1
主人公のジョンは、幼い頃から叔母一家に虐げられていた。
果たして彼は、幸せになれるのか?
【あらすじ、話し→話】僕の名前はジョン。
3歳までは、カイトと呼ばれていた。
母さんが、領主様の息子の乳母に選ばれ、僕を置いて王都に行ったから、僕は母さんの姉夫婦でメルカ村の村長をしている家に預けられた。
父さんも王都で、領主様を守る仕事をしているそうで、まだ会った事もない。
母さんが王都に行って暫くしたら、僕を預かっていたおばさんから、
「今日から家の子になるんだから、名前を変えないといけない。
家の長男も同じ名前だからね。
今日からお前の名前はジョンだよ。」
と言われて、勝手に名前を変えられた。
2歳上の従兄の名前は、僕と同じだった。
意地悪な従兄弟のカイトは、父さんと母さんから送られて来た物を、『カイトへって書いてあるんだから、俺様の物だ!』と言って全部持って行ってしまった。
僕は毎日、従兄のカイトの代わりにおばさんの家の手伝いをした。
でも、まだ小さかった僕には大した事は出来ず、よくご飯を抜かれ何時もお腹を空かせていた。
それから2年経ち、僕は5歳になった。
その間、母さんは一度も僕に会いに来る事もなく、父さんともまだ会えていない。
5歳になるとこの国では、教会で【最初の祝福】を受ける事になっている。
その為に王都から、父さんが僕を迎えに来てくれる事になった。
だから、この日を楽しみにしていた。
けど、どうしてか父さんは僕を王都に連れて行ってくれなかった。
父さんから僕に贈られたはずの短剣と服を着ていた、従兄のカイトを抱きしめて、
「やっと迎えに来れた。待たせてごめんな!
しかし、大きくなったなぁ。
とても5歳には見えないぞ!
さぁ、王都の教会で【最初の祝福】を受けに行こう。
母さんも、お前の弟妹達も待ってるぞ!」
そう言って、おばさん達に【今まで育てて貰ったお礼】を渡し、僕を置いて王都に帰って行った。
何度も、僕が本物のカイトだと言ったのに、おばさん達に騙された父さんは、信じてくれなかった。
僕は父さんが間違いに気付いて戻って来てくれると思って、ずっと村の門の前で待っていた。
けど、何時まで待っても父さんは来なかった。
辺りが暗くなる頃、ようやく家に帰るとおばさん達の話し声が聞こえてきた。
「まさか本当に、自分の息子を間違えて連れて行くとは思わなかったよ♪」
「ああ、そうだな♪
『とても5歳には見えないぞ!』だとさ!
当たり前だ、家のカイトは7歳だからな。」
「態々、【最初の祝福】を受けさせなかったかいがあったよ。
これで家のカイトは騎士様の子供だ。
領主様の息子の側近になれるから、将来安泰だな♪」
ショックだった。
おばさん達がそんな事を考えていたなんて……
その日の夕食は、『仕事をサボっていた。』という理由で食べさせてもらえなかった。
村で【最初の祝福】がある日。
家の仕事を何とか終わらせ、急いで教会に向かった。
皆んな晴着を着て、親に連れられて嬉しそうにしている。
だけど僕は何時も着ている、ボロボロの服だ。
おばさん達は一緒に来てくれなかった。
やっと教会に着いて【最初の祝福】を受けようとしたら、何時もと違う灰色の服を着た子供のシスターが居て、
『え?【最初の祝福】を受けたいの?
じゃあ、【祝福代】払ってくれる?』
と言われた。
そんな…『お金がいる』なんて聞いてない。
シスターに訳を話して何度も頼んだけど、結局【最初の祝福】を受ける事が出来ず、僕は仕方なくおばさんの家に帰った。
ところが数年後、僕はとんでもない事実を知った。
あの灰色の服を着たシスターは見習いで、【祝福代】というのは、お金のない見習いの為の救済策で、本来は【無料】で受けられたのだ。
その事を知らなかった僕は【最初の祝福】を受けられず、更に10年後の【祝福】も【最初の祝福】の名簿に名前が無いという理由で、受ける事が出来なかった。
おばさん達の仕打ちに耐えて、12年待ったのに……
そうだ!15歳になって成人した僕は、もうおばさん達の所にいる必要が無くなった。
【本当の家族の居る王都に行こう!】
そう決心した僕は、少ない荷物を持って、朝早くに村の門を潜って王都へと向かった。
ジョンは果たして無事、王都へ辿り着けるのか?