第九十八話 ぼっち妖魔は転職する
またもやぶっくま、ありがとんです!
評価の方もつけてくれると・・・ダメ?
みなさん、どこから突っ込めばいいと思います?
・・・これはお近づきになっちゃいけないパターンじゃないだろか?
ていうか、状態ってステータス異常を表示するんじゃないの?
借金てステータス異常なの?
まぁ、でも話が見えてきた。
「あのー、ゴッドアリアさん?」
あたしに声をかけられて、
彼女はかなりの勢いで振り返ってきた。
「な、なんだい!?
パーティーを組んでくれるのかい!?」
誰もそんなこと言ってないから。
「えーと、あたしをパーティー組みたい理由は借金がらみですか?」
「ぬぁっ!?
な、なななんでその事を・・・!?」
図星かい。
「クエストや冒険で入手したアイテムを高値で売りさばくために、
鑑定持ちの仲間が欲しかった、ということでしょうか?」
「い、い、いや、そんなことは・・・あるかな、ハハ。」
「理由は分かりましたよ、
ですがあたしにメリットがないので、この話はなかったことに。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!
アタイの土魔法は強力無比!!
オーガの土手っ腹にさえ風穴ブチ空けられる威力なんだぜ!?
この近辺でそれだけの戦闘力を持つソロの魔術士なんていないんだぞ!?」
オーガには会ったことないし、会いたくないけどそれは凄いですね。
ベルナさんのトルネードとスネちゃんのカタパルトアタックでなら、
同じことができそうだけど、
この子一人で出来るというなら大したもんだ。
でも・・・
後ろでデミオさんが有力情報を開示する。
「あー、その強すぎる魔法で、レアアイテムごと破壊しちゃったんだってな、
ダンジョンの入り口もぶっ潰しちゃったとかで、冒険者ギルドから追徴金課されたってのは本当のようだなぁ。」
それで借金か、
さすがは城下町キリオブールの商人ギルドサブマスター、
素晴らしい情報をお持ちです。
一人でグギギギギ唸っているゴッドアリアさんに、あたしはニッコリ微笑む。
「ごめんなさい、またの機会に。」
「待ってくれ!
な、なんならキミの護衛に雇ってくれてもいいぞ!?」
なんで冒険者のあたしが護衛を雇うのよ。
「これ以上、騒ぐなら馬車降りてもらいますよ?」
乗合馬車で騒ぎを起こすことは厳禁だ。
今回、明らかに騒ぎを起こしているのは、間違いなくこのうっかりドジ魔女っ子。
さすがにその辺は自覚できたのか、明らかに落ち込みまくって静かになってくれた。
本当に余計なトラブルは寄ってこないで欲しい。
さすがにこんな面倒まで予知できない。
それにあたしはお昼までにやっておきたいことがあるのだ。
馬車が無事に出発し、
街道をしばらく進んでから、あたしはデミオさんの近くに寄る。
「デミオさん、今ちょっとよろしいですか?」
「見ての通り、道中はヒマでなんもすることがない。
嬢ちゃんから用があるってんなら歓迎だ。」
「ありがとうございます、
ちょっとお願いと言うか、仕事にしてもいいんですが、
お昼休憩の時、お時間貰えますか?」
「ここじゃダメなのか?」
「ええ、人目を憚るものなので。」
「・・・とは言え真昼間からか!?」
何を言ってるんですか。
「あたしのジョブチェンジお願いしたいだけです・・・。」
「なんだ、そんなことか。
それこそ、ここで出来るぞ?」
どういえばうまく伝わるかな?
「あたしの方に問題があるんですよ。
ジョブの方に。」
そこでデミオさんの表情が固まった。
なにか考えているのだろう。
まぁでも、少し考えればわかるだろう。
マーヤ夫人もゴッドアリアさんも、すこし興味深げにあたしの方に視線を向けている。
頼むからあたしに聞いてこないでね。
「オーケー、わかった。
時間はそんなかからないよな。」
「ええ、ジョブチェンジだけで終るのなら。」
いろいろ聞いてこられると厄介だ。
契約の形にしてもいいかもしれない。
契約なら守秘義務が発生するからだ。
「あらあら? 昨夜鑑定士にジョブチェンジしたのではなくて?」
元の座席に戻ったあたしにマーヤ夫人が問いかける。
「ええ、調べたいことがあったので。
もう用は済んだので、別のジョブに就こうと思いまして。」
「えっ!?
複数のジョブを手に入れているのか!?」
ゴッドアリアさんはあたしがただの鑑定士だと思ってるみたいだね。
自分のデータを他人に開示する義務などどこにもない。
知りたければ鑑定でもなんでもしてみるがいい。
もちろん、精神障壁張ってるから見えることはないけども。
あたしは「さぁてね?」と惚けておいた。
お昼です。
さっそくあたしはデミオさんに目配せして馬車の陰までやってきた。
別にいかがわしいことすんじゃないですよ!
「懐かしいなぁ・・・
昔、学校の休み時間に校舎の陰で二人っきりで・・・。」
な、なんか思い出に浸ってます、デミオさん?
「嬢ちゃんはそういうイベントやってないのかい?」
「う、あ、あ、い、いまのところは・・・。」
「そうかい、結構意外なところにハプニングは起きるもんだからな、
楽しめるうちに楽しんだ方がいいぞ?」
あ、有難くアドバイスを受け止めておきますよ・・・。
「そ、それじゃ早速ですいませんがジョブチェンジお願いします。」
「構わんがギルドカードの書き換えはここでは出来ないぞ?」
「あ、それはかえって都合がいいです。
人になるべく公表したくないジョブですので・・・
て、ことでデミオさんにお願いしたいのは、
あたしが何のジョブに就いたか、黙っていて欲しいんですよ、
なんならお金払いますので契約の形にしていただいても・・・。」
そしたら、あたしの頭をフードの上からガシッと大きな手で掴まれた。
「余計な心配は要らねーよ、
ギルド加盟員の情報は漏洩厳禁だ。
サブマスターのオレがそんな事するわけねーだろ?」
「あ、ありがとうございます・・・。」
「さ、ステータスウィンドウ開きな?」
「ではさっそく。」
そしてあたしはステータス画面を開く。
職業設定の欄をタップし、鑑定士から虚術士に変更!
「ていうか・・・。」
その間に、デミオさんが話しかけてきた。
「ギルドカードの表示変えないままなら・・・
オレは嬢ちゃんが何のジョブに就いたかわからないんだが・・・。」
「・・・あっ!?」
そ、そうか、ステータスウィンドウは他人から見えないんだ!
例外的に鑑定を使えば見えるわけだけど、
あたしは普段鑑定されないようガードしてるから・・・。
「うう、余計な発言して自爆してしまいました・・・。」
「まぁ、でも、レアな職業に就いたってことでいいんだよな?
まさか勇者とかじゃあるまい?」
「ないですないです、
あたしは身体能力もないし、攻撃魔法も持ってないんですから。」
「・・・それでソロで冒険できるってのも凄いことだと思うんだが・・・。
ダメもとでどんな職業か聞いてもいいか?
もちろん、誰にも言うつもりはない。」
うーん、どうしようかな、
「・・・それでは、いざと言う時あたしの力になってくれるっていう条件ならいいですよ?」
「ははは、ちゃっかりしてんな、ホントに、
まぁオレの力の及ぶ限りでだ。」
「おお、ありがとうございます!
では最低限の情報だけ教えます。
無属性魔術士のジョブです。
少なくともカタンダ村では一度も耳にしたことがないので、かなりレアじゃないのかなと。」
その途端、デミオさんの両目が見開いた。
一瞬信じられないという顔をした後に、キョロキョロ周りの目を確認している。
まぁあたしが自分で周囲を警戒しているから誰にも聞かれてませんよ。
「む・・・無属性魔法・・・だと!?」
「デミオさんは聞いたことあります?」
「な・・・ない!
それは八属性魔法の上位にあるものなのか!?」
「さぁ? でもあたしは他の術を習得来ていませんので、
そういうものではなさそうですが。」
「何が使えるんだ!?」
「まだレベル1ですので・・・少なくとも闇属性と同じダークネスと、
あと、サイレンスと言う音を打ち消す魔法が使えます。」
「な、なるほど・・・。」
デミオさんは少し考えこんでいたが、
しばらくしてから顔をあげた。
「な、なぁ、嬢ちゃん、
改めてオレらの商人ギルドと、何らかの契約を結んでくれないか?
旅をするっていうんなら、各地のギルドに定期的に顔をだしてくれるだけでもいい!
大事な用ができたらそこで連絡が取れる!!」
「い、いきなりなんなんです!?」
「嬢ちゃん、あんたには、すげぇ価値と能力があるってことさ。
まだ、すぐには考え付かねぇが、金の匂いがプンプンしてきた!!」
む?
これはデミオさんがあたしを使って何らかのプロデュースを行う気か?
うーん、
「お力になってあげたいのはやまやまなんですが・・・。」
「だが?」
「あたしは多分なんですけど、この地でやらなきゃならない事がありそうなんですよね?
まだそれが何なのかわからない段階で・・・。」
「待て、嬢ちゃん、あんたなんなんだ?
この土地の人間じゃないってのは薄々わかるが・・・。」
言ってしまうか。
「ご推察の通り、あたしはこの土地・・・いえ、国どころかこの世界の人間じゃありません。
あたしは月が一つしかない世界からやってきた異世界人です。」
デミオさんはしばらくあたしの顔を見たまんま固まってた。
しばらくしてからようやく動き始めた。
「ハッ・・・金の成る木どころじゃねーな・・・。」
「疑わないんですか?」
「正直、半信半疑だ。
だが嬢ちゃんが異世界人だというなら、信じられないようなスキルや冒険結果を残してるという事実は納得できる。」
さすが商人、計算が速い。
「あたしの目的は、自分の世界に帰ること、
でもこの世界で何らかの意味があって転移させられたと思うのなら、
何かの使命があると思うんですよね。
・・・正直、やってられっかって気分なんですけど、
あいにくなことに、子供のころからトラブルばかりに遭遇して今更感もあって。」
「ははは、そうなのか、
わかった。
嬢ちゃんの目的は理解したよ、
だがさっきの話は考えておいてくれ。
それどころか、嬢ちゃんの目的によっては商人ギルドが協力してもいい。
互いのウィンウィンの関係を目指そうじゃないか。」
「そういうことなら歓迎です。
よろしくお願いしますね?」
「ああ。いい買い物をした。」
休憩場所に戻ると、
マーヤ夫人とその従者たちが食事をとっていた。
微妙に距離を空けて土魔術士のゴッドアリアさんが、一人で虚勢を張りながら何か調理のようなものをしている。
ああ、この子もぼっちか。
少しだけ同情するも声はかけてあげない。
「あら? やっぱり交渉事になったのね?」
ジョブチェンジするだけなら、こんなに時間取らないからね、
マーヤ夫人の推測は大体当たりだ。
デミオさんはにやついている。
「ああ、どうやら運気が向いてきたようだ。」
「さ、さては二人で愛人契約を!?
そんなふしだらなっ!!」
何を言っているんだ、ゴッドアリアさん・・・。
この場の全員で冷気を浴びせてくれようか?
もうそろそろ毎日更新に限界が・・・。