【閑話】 婚約を白紙にした公爵令嬢の話し1-1
ポーラルタオの王太子の元婚約者、公爵令嬢ローラは如何にしても冤罪を回避したのか。
暫く続きます。
皆様、はじめまして。
私はポーラルタオ王国元王太子殿下の婚約者、ローラですわ。
これからお話しするのは、【如何にして私達が冤罪による婚約破棄を回避する事が出来たか】についてです。
そのきっかけは、ユイナーダ王国にいる10歳上の従兄のハインツお兄様が読書好きな私の為に送ってくれていた、ある作家の本でした。
以前、ユイナーダ王国に行った時、【名探偵タークの冒険】という本を頂きましたの。
小さな女の子の探偵が次々と事件を解決していくお話しで、私はすっかり夢中になりました。
何時も沢山の本を送って下さいましたけど、【名探偵ターク】は人気で中々手に入らないのだそうです。
ところがハインツお兄様が第十王子、エミール殿下の護衛騎士に任命された途端に、今まで手に入れらなかった刊まで送られて来たのです。
しかも作者のサイン入りでしたの。
ビックリしましたわ。
なんとハインツお兄様のお仕えするエミール殿下が、【名探偵ターク】の作者の方とお知り合いでした。
そのおかげで、大人気で手に入り難い本を購入する事が出来たのですって。
更にエミール殿下も小説をお書きになっていて、その本を通して沢山の事を学びましたわ。
例えば、冤罪をかけられない為にアリバイが重要だとか……
学院の中等部に上った13歳の頃、私と王太子殿下の婚約が決まりましたの。
以前から私と結婚したいと仰っていた、ハインツお兄様はとても残念がっておられましたわ。
それ以来、お仕事もお忙しいのでしょう、新刊が発売される度に本は送られて来ましたが、ハインツお兄様とはお会い出来ずに、寂しい数年間を過ごしました。
ところが約三年前、エミール殿下の護衛騎士をしているはずのハインツお兄様が突然、『私に会いにいらっしゃる』と連絡があったのです。
『溜まっていた休暇を使って来る。』と仰っていましたけど、何か様子が変でしたわ。
先にお土産の【名探偵ターク】の作者が最近書き始めた新しい本が届きました。
【聖女の♡異世界学園生活】【聖女の♡異世界学園生活2】という2冊の恋愛小説でした。
『君ならその本をすぐに読み終えるだろう。
私が其方に来るまでにその本を読んで、その感想を聞きたい。』
お父様にも何か資料を送っていらした様でしたけど。
数日後、ハインツお兄様が我が家にいらっしゃいました。
2冊の小説を読んだ、その時の私の感想ですか?
ハッキリ言って『荒唐無稽』ですわね。
まともな貴族が、家同士の契約である婚約者を蔑ろにして、貴族の異性に対するマナーや淑女としてのマナーも守れないヒロインに惹かれて、【婚約破棄】するなど有り得ませんわ!
ましてや、婚約者のいる複数の殿方に言い寄る様な方に傾倒するなんて……
婚約者の女性達がこのヒロインを排除しようとするのは当たり前です。
それを『ヒロインを虐めたから』という有り得ない理由で、婚約破棄したり国外追放したり、処刑するなんて!
その後、ヒロインは王太子と結婚しても多くの殿方と関係を持ち、誰の子供か判らないのに、関係を持っている殿方全員と子供の誕生を祝うなどと、まともでは有りません。
そんな王家が多くの貴族に見捨てられて、滅びるのは当たり前でしょう。
婚約破棄された令嬢の親も高位貴族なのですから。
自分の子供を蔑ろにされて、今まで通り国に仕えてくれる方達は居ません。
暫くローラ視点が続きます。