かったら公爵家に来ませんか?悪い様にはしませんから…… 。』と言って来た。



俺以外のメンバーは解散後の身の振り方が決まっているから、公爵家に雇われるかこのまま一人で冒険者を続けるかの二択。



だが一人で冒険者生活を続けていく自信がない。

今まで続けて来れたのはメンバーの、的確なフォローがあったからだ。



残念だがやはりパーティーを解散して、公爵家に雇ってもらった方が、良いかも知れない。



一晩考えた結果…翌朝、俺の考えをメンバーに話したところ、全員一致でパーティーの解散とこちらに残る事が決まった。



チェイテス公爵家の一行が、出発する前に結論が出たので、報告に行くと『以外と早かったですね。ではいろいろ手続きもあるでしょうし、後は王都に戻ってからにしましょう。』と言って、王都へと戻って行った。



王都に戻ったらパーティー解散か……

こっちに来て十年…全員無傷とはいかないが、誰も死ななかったのは奇跡だ。



それだけは、神様に感謝しても良いかも知れない……



「お~い!そろそろ出発するで~!」



ホリイが魔改造した魔道車(シルバーのワゴン)の運転席で、皆んなを呼んでいる。

たぶん皆んなでこうして乗るのは最後になるだろう。



「「「「おう!!」」」」



俺達の戦いはこれからだぜ!!

                

------------------------


(ネイサンside)



公爵家の馬車の中で、俺はようやく一息ついた。



「ああ~くたびれた。やっぱ高位貴族っぽく振る舞うのはしんどいな。」


「この程度で根を上げてて、どうするんです?

来月からは殆ど毎日になるんでしょう?

私は商人ですから、学院にまでは着いて行けませんよ。」



とタマキさんが言う。

ユイナーダ学園は、そう言うのは常識の範囲内なら割と自由だったけど、ポーラルタオ魔法学院は厳しいらしい。



それに高位貴族は、従者やメイドを伴って通学する事になっているんだが、ここで問題発生。



俺、ユイナーダ学園では従者を付けてなかったんだよな。

だいたいの事は自分で出来るし寮付きのメイドがいるから、専属執事だけを連れて留学していた。



ところがだ、ポーラルタオ魔法学院では高位貴族が、従者も連れずに学院に通学するなんて、有り得ない事だった。



普通ならランディーの従者がそのまま勤めるんだが、知っての通り一家で公爵家を騙していた事が判明したので処刑された。



その所為で長年公爵家の護衛騎士を勤めていたアンバー家は一家離散、出来が良いと言われていた次男は幼い妹とユイナーダ王国にいる公爵家の親戚に引き取られた。



つまり俺の従者がいない。

もちろん公爵家足るもの、人材がいない訳でもないのだが、彼らも今学院に通っているのだ。



従者兼護衛を雇おう!

俺自身もかなり戦える自信はあるが、俺の所まで敵が来たらお終いだからな。



とりあえず、インパクトのある強い護衛がいるだけで、襲う気が無くなると思うし……

高位貴族として、舐められる訳にはいかない。



偶にユイナーダ学園の休暇とポーラルタオ魔法学院の休暇がズレている時に、第二王子達との交流の為に学院の方に顔を出すと、ランディーの評判が良すぎて完全に被害者である俺に対する、学院生の態度が酷い。



直接何か言われる訳じゃないが、凄く遠巻きにされてヒソヒソと噂話しをされている。



まぁそう言う訳で、信用できない学院生の従者はこの時点では雇えない。

本当はこの1カ月の内に顔合わせして、信用を得る筈だったんだが、この騒ぎで計画がダメになった。



で思い付いたのが、学院と無関係でS級冒険者のパーティー【サイエンス】の誰か(デスクワーク主体のホリイ氏とナカジマ氏を除く)を雇う事。



ちょうどタマキさんが冒険者ギルドで、パーティー解散の噂を聴きつけて来たんだ。



新聞の記事の件は本当に偶然だった。

彼らに『帰還する方法がある。』と伝えるのは、ヤータ神様から頼まれていたので、最初から言うつもりだったけどな。



運良く学院での従者兼護衛は、アキト氏が引き受けてくれたから良しとして……



やっぱり不安なのは学院での人間関係だよなぁ。

あゝもう考えるだけで、胃が痛い……



学院に行く準備は整った。

気は乗らないが、気を引き締めて戻ろう!

学院には新しい人間関係という戦いが待ってる!!




                    fin

finと書いてありますが、この章が終わるだけでお話しはまだ続きます❗️

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