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第九十二話 ぼっち妖魔には仕事がない

異世界に登場する人達の名前は無理に覚えなくても構いません。

間隔を空けて再登場する時には、なるべく説明を加えてわかりやすいようにしたいと思います。


元の世界の名前だけ登場する人物については、

結構重要キャラだったり、

既にその人のことをどこかで紹介してたりします。


・・・ここ冒険者ギルド・・・だよね?


 「はぁ~・・・。」

日本でいうと女子大生くらいの髪の長い女の人が、

思いっきりため息をつきながら、やる気なさそうにカウンターに座ってた。


別にあたしを見て溜息ついたわけではなさそうだけど、

すでにあたしの姿は視界に入っているはずだ。


カウンターの下を覗いたり、

頬杖ついてみたり、

小刻みに顔を揺らしたり、


さてはヒマだな、このお姉さん。


 「あのー?」

仕方ないから声かけた。


 「・・・あら?

 何の御用でしょうか?

 この辺ではお見かけしない方のようなので、

 商人ギルドの馬車で来られた方ですか?」


あたしに声を掛けられた事が意外そうな顔つきだけど、

一応、仕事は卒なくこなしているみたい。


 「はい、そうです、先程到着したんですが、ここは初めてなもので、

 この広い館の中でウロウロと・・・。」


 「まあ?

 広いと言っても、カウンターの数はたかが知れてますから、すぐに覚えられますよ。

 それで・・・こちらは冒険者ギルド出張所であって、商人ギルドは手前の方なのですが・・・。」


あ、やっぱりあたしの風貌や体格で、冒険者には見えないわけか。

 「あー、えーと、

 一応Eランクの冒険者ですよ。

 はい、冒険者カードです。」

首元に掛けていたカードをお姉さんに手渡した。

一応、適性職業欄の虚術士は隠してある。

すると、始めは胡散臭そうに見ていたカードから目が離せなくなったのか、

途端にお姉さんのテンションが爆発した。


 「はいいいいい!?

 先月登録したてでEランクうううっ!?

 それもこのペースだとDランクも間近じゃないですかあああああっ!?

 そっそっそれにっ!!

 このレアな職業はぁぁっ!?」

 「おねーさん、おちついてください。」


ほっとくと、カードに記載されてるあたしの情報、全部垂れ流されてしまいそうだから。


 「はっ、あ、も、申し訳ありません、

 なにぶんにも、こんな宿場町に旅商の護衛の方以外の冒険者は少ないもので・・・、

 だいたい、皆様のジョブは剣士かシーフばかりなのですよ。

 あ、申し遅れました、

 このペンドット冒険者ギルド出張所所長代行代理のメルモと言います。」


完全に仕事モードに入ったようです。

これなら安心して話聞けるかな?

 「あ、よろしくです、

 カードに記載されてると思いますが、伊藤麻衣と言います。

 それで、あたしも商人の方々のキャラバンに同乗させてもらってるんで、長居は出来ないんですが、今晩中に片付けられそうなクエストか、キリオブールへの道中に済ませられる依頼はないか、見に来たんですけど。」


メルモというお姉さんは納得したような顔で「そうですねぇ・・・」と考え込み始めた。


むずかしそうかな?


 「この町では仰るように護衛や道中に現れる魔物の討伐が依頼も参加も多く、

 いきなり飛び込みでクエストに参加できるケースはあまりありません。」


やっぱりそうか、

宿でおとなしくしてるかな?


 「ですが、ちょっとお待ち下さい?」


そう言ってメルモさんは席を外した。

あれ?

この香りは・・・

二、三分待つ事、メルモさんはわざわざお茶を用意してくれた!

この人、いい人だ!!


 「今は他に、冒険者の方も依頼に来られる方もおりませんから、どうぞごゆっくりと、お茶でも飲みながら・・・。

 あ、お菓子もありますよ!?」


そ、そんなお構いなく・・・と、思ったけど、カップも二つ用意してあるし、

これはこの人が飲み食いしたいだけだったのかもしれない。


 「えーっと、伊藤様は直接戦闘は出来なくても、召喚スキルとテイマースキルで立ち回れるということですね、

 出来ればこの目で見てみたいところですが・・・、

 あ、すみません、お気になさらずに、

 そちらの掲示板には常設型の依頼が貼り出されてますけど、

 うーん、流石に今晩でというのは難しいかと。」



 どれどれ?

「居酒屋酔いどれ」厨房内のネズミの駆除・・・パス。

町の外の森でゲッコウカラスの卵の採集・・・うーん、気が乗らない。

キリオブールへの馬車の護衛・・・来週だし募集終了の札がつけられている。


 「うーん、厳しいなぁ・・・。」

 「隊商の護衛はあるんですけどね、

 予算枠があるのでどうしても常連の方々で埋まっちゃうんですよね、

 街中で消費される物資も、大体日々の市民活動で、必要最低限のものは得られるので、

贅沢をしなければ、冒険者に頼らず生活できるんです。

 お祭りとかイベントがあると町の外で魔物の肉なんかを狩ってくる依頼も出るんですが・・・。」



ヒマそうなわけか。

 「仕方ないですね、

 じゃあ残念ですが、別の用を・・・。

 いま、あたし巫女職なんですけど、鑑定士にジョブチェンジお願いできますか?」


途端に表情をこわばらせるメルモさん。

・・・これはもしかして・・・。


 「す、すいません、代行代理のあたしではジョブチェンジさせられないんです。

 新規登録はここで可能なんですけど・・・。」

がっでむ。

なんてこったい。

それではここに来た意味がほんとにない。


 「あ、伊藤様に鑑定士スキルがあるなら、商人ギルドで登録するのも一つの手ですよ!

 ここの商人ギルドの代表はジョブチェンジできる権限がある方ですから!」

 「えっ?

 それは冒険者と商人のかけもちということになるのかな?」

 「その認識で間違いありません、

 特にデメリットはありませんよ?

 むしろ、商人と魔物の素材を取引するのに、適正な価格でやり取りしやすくなります。

 商人が冒険者にぼったくりや足元見た場合、それで話は終わりますが、

 商人同士で騙し行為を行ったとあっては、あっという間にギルドから情報が回りますし、

 場合によってはその商人にペナルティが課せられるケースも出てきます。

 ・・・まぁずる賢い人だと契約書作って抜け道を通る人もいるようですが。」


とんでもない役立たずかと思ったけど、そうでもないな。

自分にできること出来ないことをはっきり理解しているんだろうな。

お茶やお菓子も頂いたし、「凄い賢いんですねお姉さん!」と賛辞してあげた。


それより・・・

あたしに褒められて、まんざらでも~と顔をほころばせたメルモさんだが、すぐにまた表情が曇りだした・・・。


 「あ、あの何か・・・。」

 「い、いえ、伊藤様、鑑定スキル・・・あるんですよね・・・。

 依頼はないんですけど・・・うちのギルドの所蔵品を・・・

 よ、良かったら鑑定してくれれば・・・なんて。」


はい?

 「も、もしかして魔物の素材とかの適正価格がわからない・・・とかですか?」

 「い、いえ!

 そこいらのありふれた素材なら私でも格付けできますよ!?

 でもたまに、珍しいダンジョンからの一品とか、珍妙なお宝見つけて来る人たちもいるんですよ!

 まぁ常連さんはわかってて、そういうものはここでなくキリオブールにまで足を延ばして調べて来るんですが・・・。」


そういうこともあるのか、

平和そうでヒマそうな町でもいろいろあるんだね。

 「ああ、なるほどです。

 じゃあ、一度あたし商人ギルドの方で手続してきますね。

 そこでジョブチェンジしてからまた来ます。

 あ、でも、あたし鑑定士に変わっても、モノの良し悪しはともかく適正価格までは分からないと思いますよ?」


 「あ、それは大丈夫です。

 伊藤様にはその格付けをお願いできれば、

 後は私のジャッジと、商人ギルドに売却するときの交渉でどうにでもなりますから。」



 

蛇をテイムしたらネズミくらい駆除できるのでは?


麻衣

「一般の人の前で蛇を操るのに抵抗が・・・。」


カラスは?


麻衣

「昔お世話になったのに、そんな酷いこと出来ません!!」

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