【閑話】ある冒険者の話し 6
すみません!
たいへんお待たせ致しました!!
(ロイドside)
15分くらいして、ハインツの旦那がワタヌキ君を担いで戻って来た。
ワタヌキ君はボロボロで気絶しており、利き手を潰され左脚を斬り飛ばされている。
「旦那やり過ぎ。一応血止めはしてあるけど…… 」
「仕方ないでしょう。大人しく捕まえられていれば良いのに、抵抗する彼が悪いんです。
私はなるべく早く家に帰りたいんだよ。」
『この依頼の件で2週間以上、溺愛する奥さんと子供に会ってないのが原因よ。』
という事を教えてくれたのは何故かこの忙しい時についさっきやって来た、ボルネオール侯爵家次期女侯爵ケイト嬢。
あの勇者シルバーの飼い主でもある。
彼女曰く、ここで待っていると勇者シルバーが獲物を獲って来てくれるそうだ。
暫くすると本当に勇者シルバーが【隠れ身のナミ】を引きずって来た。
いや…あの大きさは猫じゃないだろ!?
「デカくね?」
という俺のセリフに、ハインツの旦那が
「デカいな…というかデカ過ぎる。
どう見てもライオンとかトラだろ?
サイズ的に中型魔獣だな。」
最初自分の目がおかしいのかと思ったが、違った。
勇者シルバーはこの世界でいう中型魔獣サイズだった。
旦那の話しじゃアレを『猫だ。』と言い張るのはボルネオール侯爵家の姉妹だけだそうだ。
そりゃそうだろう。
とりあえず、ワタヌキ君とナミは領主館に併設されている、牢屋に入れとこう。
「宇宙人に支配されたお江戸に出て来る、デケェ白犬みてぇダナ。こっちは黒いトラ猫だけど…… 」
シルバーを見上げながらオレが呟くと
「おや?ロイドもアレを知ってるんですか?」
とハインツの旦那が話しに乗って来た。
俺達はその話しで盛り上がった。
やっぱ、元の世界の話題が通じる相手がいるのは良いよな♪
「シルバーって本当は、猫ではないのではないか?」
「実は聖獣だったりww」
俺達が自分の事を話しているのに気づいた様で遊んで貰えると思ったのか、こっちに向かって来たかと思うと、通常の猫と同じ様にジャレつこうとして来た。
「「うわっ!シルバーよせ!!」」
俺達はすんでのところで、シルバーから逃げた。
ライオンやトラサイズの猫と遊ぶのは非常に危険だ!!
元の世界で普通に飼える猫のサイズが、メインクーンやフォレストキャットぐらいなのは、それ以上大きいと普通に舐められただけで危険だからと聞いた事がある。
猫の舌が何故ザラザラなのか?
あの舌は毛並みを整える為だけにある訳じゃない。
アレは骨に付いた肉を削ぎ取る為の、ヤスリの役目を担っているんだ。
そんな舌で舐められたら大怪我じゃ済まない!
俺達はシルバーから逃げる為にあらゆるスキルが使いまくった。
俺なんかワタヌキ君との戦いに使わなかった、ヤッさんに借りた指輪の魔石の魔力まで使っちまった!
ハインツの旦那はメイン武器の大事な剣を折られて涙目だ。
オイ!飼い主、早くなんとかしろよ!!
ギルド内で寛いでいたケイト嬢が、ようやく騒ぎに気付いてシルバーを宥め、元の大きさに戻した時には俺達はボロボロだった。
シルバーは遊んで貰って満足そうだったが、こっちはもう息も絶え絶え。
ケイト嬢は真っ青な顔で、謝罪し回復魔法を掛けてくれた。
俺達だったから何とかなったが、一般人が相手だったら確実に死んでるな。




