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第九十三話 ぼっち妖魔は試験を受ける


そしてあたしは商人ギルドへと引き返す。

確かこっちの方だったよね?

そうそう、ここここ。

すぐに商人ギルドは見つかった。


こっちは賑わってるというほどでもないけれど、それなりにちらほら商談なさってる人たちがいる。

その中であたしは新規登録の看板を出しているカウンターを見つけた。

誰もいないカウンターだけどね。

あたしがカウンターの奥を覗き込んでると、職員らしいおじさんがやってきた。

 「どうしたんだね、お嬢さん、ここは商人ギルド登録カウンターだよ?」

 「あ、すいません、その商人登録をお願いできないかと・・・。」


おじさんはあたしの言葉を聞いて怪訝そうな表情を浮かべる。

ここでも年齢(見た目)制限かしら?

 「えーと、君がかい? 失礼だが保護者は・・・?」

やっぱりかい、ちくしょう。


 「えーと、身分はこの冒険者証で確認してもらっていいですか?

 あと適性職業に鑑定士があります。

 商人登録と一緒に職業転職手続きをお願いしたいんですけど。」


あたしが冷めた目で冒険者証を提示すると、おじさんは目をまん丸くして驚いた。

まぁ、エステハンさんのときよりかは驚いてもないみたいだけど。

 「本当かね! これは失礼した!!

 では冒険者証を拝見させてもらうよ!」


そういって、おじさんはあたしの冒険者証とあたしを交互に鑑定していった。

 「あ、申し遅れたね、私はここの職員でホーチットと言う。

 手続きを進めながらいくつか質問もさせてもらうよ。

 まず、このカードはカタンダ村発行になっているけど、君はあそこで活動されるのかな?」


 「いえいえ、あたしは旅をしていますので、これからキリオブールに向かいます。」

 「キリオブールで定住するのかい?

 それともそこから更に旅を?」

 「まだわかりません、でも恐らく旅は続けることになるでしょう。」

 「そうかね、何故こんなことを聞くのかというと、

 伊藤さんだったかね、君が一つ所に店を構えて商売するのか、

 それとも冒険者として活動する傍ら商業活動するのか、どちらかでこの先の案内を変える必要があるからなんだよ。」


ほうほう?

 「と言いますと?」

 「うん、冒険者をメインとして活動するなら、

 いわゆる行商資格を得るだけでいいはずだ。

 となると、発行手続きも最低ランクのFランクで十分だろう。

 試験も一番簡単なものだけでいいからね。」


え? 試験あんの?


 「だけど、商売人を目指すならそれだけじゃダメだ。

 商人ギルド公認の店を立ち上げるならDランクまでクリアしないと認められない。

 ランクアップには、もちろん試験の難易度も上がる。

 利息計算や減価償却、バランスシートの問題もあるからそう簡単にはいかないよ?」

 

え? あ? ちょ、ちょっと待ってちょっと待って、

ごめんなさい、舐めてました。

いえ、冒険者ギルドだって命の危険あるんだから、向こうも舐めてかかれないのは当然ですよね。

あたしのスキルで楽させてもらってただけなんだ、これはヤバい。

 「す、すいません、

 クエストで見つけたお宝やドロップ品の売却に有利そうだったんで、

 商人ギルド登録をしようとしただけです、

 あ、あのFランクで結構ですので簡単なヤツを・・・。」


 「ははは、正直だね、では別室へ案内するよ。

 簡単なペーパーテストだ。

 正答率8割で合格ね、制限時間は15分。」


まじでテスト!?

うあああああ、あたし、どうしよ!?

偏差値53だよ!?

それも一緒に住んでるエミリーちゃんのマンツーマン教育のおかげで英語が成績いいだけで、

あとは殆ど平均点以下なのに!!




ふ、

ふふふ、

よし・・・ふふふふふ。


どんな難しいテストかと思ったら小学校の算数レベルでしたよ!

いえ、正直焦ったのは、問題のレベルでなく文字の方。

あたしは何故か、現地の言葉を理解できているのですが、

文字は理解できません。

カタンダ村での一月で数字は覚えましたけどね、

流石に文字記号までは無理ですよ。


ところがですね、

試みに文章の羅列に鑑定かけてみたら、あたしの脳内に翻訳されるされる!

便利鑑定!!


そして問題の方も4~5桁くらいの加算減算、

掛け算割り算も電卓要らない程度で、紙と筆記用具あればなんとかなる程度。

文章問題でも、

一つ90ペソルピーの林檎を33個販売したら売上はいくらかとか、

仕入れ値一つ2000ペソルピーのハミチンブランブランを4000ペソルピーで売って、10万ペソルピーの儲けを出すには、いくつハミチンブランブランを売れば良いのかとか、

一番難しくてもそのレベル。

よかったあ、恥かかないで!


・・・流石に計算までは、鑑定さんやってくれなかったけどね。

てか、ハミチンブランブランって、なんだろう?

何となくだけど鑑定するのはやめた方がいいと、危険察知スキルがそう言ってる気がする。

 


 「ほう、もう出来たのかね、

 ・・・ふむふむ、問題ないようだ。

 ではFランクの商人資格を認定しよう。

 それと、鑑定士に転職だったね、

 では手続きはこちらだよ。」

 「はい、ありがとうございます!!」


ジョブチェンジも無事に終え、冒険者ギルドと同じような流れで商人カードも手に入れた。

商人カードは冒険者カードと似たようなカードで、ベースカラーと縁取りの模様が冒険者カードと異なっている。

ある程度規格があるのだろうか?

それと、カードに記載されている情報は、

あたしの職業含むパーソナルデータと適性職業と商人ランクだけだ。

さすがにスキルや称号までは書かれていない。




 「それと、これは有料になるが、商人として活動するなら、国の法律や慣習などを記したガイドブックがあるが必要かね?」


む、一応貰っておこうかな?

必殺巾着型アイテムボックスあるから邪魔にはならないけども。

 「でもお高いんでしょう?」

 「多少値が張るね、

 でも駆け出し商人には必要なことが書かれてるいるよ。」


では仕方ありません。

頂いておきましょう。

7500ペソルピーか。

ちなみに今のあたしは結構金持ち。


 「・・・意外とポンと払うんだね、

 カタンダ村で結構稼いできたのかい?」

 「あ、ああ、いえ、す、少しばかり・・・。」


適当に惚けておいた。

そしてあたしはお礼を言って商人ギルドのコーナーから出ようとすると、


あらっ?


さっきまで商談してたはずの人達になんか注目されてた。

悪意や害意は感じなかったから、

単に物珍しさで注目されてたみたいだ。


しかし恥ずかしい。

俯きがちにその場所を離れようとすると、普通に何人か話しかけて来た。


 「これは可愛らしいお嬢さんが商人になったものだ、

 何を取り扱い品にしているのかな?

 良ければ相談に応じるよ?」


えっ、あっ?


 「ははは、いきなり声をかけたら、お嬢さんは驚くだろう、

 君はせっかち過ぎると思うよ。

 ねえ、お嬢さん?」


気遣いはありがたいけど、あたしに振らないで下さいませんかね?


たくましい女商人なら、こんな場合でも堂々切り返すのだろうけど、

しょせん、あたしはぼっち気質のなんちゃって商人でございます。

ここいらで勘弁していただけないでしょうか?


ちなみに後ろを振り返ると、商人ギルドのホーチットさんが生暖かい目で、こちらをご覧になってらっしゃる。

これは介入しませんよ、という態度だな。


うーん、どうしようか、

その気になれば、冷たい態度で立ち去ることも出来るんだけど、

商人デビューするのに、それはいただけないような気がする。

お愛想だけ振り撒いて立ち去るのがベターか。


そう思っていたら、どこかで聞き覚えのある声が。

 「おんや?

 また会ったな、お嬢ちゃん、

 冒険者ギルドには行けたのか?」


おお、デミオさんのご帰還!!

 「あ、先程はどうも、

 おかげで冒険者ギルドには行けましたよ。」

 「で、なんでここにいるんだ?」

 「ああ、商人ギルドにも登録しておいた方が便利かなー、と思いまして。」


 「はあ~、しっかりしてんなあ、

 おい、ホーチット、

 お嬢ちゃんの登録手続きは終わったのか?」


 「はい、スタートのFランクですが、なんの問題もなく。」

デミオさんがその言葉に肯いていると、先程あたしに声をかけて来たおじさんがデミオさんにも声をかける。

 「おや、

 これはキリオブールのサブギルドマスター、デミオさんじゃありませんか、

 お二人はお知り合いで?」


うお、サブギルドマスターだったのか、

それってキリオブールの商人ギルドのナンバー2ってことだよね?


 「ん? ああ、ここに来るまでの馬車でたまたま一緒でね、

 どうやらうまくいった感じだな?」

他の人との会話の途中なのに、デミオさんはまたもやあたしに話を向ける。

この人、そういうの多いな。

 「はい、おかげさまで。

 それで申し訳ないんですが、冒険者ギルドのメルモさんをお待たせしてるので、

 今回はこの辺で。」


うまく話を切り替えることができた。

実際、結構テストやお話で時間かかっちゃったから、待たせすぎたかな?

デミオさんは何も気にするな、って感じで手を振って「また明日な」と言ってくれた。

有難い距離感です。

そしてあたしは、さっき声をかけてきたおじさん達にも軽く頭を下げてこの場を後にする。


メルモさんのいる冒険者ギルド簡易ブースにはそこまで距離があるわけじゃないけど、

足早に急ぐ。

 「お、お待たせしました!

 転職してきましたよ!!」

 

あ、あれ?

カウンターに誰もいない?




麻衣

「最初、蜂蜜モンブランかと思ったのに・・・。」


麻衣ちゃぁん、ほぉ~ら?

はみちんぶらんぶら~ん♪


麻衣

「おまわりさぁぁぁぁんっ!!」

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