パーティー【サイエンス】 1
冒険者パーティー【サイエンス】。
ポーラルタオ王国を拠点にする、稀人の男性5人のS級冒険者パーティーだ。
リーダーのアキト氏は、他のメンバーより筋肉質な人物で、前衛担当。
サブリーダーのホリイ氏は、明るくてパーティーのムードメーカーでもある。
主に魔道具のメンテナンスを担当しているタカヤマ氏はメンバーで1番若くけっこう動けるタイプ。
ナカジマ氏は物作りが趣味で、この世界でもいろいろ特許を取っていて、割と金持ちらしい。
いつも気難しそうな顔をしているフジミヤ氏は単独行動が多いが、情報収集力は抜群で、身体能力も高い。
まぁ冒険者ギルド情報の受け売りだが……
新聞の記事から察するに、どうやら召喚魔法でこっちに転移してしまったらしい。
俺の出した新聞を確認した【サイエンス】のメンバーは、それが本物である事を確認すると、一旦メンバー同士で話し合いをした後、リーダーのアキト氏が代表で質疑応答をする事にしたらしい。
「確かにこの記事に書かれているのは我々の事だが、貴方はコレをいったい何処で手に入れたんですか?」
う~ん正直に言って俺の正体が、バレるのもなぁ~。
ここはやっぱり匿名希望で……
「1カ月程前に私とここにいるタマキが保護した稀人の持ち物だ。
その人物はこの新聞を読んでいる時に、この世界に転移してしまったそうだ。
なのでその人物が、こちらに転移してしまった日付は【英弘5年4月23日】以降という事になる。」
「貴方はこの新聞が読めるのか?」
まぁ疑問に思うよね。
「私はユイナーダ王国の学園で、【稀人研究】をしていてね。
王家からもお墨付きを貰っている専門家だ。
それにタマキがいるし……
彼は海の向こうにある国がおこなった、【勇者召喚】に巻き込まれてね。
我が公爵家で保護しているんだ。」
と言いながらチラリとタマキさんの方を見る。
タマキさんは俺の無茶振りに、ちゃんと答えてくれた。
タマキさんが社会経験豊富で良かった。
因みにタマキさんには、実は俺が転生者だという事のはとっくにカミングアウト済みだ!
此処へ来る前に、向こうであった事を話して置いたのも良かったようだな。
まぁあんな話しを気兼ねなく話せるのも、タマキさんだけだけど……
「で…我々に聞きたい事というのは、年齢が合わないというのと、人数が2人足りない事についてだろう?」
「はい…そうですね。予想としては元の世界とこの世界の時間軸がずれているか、転移して此方に呼ばれる時間がランダムという事でしょうね。」
幸い俺にはヤータ神様から頂いたチートがあるから、公明達と行き違いにならないけど、無かったらヤバかった。
「まぁだいたい後者の方だな。
我々がこっちに転移して来たのは約10年前だ。
この大陸にある、ある国の魔術士の魔法実験に巻き込まれてな。
しかも違法だったらしい。
暫くはその魔術士の屋敷に居たんだが、その国の騎士団に違法魔法を使ったのがバレて魔術士が逮捕されてしまったんだ。
他にもいろいろやらかしていたらしい。」
とアキト氏が語る。
うわぁ迷惑な話しだなそれ。
「それで貴方達はどうされたんですか?」
「確認の為に騎士団と一緒に王都に連れて行かれて、取り調べというか聞き取り調査をされた。
その後、我々は巻き込まれただけだという確認が取れ、無事釈放された。」
釈放されたんですか、良かったですね…じゃないよなぁ。
「一応慰謝料として、魔術士の財産からけっこうな金額を渡してくれたから、悪い人達じゃなかったんだが、その国は長命種が多く住む国でね、普通の寿命の我々には生活し辛くて、国を出る事にしたんだよ。
その時1人だけ『どうしてもエルフの嫁が欲しい!』と言って残った男がいる。」
【サイエンス】のメンバーは口々に、その男の事を言い出した。
「阿保や阿保やとは思うとったけど、アレほどとは…… 。」
「ハーレム物のラノベ、大好きだったからなぁ~。」
「騎士団とかに捕まってそうですよね。」
「あり得るな…… 。」
どうやら残念な人だったらしい。
「ああ…稀人あるあるですね。
よくいるんですよ…そういう方。
それでもう1人の方は?」
タマキさんが彼らに尋ねると今度は、
「6年前まで一緒にいたんだが、ユイナーダ王国の貴族の家に引き抜かれて就職したよ。
魔道具で有名なサイド伯爵家。
何年か前から走り出した魔道列車があるだろう?
アイツは鉄オタだったから、その伯爵家の人達に気に入られてな、今じゃ嫁と子供もいる。」
へぇ~サイド伯爵家か…てターク先輩の家じゃないか!




