3 ちょっとした飯テロと胃薬
「初動捜査の遅れが拙かったですね。
此方に直ぐ連絡をしてくれれば、手は打てたのですが…… 」
ダイニングに移動した俺と父上は朝食を食べながら、今回の件を相談していた。
今日の朝食は焼き立てのパン、スクランブルエッグとカリカリミートオークベーコン、カボチャの冷製スープにサラダ。
食後のデザートは王都周辺でよく採れる、リンゴのジャムをかけたヨーグルト。
料理長が気を使って胃に優しいメニューにしてくれたらしい。
後で礼を言っておこう。
特にこの生クリームを入れて作った、スクランブルエッグは格別だ。
この作り方は公爵家に引き取られた頃、前世の記憶を思い出して態々料理長に頼んで作って貰ったもので、今では公爵家の朝の定番料理になっている。
ミートオークの自家製ベーコンも良い味だ。
カボチャの冷製スープは俺の大好物。
あゝ美味しい…おかわり欲しいけど、貴族だからマナー的にダメなのが残念。
サラダの人参ドレッシングも中々の味。
俺、実は生の人参は苦手。
でもこの人参ドレッシングはいける。
料理長には今度、向こうから持って帰った料理レシピを渡そう。
きっと喜んでくれる。
問題はこっちの言葉に翻訳するのが、かなり大変だという事……
こっちに無い食材とか有るしな。
豚肉はミートオークとかに書き直すとか。
「ネイサン!聞いているのか?」
あ!食事に集中し過ぎてたな。
父上とメリーナの件で話している途中だった。
「申し訳ありません。思いの外今回の件、ショックだった様で…… 。」
本当は朝食の事を考えていて、話しを聞いていなかったのだが馬鹿正直に答えたら、父上の雷が落ちるだけなのでそれっぽいセリフで誤魔化す。
「無理もないな…伯爵家に居た頃からの仲だ。
で、メリーナ嬢との婚約はどうするのだ?」
「そうですね……。ネーブル伯爵家にはずいぶんお世話になりましたし、メリーナ嬢のおかげで助かったのは事実ですが、それとこれとは別問題です。
もし…どうしても『番と一緒になりたい。』と言うなら条件付きで婚約は白紙にしてもかまいません。」
「その条件は?」
「それは…… 」
――――――――――――――――――――――――
(数分後…… )
「本当にその条件で良いのか?
お前が良いなら、伯爵家には納得させるが……
どうやって2人を捕まえるつもりだ?
相手は稀人かもしれないと言うのに!」
「はい…ユイナーダで世話になっている、ボルネオール侯爵家のご令嬢に伝が有ります。
S級冒険者【勇者シルバー】のパーティーとソロでS級冒険者の【狂犬ラック】殿にお願いしようかと。」
「おぉ!?何とそれほどの方達と交流があるとは!!
態々ユイナーダに留学させたかいがあるな!」
殆どケイト先輩の伝だけどな……
そしてたぶん力を借りるのは…勇者シルバー殿と狂犬ラック殿だけで済むだろう。
報酬と一緒にアレを渡す約束をしておけば、最速で受けてくれる事間違いなし!
さて何時もなら食後は紅茶なのだが、今日は水にしてもらった。
アイテムボックスから箱を取り出して、胃薬を飲んだ。
あゝスッキリするなぁ。
やっぱり向こうの胃薬は効くわぁ〜。
「ネイサン…それは?」
「胃薬ですよ…。」
「見た事の無い入れ物と形状だな?」
あっ!?やべ…あっちで買ったのそのまま出しちゃった。
確かに丸薬や粉薬はこっちにも有るけど、アルミ材とプラスチックに包んである薬は無いよな。
向こうから戻って直ぐだったから、入れ替える暇無かったからなぁ……
それにアルミ材から出すと、途端に劣化が早くなる。
ここは何とか誤魔化すしかない。
「ユイナーダで知り合ったの商人から、手に入れた胃薬ですよ。
父上もお飲みになりますか?」
俺が飲んで大丈夫だったんだから、父上も大丈夫だよな?




