【閑話】ある冒険者の話し 3
後半グロ注意。
俺はロイド、34歳独身。
皆んなには内緒だが、実は転生者で、二つ名を《鉄壁のロイド》と呼ばれるB級冒険者だ。
今、俺の故郷オッハーナ騎士爵領の領都(漁村)であるバターケは危機に晒されている。
元A級冒険者で稀人のケン・ワタヌキ(綿貫)という勘違い野郎率いる盗賊団に狙われているんだ。
このケンの勘違いが酷い。
見た目が悪人だったという理由だけで、あちこちの商会や領主を襲って金目の物を奪ったり、犯罪者を逃して正義の味方気取り。
そもそも、ケンの【番同士だから何をしても良い】という考え方が間違っていたのが原因だ。
チェイテス公爵家嫡男の婚約者だった元伯爵令嬢メリーナ(平民落ち)と番だとわかった時点で、駆け落ちなどせずに話し合い、示談金を払っていればこんな事にはなっていなかっただろう。
おそらくケンのA級冒険者の稼ぎなら、数年で示談金も払い終えたハズだ。
別の世界の知識を鵜呑みにし、公爵家の温情も無視して逃亡を続け、挙げ句に見た目が可愛いい盗賊に騙されて悪事の片棒を担ぎ、ついには【大盗賊団の首領】になってしまった。
本人はラノベの主人公気取りで、ハーレムのつもりなのが阿保過ぎて呆れる。
そんなご都合主義な話し、ある訳ないだろ!
転生者の俺だってモテないのに!
とそんな事をしている場合じゃなかった。
明日の朝までに出来るだけ魔晶石に魔力を貯めておかないと……
あゝでも、もう限界かなぁ……
コレ以上魔力を抜くと明日の朝までに全回復しない。
するとそこに、このオッハーナ騎士爵領の領主で幼馴染みのヤっさんこと、ヤックルト・F・オッハーナが近づいて来た。
「ロイド…オマエに渡したい物があるんじゃけど。」
「俺に渡したい物?」
「ワシん家の家宝の、《魔晶石の指輪》じゃけどのぉ。この度はオマエが持っとった方がええじゃろう思うてな。」
「家宝の魔晶石の指輪って、いつもヤっさんが填めてるそれか?」
それはヤっさんがいつも填めている、趣味の悪い如何にもなゴツい指輪。
「皆んなして、出来るだけ魔力を集めたんじゃけど、そがぁに溜まらんかった。」
ヤっさんが渡してくれた、魔晶石の指輪にはそれでもけっこうな量の魔力が溜まっていた。
「皆んな、ありがとうのぉ!」
「いんねのう…ワシらじゃ、コレが精一杯じゃけんのぉ。」
「ワシらが使うよりロイドが使った方が、助かる確率が高いんじゃけぇ、気にせんとって。」
「明日まで休みゃあ魔力は回復するけぇ。」
「皆んな…ほんまにありがとう。
明日に備えて早めにメシを食うて寝もうや。」
「「「「そうじゃのぉ〜。」」」」
(深夜)
深夜、俺のスキル【地図アプリ】に敵の位置が表示された。
意外と早かったな…盗賊団の斥候2人か。
この距離なら俺の弓で仕留められるな。
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(盗賊side)
2キロ先の暗い夜道を、盗賊団の斥候ベッティとマルカは走っていた。
「ねぇマルカ?今度の襲撃場所って、最近有名なあの七色真珠の産地なんでしょ?」
「あゝそうだけど…何?欲しいの?」
「だって綺麗じゃん♪この前の領主のおっさんが持ってたネックレス、アレ欲しかったなぁ〜。」
「仕方ないだろ。ケンの奴が先に見つけちまったんだから。」
「それにしても、アイツ馬鹿だよねー♪
あんな簡単にナミのハニトラに引っかかって、ハーレムのつもり……。」
「?ベッティ???」
ドサッ!
突然、何処かから矢が飛んで来て、アタイの相棒の頭と胸に刺さり、気づいた時にはベッティは死んでいた。
真っ暗な夜道で隠れる所も無い……
いったい何処から?
「嘘だろ?何で?さっきまで話してたのに!」
ベッティとアタイは盗賊団に入ったのも、同じくらいで歳が近かったのもあってすぐ仲良くなった。
足が早かったアタイ達の役目は斥候。
ずっと2人で一緒にいられると思っていたのに……
こんな呆気なく殺されるなんて。
と…とにかくお頭に、知らせなきゃっ!!
グサッ!!
「あ…。」
翌朝…二人の女盗賊の遺体は、いつまでたっても帰還しないのを心配して探しに来た、仲間に発見された。
しかし、その仲間も何処からか飛んで来た矢や槍で、無残に殺され、盗賊団がこの事実に気づくのが遅れてしまった。
こうして、盗賊団は1人…また1人、少しずつ倒されていったのだった。




