閑話 私の側近の話し1
皆さんはじめまして。
ポーラルタオ王国の第2王子レイリアルです。
私にはとても仲の良い従兄弟で側近候補がいた。
一緒に育って来て、そのまま私の側近としてずっと側にいてくれると思っていたのに、そうはならなかった。
一緒に受けた【祝福】の儀式の時、今年から導入された【鑑定】で、従兄弟のランディーとその従者カイトの《身分詐称》が発覚したのだ。
今まで従兄弟だと思っていた彼は、叔父であるチェイテス公爵の筆頭護衛騎士ガルフ・アンバーの息子だった。
そして、あの出来の悪い従者カイトと従兄弟だった。
一瞬…カイトと従兄弟かと思ったが、違った。
あれ?
じゃあ…私の本物の従兄弟は何処にいるんだ?
そんな事より、ランディーの事だ!
彼は私の事を陰に日向に助けてくれた親友だ!!
《身分詐称》をしていたと言っても赤子の時に誰かが入れ替えていたのだ。
しかもその事を知ったのは【鑑定】を受けた時。
私はなんとか彼を助ける為に父である国王に、直談判した。
私だけでなく、他の側近候補の友人達や多くの学院生や先生方も助命嘆願書に署名してくれた。
彼…ランディーがどれだけ皆に慕われていたかが解る。
国王が出した結論は『今までの彼の功績と助命嘆願書の多さを鑑み【国外追放】とする…… 』
何とか彼の命だけは助かったが、【国外追放】では2度とこのポーラルタオ王国の地を踏む事は出来ない。
ある日ランディーの事でショックを受けている私に、聖女アリスが……
「わたくしが貴方を慰めて差し上げますわ♡」
と言って猫撫で声で近づいて来た。
何を言っているんだこの聖女アリスは?
君は兄上の派閥だろ!!
ハッ!解ったぞ!!
兄上は聖女アリスを使って、弱みを握り私を追い落とすつもりだな!
そんな手に引っかかるものか!!
慰めて貰うならお前などではなく、彼女に頼む!
ただ彼女…テレーゼは残念ながら、私に興味がないのだ。
会う時はいつもランディーと一緒。
テレーゼは極度のブラコンだった。
本当は血の繋がりが無かったのだから、無意識に恋をしていたのだろう。
「レイさまぁ〜♡これわたくしが作ったクッキーです〜♡」
誰が名前で呼んで良いと言った!?
「聖女アリス殿…私は貴女に名前で呼ぶ許可を与えていませんが……」
第2王子である私を許可無く愛称で呼ぶなどと、聖女アリスは教会でどんな教育を受けて来たのだ?
「え〜♡だって〜王太子のマリス様は『愛称で呼んでくれ♡』って言われたもの♪
レイ様だってその方が嬉しいでしょう?」
はぁ?何言っているんだ?
もしかして【王太子のマリス様】と言うのはマリウス兄上の事を言っているのか?
国王である父はまだ兄上と私、どちらを王太子にするとは決められていないというのに……
身分詐称だな。
寧ろ最近は兄上の愚行が酷過ぎて、王太子候補から外そうという話しも出ているくらいだ。
しつこい聖女アリスから逃げ回る事、2週間……
突然騒ぎは終わった。
アリスの【身分詐称】が発覚したのだ。
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本来なら国王に対して【助命嘆願書】などを出せば、反逆とられてもおかしくありません。
しかし、既にこの時点で第1王子マリウスの廃嫡がほぼ決まっていたので、処罰すると第2王子派を排除する事になってしまう為、国王の判断で【国外追放】になりました。
第1王子派もランディーが第2王子派の要であったので、2度とポーラルタオ王国の地を踏む事が出来ない【国外追放】で納得した。




