【閑話】ある冒険者の転落 3
ロイドさんの正体。
(ケンside)
「おや?残念…… 。後1人で金貨10枚だったのになぁ。」
そう言いながら、僕達の前にバリア越しに現れたのは稀人じゃなくて、少し浅黒い肌をした金髪に紫色の目をした、弓と槍を持った猟師風の中年男だった。
紫色の目って『向こうの世界じゃ絶対にあり得ない。』と何かの本で読んだ事がある。
「そんな馬鹿な!?あれだけのスキルを使って置いて、稀人じゃないなんて!?」
「坊主…この世界には稀人以外にも、ユニークスキル持ちはある程度の人数いるんだぜ。知らなかったのか?
S級の奴らなんか俺より凄い。」
コイツが…コイツが僕のハーレムメンバーを殺した犯人!!
僕は有りったけの力で、バリアを攻撃した!
でもヒビ一つ入らない……
何て硬いんだ!
「僕のハーレムメンバーを返せ!
お前さえいなければ、僕はずっと【勇者】として彼女達と上手くやっていけたんだ!!
それに僕だってS級の冒険者だ!!」
「はぁ〜?お前が【勇者】で【S級】??」
中年男は怪訝な表情で俺を見た後、呆れた様な表情でこう言った。
「おいおい…自分が【勇者】だと勘違いしてるのは100歩譲ってわからないでもないが、【S級】ってのはどこから出た?」
だから僕は堂々と先日貰ったばかりの【S級冒険者のギルドカード】を男に見せてやった!
キラキラ光るプラチナのカードだ!!
「ふふん♪どうだ!コレがS級冒険者のギルドカードだ!悪党め観念してこのバリアを解け!!」
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(ロイドside)
自慢気にワタヌキ君が俺に見せたカード…それは明らかに偽造された物だった。
あちゃ〜冒険者カードの偽造は重罪なんだがなぁ……
本物のS級のカードは黒に金の縁取りで、さながら前世のブラックカードを彷彿させる物だ。
本人はどうやら本気で自分が【S級冒険者】になれたと思ってるみたいだな。
おまけに後ろにいる仲間が痛みに耐えながらも、こっそりこの場を離れようとしている事にも気付いていない。
ここは親切に教えてやった方が良いよなぁ。
「あのな…ワタヌキ・ケン君、ギルドカードの偽造が重罪なのは知っているかい?」
「当たり前だ!」
胸を張って答えるワタヌキ君……
この様子じゃ自分がとっくに、冒険者の資格を剥奪されているのも知らなさそうだな。
お迎えも来た様だし、そろそろ本当の事を教えてあげた方が、元同郷者として最後の優しさって奴だよな。
「あのなぁワタヌキ君、君もうとっくに冒険者の資格剥奪されてるんだよ。
だから君はS級にはなれない。」
「えっ!?そんな馬鹿な事、有り得ない!」
まぁ信じたくないよなぁ……
けどコレは事実だ!!
「悪人の言う事なんか信じられるか!
僕の大事な仲間達を、何人も殺した犯人の言う事なんか!!」
激昂してますますこっちの言う事を聞かないワタヌキ君。
まったくどっちが悪人だよ!
「その悪人ってのはどこからの発想な訳?
あゝそう言えばまだ名乗ってなかったな。
俺は冒険者ギルド・オッハーナ支部のサブギルドマスターのロイドだ。」
そう言って冒険者ギルドの職員証を見せてやった。
せっかく俺が名乗ってやったのに、ワタヌキ君は胡散臭そうにこっちを見て来た。
無視して彼の勘違いを正して行こう……
「まず、ワタヌキ君の冒険者の資格剥奪の理由からな…
①番同士だったからと言って、婚約者のいる貴族令嬢を勝手に連れ出し逃亡。【誘拐罪】な。
②令嬢の家族、婚約者側からの数回に及ぶ話し合いの打診を無視し、その使者の人達を負傷させた【傷害罪】。
③婚約者に何の落ち度も無いのにも関わらず、逃亡先でまるで婚約者に落ち度があったかに思わせるような話しをねつ造し、彼の名誉を著しく傷つけた事による【名誉毀損】と公爵子息に対する【不敬罪】。
④レモ男爵領においてレモ男爵と奴隷商を襲撃し、金品強奪並びに犯罪奴隷、借金奴隷の【逃亡幇助】。
⑤その後も強盗団を率いて各地で盗賊行為を繰り返し、他にも何件か脅迫して金品を巻き上げている。
【強盗傷害】と【脅迫罪】。
他にもいろいろやらかしてるが、主な理由はこんなところだ。
何か質問は?」
「嘘…嘘だろ……だって僕はチート持ちの稀人で、【勇者】になったのに…… 」
彼にとってはとても信じられない内容だからな。
俺の言った事が信じられない…いや、信じたく無いんだろうけど……
「ワタヌキ君がパーティーメンバーだと言ってた連中な、メリーナ以外の奴等は女盗賊団のメンバーで、全員指名手配中の賞金首だ。」
おっ!かなりショックを受けているな。
「お前ナミの住んでた村を悪徳領主と組んで襲って、彼女の家族を殺したんだろ!?
何でそんな奴が冒険者ギルドのサブマスなんて、やってるんだよ!?」
まだ言うか!?悪徳領主と村を襲った?
そんな覚えないけど……
「それは違いますよ。正しくは私の実家の領地にあった盗賊のアジトを彼に助っ人を頼んで討伐したんです。」
そう言って突然、話しに割り込んで来たのは待ちに待った援軍…S級クラスの実力者ハインツ・フォン・ライブラ伯爵だった。
彼の接近に気がつかなかったワタヌキ君は真っ青になってかなり慌てている。
けっこう前から近づいてたんだけどなぁ……
そこが、元A級のアマチュアと場数を踏んでるS級クラスの実力を持つ、元王族の護衛騎士の違いってヤツだ。
「旦那…待ちくたびれたぜ!あと少し遅かったら俺のスキルじゃ持ち応えられませんでしたよ。」
「すまんな。誰が行くかでちょっと揉めてね。」
そう言いながら、ハインツの旦那は油断なく剣を構えていた。
新作を投稿しています。
(仮)天然ボケ猫王子は修行中〜勇者様(笑)は回復役は男の神官より聖女の方が良いそうです。
https://ncode.syosetu.com/n6024gl/1/
☆回復役の神官が、男性神官ばかりだった理由は、この作品を読んで頂けるとわかります。




