その後のお話 あびすとらぷらす、お空の旅
VRoidでコミック調にしたこの画像を
AI化すると
どうしてこうなるんだ?
ツェルヘルミア「美人じゃないですかっ!!」
ミシェ姉「・・・う、うん、そうかもだけどわたしって日本人顔の設定だったよね?」
あびす「あびす、この顔でこんこんとお説教されるの・・・?」
<視点 ラプラス>
はい、皆様、
こちらはラプラス商会元会長ラプラスでございます。
ただいま小型馬なし馬車の御者を務めており、一見、優雅に見える空の旅を続けているところです。
まあ、今回乗せているのは私と同じくマスターの僕、オデムただ一人です。
それこそ、その気になればクッション一つか、私の背中に乗せることだけでも、連れていくことは出来るのですけどね。
皆さん、前回の話で、私が疑問を浮かべる度に、マスターの話しかけで、その疑問が掻き消されたなんて思ってやいないでしょうね?
もちろんその場はマスターのお言葉を優先させましたが、私の心の中には今も疑念が渦巻いてますよ。
いえ、もう疑念というより確信に近いのですがね。
・・・その当の本人は、馬車の窓から外の景色を楽しそうに見下ろしています。
その姿は私のよく知るオデムと何の違いもありせん。
黄金色の瞳さえ除けば。
つまり、
ここにいるオデムは私の知るオデムではない。
だからこそ、気軽に彼女を背負ってネミアまで旅する事を躊躇ってしまったのです。
・・・さて、
このモヤモヤした気持ちのまま、二人っきりで旅を続ける事も精神的によろしくないですよね。
今後のためにもある程度、お互い話を通しておくべきでしょうか・・・。
そう思い、一度オデムの方へと首を振り向いた時、
既に彼女はこちらを見詰めておりました。
虹彩のない黄金色の眼球を浮かべたまま。
まるでこれから私が問いかけるのを知っていたかのように。
「あびすに聞きたい事がある?」
・・・お見通しですか。
もしかして彼女・・・いえ、正体の性別は知りませんが、
ああ、紛らわしいですねっ!
とりあえず彼女でいいことにしますっ!
よく考えたらスライムのオデムにだって性別ありませんしねっ!!
そ、それでっ!
「話せる事なら話しておく。
らぷらすは普通に前を向いてくれればいい。」
なるほど・・・
ではそうさせていただきますか。
私は首を戻し、やや大きめな声で後ろの彼女に、最も重要なことから聞いてみる事にいたしましょう。
「あ、あなたはオデムではないのですよね!?
今オデムはどうなっているのです!!」
「心配いらない。
あびすの中で眠ってるだけ。
あびすが奥に引っ込めば、オデムが今まで通り目を覚まして活動する。」
・・・ほ、
それは良かった。
・・・良かったと言い切っていいのかまだ分かりませんが、彼女の言葉を信じて良いのなら安心できると思うのですが。
「知っての通り、あびすが前面に出れば目が黄金色に光る。
らぷらす達はそれで判別つければいい。」
もしかしてわざと瞳の色を変えていたのですか?
ていうか、そんな器用なマネできるのでしょうか?
ただ確かにこれまで、
・・・このアビスというものがオデムに乗り移ったと思われるその時以降、オデムの瞳は赤いままでした。
ならばこれからも我々は、瞳の赤い時はオデムだと思って接すれば良いのでしょうか。
「もう一つらぷらす達が安心できる根拠を。
このあびすには、らぷらす達を騙す価値すら感じない。」
・・・一気に
背中が冷えてゆきました・・・。
言葉の意味は分かります。
私達を安心させようと、
敵ではないんだぞ、と言いたいのでしょう。
ですが今の言い方ならば、それはつまり、
自分と、私達の間には例えようもなく、大きな隔たりが存在すると。
その気になれば、それこそ私達は塵芥程度に払われるものだと言っているに等しいのかと・・・。
「そう卑下しなくていい。」
やはりこちらの心もお見通しですか・・・。
「ミシェ姉そのものに会うのは簡単だけど、今の金枝教の体制だと、それなりに社会経験ある人間に入ってもらった方がいい。
だかららぷらすに来てもらった。
ネミアに行くだけなららぷらすは要らない。」
なんと・・・
アビス・・・
あの邪龍をも赤子のように扱ったと聞いています。
そんな存在が、今のオデムの中に隠れてる。
今の状態で何が出来、何が出来ないのか分かりませんが、向こうもある程度こちらに頼る事があるということ、ですか。
は、
いや、それで安心してはなりません。
何よりも、何よりも大事なことは!
私は今度こそ振り返ります。
注意を前に向けながら聞けることではありません!
「あ、あびす様とお呼びした方がよろしいですか・・・?
あの、貴方は我らの、我らのマスターにに安全の保証は・・・?」
相変わらず今の彼女は黄金色のまま、無表情にこちらを見詰めているだけ。
けれど、そこから出た言葉は、少し、幾分か優しそうに私には感じられました。
「呼び名はあびすのままでいい。
場所によってはオデムと呼んでくれても構わない。
それと、大事なこと、ね、
安心していい。
マスターは、別世界のあびすが、一度とは言え、心を寄せた女性。
ならこのあびすがマスターに危害を加える道理もない。」
そ、それは。
あ、まさか、あの時の・・・
麻衣様が、深淵の黒珠を使った、あの時の・・・
それが、
その存在があびす・・・
そして、アビスという存在は私にまた興味を失ったように、流れゆく眼下の街並みを見下ろし始めました。
「見ていて、楽しい、のですか?」
もはや、私にはそれ程切迫して聞きたいものはありません。
ただなんとなく、世間話でもするかのように、口を開いてしまっただけなのですが。
「・・・うん、楽しい。
興味深い。
今の人間たちが、どれだけ栄えて、どれだけの技術を持っているのか、
それを見ているだけですごく楽しい。」
私の前方にも多くの街並みが見えます。
宗教国家ネミアは広大な森や林が多く、都でさえ周りは緑に囲まれているのですが・・・
ああ、もうこの辺は聖都ローデリアですね。
そろそろ着陸の準備をいたしましょうか・・・。





