3 公爵side
本物の息子と思しきジョンの【最初の祝福】を拒否して追い返した人物、それは当時のシスター見習いで現聖女のアリスだった。
彼女は重大な教義違反によって失脚する事になった。
『《誰にでも【祝福】を受ける権利がある。
それを妨げる事は例え神であっても、してはならない
。
妨げた者は【祝福】を失う事になるだろう。》
【ヤータ教・祝福の女神ミーチの聖典より】』
彼女は数日前まで、王太子が『現婚約者と婚約破棄してでも、一緒になりたい!』と言っていた相手だったが、こうなってはもう婚約する事は出来ないだろう。
素行不良で廃嫡を狙っていた此方には好都合。
おまけに王太子とその側近達は、王城で行われたパーティーの席で婚約破棄を演じてくれた。
婚約者の令嬢達の集めた資料と共に、我々第二王子派の資料を証拠に見事に全員廃嫡に追い込む事に成功した。
残念なのは第二王子の側に私の息子が居ない事だ。
その後の調べで、彼女は王太子の側近全員と関係を持っていた事も発覚し、教会から破門される事になった。
全くとんだ聖女が居たものである。
彼女は教会から破門される時、
『何で、そんな昔の事で破門されるのよ!
せっかく逆ハーエンドまで、後少しだったのに!』
『ゲームに【鑑定の魔道具】なんて出て来なかったわ!』
『私はヒロインなのにこんなの酷い!』
と訳の分からない事を叫んでいたらしい。
彼女が誰かの子供を妊娠していないか、【鑑定の魔道具】で確認したが、幸いにも子供は出来ていなかった為、その血に誓約をかけられ直ぐに国外追放される事になった。
その時の鑑定で、アリスから【聖女】の称号が無くなっていて称号が【性女】になっているのが確認された。
今後、彼女やその血筋の者は、我が国に入国する事は出来ない。
もし、この国に入ればたちまち誓約によって全身真っ黒になり痛みが走ってとても立っている事も出来なくなるだろう。
この事を他国にも通告した。
私の本物の息子の運命を狂わせる一旦を作った、あの女をのさばらせる訳にはいかない。
ユイナーダ王国にいる義弟のベルツリー侯爵にも報告したところ、数冊の本とレポートが送られてきた。
ユイナーダ王国の作家の書いた小説で、それには我が国で起こった事件と、似たような事が書かれていた。
そして、一緒に送られて来たレポートによると、驚いた事に元聖女アリスの様な人間は、他国でも数件確認されており、【乙女ゲーム症候群】と呼ばれ問題視されているらしい。
近く、ユイナーダ王国に於いてこの件で同盟国から関係者を集めて会議を開く予定だそうだ。
我が国からは王弟である私が出席する事になった。
私は引き続き、部下に行方不明の息子ジョンの捜索を続けさせていたところ『遂にそれらしき人物を探し当てた。』と報告を受けた。
捜索を続けて半年後の事だった。
なんと隣領の伯爵家の令嬢に保護されて、従者として王都に居たのである。
ジョンを保護してくれていた令嬢は、偶然にも元王太子(婚約破棄騒動で廃嫡)の元側近(廃嫡)の元婚約者だった。
しかも、2人は両片想いだったらしい。
身分差とジョンに【最初の祝福】が無かった為に告白する事が出来なかった様だ。
私はジョンと対面し、直ぐに彼が息子だと分かった。
何しろイケメン顔の奥にそっくりなのだ。
念の為直ぐ様【鑑定】がされ、そして予想通り彼、ジョンは私と奥の子供だと判明した。
その事を奥に知らせると泣いて喜んでいた。
そして今日、ジョンが受けられずにいた【最初の祝福】と【祝福】を異例ながら、同時に行う事になったのである。