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妹のテレーゼがやらかしていた。
俺が自称勇者パーティー(笑)の相手で忙しくしている間にいつの間にか元王太子の側近達と執事の静止も聞かずに連んでいたんだ。
しかも、『王太子を救出して国王にする!
そうすればランディーも公爵家に戻れる。』という阿保な話しを信じて付いて行ったらしい。
テレーゼ付きの執事から、その話しを聴いて俺は頭を抱えた。
そもそもランディーは、お前の事を本当に妹だとしか思っていないからな!!
何しろアイツは女に興味がない!
おまけに元婚約者は何故か腐女子だった。
誰だよ?!この世界でそんな文化流行らせたの!!
あゝそうだった。
流行らせたのはケイト先輩のお姉さんか……
とにかく、本国にバレないうちに連れ戻して元側近共を始末しないと、せっかく貴族になったのに家が潰れたりしたら、どうしてくれるんだよ!
俺は急いでテレーゼを探した。
この国の侯爵家継嗣であるケイト先輩の協力を得て、俺は何とかテレーゼを見つけた。
何と娼館に売られていたのだ。
つまりテレーゼは元側近共に騙されて売り飛ばされたという訳だな。
危ないところだったが、先輩の執事に保護してもらった。
しかも、実家の都合で先輩の実家ボルネオール侯爵家に居た事にしてくれた。
先輩には本当に、感謝しても仕切れない借りが出来てしまった。
先輩の屋敷に保護されたテレーゼを迎えに行くと、案内された部屋の中から、男女の争う声が聞こえて来た。
「この人攫い!私はあの屋敷でフィリップ様達のお帰りを待っていたのよ!」
「ですから、あそこは娼館で貴女はそのフィリップ様とか言う男に騙されて、売られたんですよ!
何度も説明しているのに、何故理解出来ないのですか!?」
女の方はテレーゼだな。
男の方は、先輩の執事だ。
かなり疲れた様子の声だな。
家のテレーゼがすみません。
案内してくれた侯爵家のメイドが扉をノックし、中に居る執事の許可を得て部屋に入る。
俺を見た途端、テレーゼは怒りの矛先を今度は俺に向けて来た。
「また、アナタが邪魔したのね!
フィリップ様達に合わせなさい!!
あの方達の無罪は私が証明するわ!」
と真っ赤な顔で俺に食ってかかる。
おいおい、まだ彼奴等の事を信じてるのかよ。
「残念だがそれは無理だな。
フィリップ達は【詐欺】【人身売買】【国家転覆罪】で国際指名手配された。」
そう伝えたがテレーゼは全く信じようとしない。
仕方ない、本来なら父上から言ってもらう予定だったのだがランディーの現状を見てもらうのが一番手取り早いか。
良かった、去年友達の誘いであの国に行っといて。
実は一度行った所か、視える範囲なら俺の転移魔法で一度に数人転移できるのだ。
ただこの魔法が使える事は父上等、数人しか知らない。
何しろ何処にでも出入りし放題だからな。
テレーゼには、ランディーに会わせてやる事を条件に、この事を口外しないと言う契約魔法をかけて、転移魔法で現在ランディーの居るあの国に行く事にした。
次話暫く、別視点が続きます。