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第八十四話 悪夢


ここは・・・どこだろう?

見たこともない建物がいっぱい並んでる・・・。

少なくとも僕の知ってる村でも街でもない。


今は夜・・・なのだろうか?

空はほとんど見えないが、見上げた先には光がない。

その代わり、大きな通りには一定の感覚で眩しい光が並んでいる・・・。


あれはランプや松明なんてものの明かりより眩しいな・・・。

人間は普通にいるみたいだけど、僕の知る格好なんて誰もしてないし、

そもそも顔つきが全く異なる。

亜人・・・というほどでもないが、平面的な顔が多いのかな?


あれはなんだ?

いろんな形の鉄の馬車?

馬がいないのに勝手に走っている。

それも二つの明るい光を発しながら。

こっちに襲ってきたりしないだろうな?

それともまさか魔道具なのか?

それがあんなにたくさん・・・。


しばらくして、

誰かに声をかけようかとも思ったけど、

そもそも言葉が通じるのだろうか?

いや、それより誰も僕の近くに寄ってこない。

たまに近くを歩いている人はいるけれど、僕に興味を示す者は誰もいない・・・

というより、彼らに僕の姿は見えているのだろうか?

彼らからすれば僕の服装は奇妙なものに見えると思うのだが、

興味どころか視線を向けられることもない。


時々、ぶつぶつ独り言をつぶやきながら歩いてる人間もいるな。

・・・危ない人なのかな?

あ、なんかいきなり笑い始めた。

近づかないようにしよう。


 『ああ、歩きスマホだね。』


!?

誰かの声だ・・・女の子だ。

僕の頭に直接響いてきた?

言葉の意味はよくわからなかったが、間違いなく僕に向けられた言葉だ。

いったい・・・だれ?

いや、聞き覚えあるな・・・。


僕は辺りを見回す。

やはり誰も僕に視線を向ける者はいない。

・・・!?


だが、視界の端に何かが動いた。

建物と建物の隙間に隠れてしまったようだ。

そこに誰かいるのだろうか?


そこへ足を延ばすことは簡単なはずだった。

でも、すぐに僕は動けない・・・。

怖かったんだ。

何故隠れる?

何故隠れる必要がある?

僕の思考はそこまでで途絶えた。


 『こっちだよ。』


怖い。

 『怖くないよ。』


怖い、怖い怖い怖い。

何も考えられない。

ただ、怖いと感じるだけ。


 『あたしだってこういうのはじめてなんだよ。』


何が初めてなんだろう。

そうだ、これはきっと夢だ。

うん、間違いない。

夢なら命の危険はないだろう、そう考えたら何とか動ける。

そうだ、怖さは完全には消えないけども、

僕はあの建物の隙間の中を確かめなければならない。


声からすると幼い女の子のイメージだ。

でも、何かが異質に感じる。

そうだ・・・わかった。

建物の隙間に入っていくとき、

足音が聞こえなかった。

その代わり、何か引きずるような・・・。


僕は恐る恐る、その暗い建物の隙間に近づく・・・。

相変わらず、風変わりな格好の人間たちは近くを通るが、

誰も僕やその奇妙な空間に興味を持つ者はいない。


 『「あたしはこの先にいるよ。」』


暗がりの奥の方から聞こえてきた気がする。

頭の中に響いてきた声だろうか、

それとも実際に、僕の耳が捉えた声だろうか?

うん、今はどうでもいいな。



・・・いる。

誰かいるな・・・。

真っ暗で何も見えないけど、

向こうにも別の道があるのか、奥から逆光にはなるが、人影のようなものはわかる。

小柄な女の子だろうか。

髪はそんなに長くない。


そろそろ恐怖もマヒしてきた。

僕は一歩、また一歩、足を進ませる。

女の子らしき影は揺れている。

僕はこの子を知っているような気がする。

なのに何故思い出せないのだろうか?


近づいたおかげで彼女の目鼻立ちがおぼろげながら見え隠れする。

やはり見覚えがある気がする。

・・・その時、僕は違和感を覚えた。

彼女のカラダがゆっくり揺れている・・・。

それはいい。

そりゃあ人間なんだから、身動きぐらいするだろう。

カラダを揺する癖を持つ人間がいたっておかしくない。。

・・・でもそういうのって、大概、カラダを左右に揺するんじゃないか?

あんまり聞かないけど、カラダを前後に揺する人だっているかもしれない。


・・・でも「上下」にカラダを揺するってなんだ?

スクワットほど激しく上下するわけでもない、

そもそも僕を待つのに、そんな意味不明な運動するのもおかしい。

不自然だ。


僕は更に近づいた。


あ・・・。

僕はこの子を知っているぞ・・・。


 「待ってたよ。」


 「君は・・・君の名は・・・。」

 「遅いよ、ダナンさん。」


 「君は・・・麻衣ちゃん!!」




思い出した!

一度、薬草の材料を取りに付き合ってもらった異世界から来たという女の子だ!

でも・・・ここはどこで・・・

どうして麻衣ちゃんがここにいるんだろう?


 「ここはあたしの世界だよ。」

麻衣ちゃんの?


もう彼女の顔ははっきりと判別できる。

間違いなく麻衣ちゃんだ。

だけどおかしなことに顔から下がまだ見えない。

相変わらず、彼女の頭は上下に揺れている。


 「来て。」


麻衣ちゃんが両腕を拡げて僕を誘う。

何もない暗闇から両腕が生えてきたみたいだ。

あんな顔も初めて見る。

なんて妖しい笑みを浮かべるんだろう。

でも、僕は彼女の言葉を拒絶する事ができない・・・。


気が付くと足が勝手に彼女のもとに近づいている。

 「ダナンさん・・・。」


すごく優しい声だ・・・。

僕の全てを許してくれそうな・・・。

僕が彼女を抱きしめても、麻衣ちゃんは拒絶しないでくれるだろうか?


 「うん、いいよ・・・。」

本当?

凄く嬉しい・・・!

彼女の柔らかそうな唇に指を這わせることも許してくれるだろうか?


 「触っていいよ・・・。」


ダメだ!

我慢できない!!

僕は思わず、彼女の息も感じられそうなほど近くに駆け寄った!

そうだ・・・この手を伸ばせば彼女を抱きかかえることができる・・・!



シュルルルルル


今の音は?

これだ、さっき建物の陰に隠れた時に聞こえた音・・・!


そして僕は我に返る。


その時、初めて自分の目の前にいる存在が何なのか理解したんだ。



彼女は衣服を何も身に着けていなかった。

妖しく微笑んだ彼女の首から下には、小ぶりな二つの膨らみがある・・・。


けれど。


だが、そこから更に下の部分には・・・

不気味な光沢を放つ鱗で覆われた白蛇のカラダが蠢いていのだ!

そしてその胴体は規則的な音を立てながら僕のカラダに巻き付いていく・・・。


翡翠色に輝く二つの瞳が僕を捉えて離さない。

 「麻衣に頂戴?」


僕は理解した。

ここで僕は喰われるのだ。

抵抗など一切できやしない。

痛みは感じないのに、もう僕は毒針を刺された虫けらのように反抗する術を持たない。

彼女はそんな僕を見て、嬉しそうに口を開く。

口が開く。

口が裂ける。

彼女は愛おしそうに僕の顔に頬をこすりつけた後・・・


僕の喉にブスリと牙を突き立てた!!



 

次回もダナンさん視点です。


今後、麻衣ちゃんは新たな力を手に入れます。

乞うご期待!!



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