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その事に気づいたのは、野垂れ死に寸前のところをお嬢様に、助けられてからだった。
まさか、【最初の祝福】が無かった為に町にも入れず、まともな仕事もさせてもらえないなんて思わなかった……
街道沿いの休憩所で倒れていたところに、王都から伯爵領に帰るお嬢様が通りかかり俺を保護してくれたのだ。
お嬢様の顔を見た途端、俺は前世の事を思い出した。
そう、お嬢様は出戻りの叔母が連れて帰った従姉妹がやっていた【聖女と6人の騎士】とか言う【乙女ゲーム】に出て来る攻略対象の婚約者で、ルートによっては婚約破棄される伯爵令嬢だった。
従姉妹は、選択画面になるとやたらと俺に『どっちが正しいの?』と質問して来たので、すっかり詳しくなってしまった。
お嬢様の元婚約者(時期的にもう婚約破棄した後だろう。)は、ハッキリ言ってクズだ。
コイツのルートに入ると婚約者がいるにも関わらず、聖女のアリスと浮気した挙句に、『真実の愛』だとかふざけた事を言って、お嬢様と婚約破棄するのだ。
更に酷いのが【逆ハーレムルート】!
お嬢様は婚約者や#聖女__ビッチ__#達と年齢が少し離れていて、成人してもいないので、王城に行ったのは数年前に行われた第三王子の誕生パーティーと称した、婚約者選び以来だ。
お嬢様はその選考に落ち、その後元婚約者と婚約する事になったので当然、その後王城にも行っていないし、王立ホープス魔法学院に通ってもいないのにも関わらずあの元婚約者は、他の攻略対象者の婚約者と一緒にお嬢様を断罪の場に呼び出し、彼女達と一緒に断罪して婚約破棄したのだ。
聖女にも他の令嬢とも会った事がないお嬢様にどうやって、彼女達と一緒に聖女を虐めたり出来るというのだ!
明らかに冤罪だろう。
相手が王太子とその側近の為、誰もその事を指摘しないまま、ゲームでは【逆ハーレムエンド】を迎える。
ところが現実はそうならず、婚約者の公爵令嬢はアリスと接触する前に、同盟国の【ユイナーダ王国】にある【国立ユイナーダ学園高等部】に留学していた為、と同じ学院に通っていなかったのだ。
公爵令嬢が、この矛盾を指摘した。
そもそも【ユイナーダ王国】なんてこの乙女ゲームに出て来なかったし、【国立ユイナーダ学園高等部】に王太子の婚約者の公爵令嬢が留学していて学院に不在だった。
とか聞いた事がない。
なんと他の令嬢達もそれぞれ【女学院】や【別の魔法学園】に転入学していたそうだ。
一番身分が低かった商人の娘は、公爵令嬢がメイドとしてユイナーダ学園に連れて行っていた。
更に常にアリバイ証明出来る様に記録やメモを取る念の入れ様だった。
シナリオと違い過ぎるだろう。
その後、聖女のアリスが過去に重大な教義違反をしていた事や王太子や攻略対象全員と関係を持っていた事が発覚し、彼等の【婚約破棄断罪イベント】は、大失敗に終わり攻略対象者は全員、廃嫡されたり家を追放されたそうだ。
まぁ、コレは事件後にお嬢様から教えて頂いた話しなので、俺は実際に現場に居た訳ではないから聖女の顔は知らない。
ゲームでは感情移入しやすい様に、ヒロインの顔は描かれていなかったのだ。
まぁ、どうせモブの俺には関係ない話だ。