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第九十一話 ぼっち妖魔は新しい街に着く


さてさて、

ここにいるのは商人さんたち。

実はあたしの腰に結わえている巾着型アイテムボックスには、

高値で売れそうな魔物の素材や魔石が入っている。

新しい町や村で物が要りようになった時、貨幣以外のもので取引できるように一部保存しているのだ。

こちらが冒険者だと証明するに役立つかもしれないしね。


鑑定士をメインジョブにしておけば、商人さんたちとの取引に有利になるというけども、

流石に今この場ですることもないだろう。


ペンドットの宿場町でジョブチェンジしてもいいし、その先のキリオブールでももちろん構わない。

現状あたしのメインジョブは巫女にしているし。


ここにいるデミオさんと言う人がマスター系の職に就いているなら、あたしのジョブを鑑定士に変えてくれるかもしれないけど、わざわざ移動中の馬車の中でする必要は全くないわけで。


問題は、こないだジョブ変更可能になった虚術士だ。

多分、ジョブチェンジ自体は簡単で問題ない。


けれど、他人にそのジョブの存在を知られる事に一抹の不安がある。


スキル隠ぺいで適性ジョブは隠蔽できるだろう。


だが流石にメインジョブにしてしまったら隠蔽は不可能だ。

もしかしたらできるかもしれないけど、

その場合、あたしの職業欄は空白になってしまう。

そんな不自然な状態を突っ込まれない筈がない。

そしてうまく説明できる自信など全く無い。


エステハンさんに職業変更してもらってから出発すべきだったか。

でも立つ鳥跡を濁さずじゃないけど、余計な心配や騒動はさせたくないからこれでいいのだろう。



鑑定スキルは他の職に就いている時でも判定できるが、精度が落ちる。

精度が落ちるというより、ぶっちゃけると鑑定時の説明がワンランク落ちるという感じ。

後は冒険者ギルドで情報を探して、その職に就いている人がいたら、直接教えを乞う方法も有りだろう。

・・・とはいえ他にいるのかな、そんな虚術士なんてジョブについている人・・・。

でもまぁ、夢は広がる。





陽はまだ落ちてはいない。

それでもいわゆる西日という奴で、辺りはオレンジ色の光に染められている。

ちょうどそんな時間に宿屋町ペンドットに着いた。


町の周りは高い塀で覆われていて、

その周辺には幅の広い用水路が張り巡らされている。

つまりあたし達の馬車は、町の入り口にある大きな橋を越えて行くわけだ。


でも町と言ってもそんなに大きくはなさそう。

マーヤさんが解説してくれました。

 「あくまでペンドットは宿場町なのよ。

 町の中心は栄えているけど、人口もそれほどいないし、町の大きさもこの塀でぐるりと囲めるだけのものよ。」


そこであたしは気がついたことを聞いてみる。

 「そう言えばマーヤさんも、一人旅なんですか?」


あたしみたいな・・・いや、女戦士みたいな冒険者ならそれこそ一人旅でも何とかなるのだろうけど、普通の商人さんでは不用心ではないだろうか?

それを聞いたらマーヤさんはコロコロと笑い出した。


 「それはもちろん私一人では無理よ。

 後ろの使用人用の馬車に二人の部下と商材の積荷があるの。」


なるほど、そう言えばこの馬車は2等馬車だ。

格安の3等馬車はお尻が痛くなりそうだったから、少し奮発したのだ。

まあ、2等馬車でも少し痛かったけど。

休憩と到着時間が早かったからそんなにダメージはない。


実を言うと、キリオブールまでの距離は、あたしが出発したカタンダ村から早馬で駆け抜ければ、1日で着いてしまう程度だという。

もちろん途中で馬を交代させねばならないし、真夜中も走り続けるという前提でだ。


実際そんな荒業は無理である。


何もなければ安全確実な二泊の定期便でのスケジュールになるという。


そしてその弊害という程のものでもないけれど、

宿場町ペンドットは夜の町、というイメージがとても強くなるようだ。

夕方に着いて朝出発するパターンが多いのなら仕方ないとは思う。


なお、デミオさんは商人ギルドの人間なので、

ペンドットに着いたら各ギルド合同寄り合い所に立ち寄り、そこで仕事をしつつそこに泊まるそうだ。

忙しそうで大変だなあ。


マーヤさんとその一行は、

近くの宿屋に予約してあるそうだ。

もちろん夫人が個室で、部下は二人部屋。

ちなみに荷物はキャラバンに載せたまま。

料金をプラスすると一々荷物を下ろす必要はない。

これはその料金が一時預かり及び保険料となるそうだ。

よってその料金によって、

馬車は専用の車庫に厳重に管理されるし、護衛の人間も手配される。

保険料はランクごとに定額で、

何か管理上のミスで損害があった場合、

そのランクに応じた補償額が支払われる。


バカにできないな、異世界。


まあ、あたしには関係ない話。


・・・ていうか、よく考えたらぼろ儲け出来そうな気がしてきたけど、

今はやめておこう。


まずは夕飯と宿泊所。


マーヤさんが自分たちが使っている宿屋を紹介してくれたけど、

まずは冒険者ギルド出張所に行こうと思っていたので、丁重にお断りしてから一度お別れする。


どうせ、明日の朝また同じ馬車に乗るのだ。



各ギルド合同寄り合い所。

町役場の隣に建っている。

流石に合同なだけあって、カタンダ村の冒険者ギルドより大きい。

広い。


何故か天井が高い。

三メートルくらいありそう。

昔、学校の社会科見学で青物市場を見たような・・・


ああ、そうか、巨大な魔物もいるわけか。

カタンダ村では裏手の庭で解体とかしてたけど、ここは商人ギルドも入っているから、館内で処理前の素材のやり取りしたりもするのかもしれない。


てか、冒険者ギルド出張所どこだ。


各コーナーやブースに看板出してるけどあたしはまだ文字が読めない。

なんかそれっぽい看板あったから覗いてみた。

 「おっ!?

 お嬢ちゃん、鋼のツルギはどうだい!?

 キリオブールの町と同じ価格だぜ!

 いや、君の体格ならナイフがいいか!?」


 「すいません、間違えました!」

武器屋だったか。


そういや、冒険者ギルドの看板のマークと似てたけど少し模様が違ってたと思う。


外は完全に夜になったか、窓の外からの光は届かなくなった。

代わりに天井や壁のランプや魔石の光が館内を明るくしている。

説明は要らないだろうけど、

初めてこの広い館を訪れたあたしはお上りさんのようにキョロキョロしている。


 「お? お嬢ちゃんじゃねーか。」

馬車で会ったデミオさんが書類を抱えて職員の人たちと歩いていた。

 「あ、こんばんわ、馬車の中ではどーも。」

 「ああ、こちらこそ、

 ・・・なに、キョロキョロしてたんだ?」


いやー、恥ずかしい、

 「あ、あの、冒険者ギルドの出張所はどこかなー、なんて。」

 「・・・冒険者ギルドならそこの角曲がって二つ目くらいのブロックだが・・・

 得意の感知探索で調べなかったのか?」


そう言われてもー?

 「あたし、会ったことない人や物は透視できませんよ、

 それに命の危険もなさそうなのに魔力を消費する必要もないですし。」

未来視だとまた別の原理なんですけどね。

まぁ、それは別のお話ですね。


 「あー、そりゃそうか、

 悪かった、別に変な意味はないんだ。」


 「あ、いえ、大丈夫です、教えてくれてありがとうございました!」

ぶっきらぼうだけど親切な人なんだろう。

流石商人ギルドのひとだ。


あたしはお辞儀をして、デミオさんと別れる。


言われた通り角を曲がって少し進むと、

・・・ようやくそれらしい看板を目にした。


冒険者ギルド出張所発見である!


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