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第八十六話 ぼっち妖魔は送別会を開いてもらう


今夜は送別会。

この村に来てほぼ一か月。

いろんな人にお世話になった。

元の世界で、目立たずひっそりと学校生活をおくっていたあたしからは信じられないくらい、いろいろな人たちと関わった気がする。

この村でもう少し、皆に甘えても良かったかもしれない。

でもあたしは元の世界に戻りたい。

戻らなければならない。

この村にその為の手掛かりでもあるのなら、まだ留まっても良かったのだけど、

あたしの鑑定士スキルと予知スキルがそれを否定した。

 

 「異世界からやってきたのはあたしだけじゃない」


それが情報として明らかになったからだ。

そこであたしは一つの仮説をたてた。


この小さな村でもクエストがあるように、

もっと大きな視点でこの世界を見た時に、

あたしは何か大きなクエストを果たさなければならないのではないだろうか?

それが何かはまだわからない。

魔王討伐のような固定イベントかもしれないし、

あるいはあたしの行動によって最終目的が変化するフリーシナリオのようなものか、

その辺りは、あたしのスキルをもってしてもわからない。


ただ、これは言える。


あたしがこの村に着いたのは必然である。


ラミアさんとの出会い、

冒険者ギルドでの登録、

マジックアイテムの入手、

いずれも順調にあたしのレベルアップに貢献している。


ただ、もうこの村でやることは・・・ないと言いたいけど一つだけ残っている。


それを選択するかどうかはあたしの自由だ。

別にこの村でそれを果たさなければならないという理由はない。

他の村や町でそのイベントを起こせば問題ない。


・・・あたしはまだそれを悩んでいる・・・。


その機会は今夜だけだというのに。



 「ワハハハハ、どうした黄昏れて・・・!」

酔っぱらったエステハンさんだ。

さすがに、こういう宴会では怖くない。

でもきっと、この酔っぱらった状態で怒らせたら、こっちの命はないんだろうな。


 「あ、いえ、一応あたしも女の子なんで、

 みなさんにお世話になった以上、これが最後だと思うとしんみりしてるんですよ。」


らしくないかもね。

でもあたしだって今の立ち位置くらい理解している。


 「・・・そうか、だがオレたちも感謝してるぞ、

 ダンジョンの隠し部屋発見してくれたり、未踏査エリアを開拓してくれたり・・・

 いや、そんなことじゃねーな、

 お前はこの村の冒険者ギルドに新しい風を吹き込んでくれた。

 ・・・出来れば、冒険者ランクを上げるからもっとここにいて欲しいってのが本音なんだが・・・。」


 「あはは、大げさですよ、

 でも、すいません、あたしにも家族がいるんで・・・。

 チョコちゃんがエステハンさんを大事に思ってるように、

 あたしも戻らないわけにはいかないんですよ。」


 「グッ・・・チョコを引き合いに出すのは反則だぞ・・・、

 でも、ま、その通りなんだろうな・・・。」

 「皆さんに会えて良かったですよ。」


ちなみにお酒は少しだけ飲んでます。

顔が赤くなる程度に・・・。

あんまり飲むと、感知能力のコントロールができなくなるんだけど、

飲まないとやってられないという理由も・・・。


 「何か、元の世界に戻る手掛かりでも得たなら手紙でもこっちに送れ。

 あと、オレたちに何かしてほしいことがあったら遠慮なく頼って来いよ!」

 「・・・ホントに優しいですね、エステハンさん、

 チョコちゃんはいいお父さんを持ってますよ。」


 「お嬢ちゃんのパパは優しいのか?」

 「・・・ああ・・・ええまぁ、普通に・・・そろそろ子離れして欲しいかなぁ、なんて。」

 「ははははは、男親にはそれは無理だ!!

 帰ったら、いたわってやるといいぞ!」

 「うーん、・・・調子に乗るからなぁ・・・。」



ケーニッヒさんやベルナさんともいっぱいお話した。

チョコちゃんには目に涙浮かべられていた・・・。

あたしももらい泣きしそうになったよ。

まぁ、感情の振り幅が小さいあたしは申し訳なく思う。


みんなと別れる寂しさは勿論あるけど、リーリトのあたしは他人との共感能力が低いのだ。

だからこそなのかもしれない。

こんなあたしにみんな良くしてくれて・・・。



そして・・・宴会の最中、あの人と何度か目が合った。

でも互いに近づくことはない。

あたしが主賓なんだからそれはそれで不自然だ。

さぁ、どうする?

行くべきか。

向こうからくるか。


個人的な考えとしてだけど、

あたしは他の女の子みたいに「慎み」なんて気にしない。

単に「目立たない」ように行動しているだけである。

それは他人には似たようなものと思われるかもしれないが、

微妙に異なる概念だ。


ただ・・・まぁ、

この異世界では既に目立っている。

妖魔・・・正確には半妖だけど、その情報は伏せたまま・・・。

それで何とかなっている。

異世界人ということで、あたしの非現実的な力も他人に納得させられている。


・・・なら、ここで行動を起こしてみるのも一興か・・・。

さて・・・



うん?

と思っていたら、あの人、席を立った。

なんか、グラス持って、顔を俯いて・・・

神妙な顔して・・・もしかしてこっちの方に・・・


感知!!

 

緊張と決意!?

あれ?

これ、あたし向け?


これはヤバい!

回避できそうにない!!

ていうか、回避するつもりがあったら、あたしは既に手を打っていた!

あたしは何もしなかった。


久しぶりに予知能力が発動したんだよ!!

ダナンさんとの、わんないとらぶを!!




そしてあの人は、

周りの酔っ払いの人たちを避けながら、

あたしの前までやってきた・・・。

  ゴクリ・・・


距離、ニメートル・・・互いの視線が合う・・・。

距離一メートル・・・互いの視線が固定される。

はいはい、挨拶に来てくれたんですね。

そしてダナンさんは口を開く。


 「・・・血の契約にて我を喚んだか、人の子よ!!」


・・・今度は何の挨拶を間違えたんだ、ダナンさん・・・。


 

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