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第七百四十二話 いまニューヨークにいるの

最終回間際にぶっくまありがとうございます!!


メリーさんのラストも次回で終わるか更にもう一回必要かは書いてみないと分かりません。


ユージンたち書くのいつぶりだっけ?

なろうに書いたの2019年になってるけど、

他の媒体で書いたのがいつだったか・・・

<視点 メリー>



・・・ここは。


どこ・・・というか、何がどうなったのだろうか・・・



確か私の周りには大勢の人間たちが・・・

いえ、彼らに見送られて・・・


見送られて?

では私はここにはどうやって・・・


ああ、そうだ・・・

異世界転移していた私は元の世界に送り返されたはず・・・

ということは。



意識は戻ったようだ。


一瞬、記憶の構築と確認に時間がかかったようだけど、

現状の自分自身がどうなっているのか、

周りの状況も抑えておかないと・・・。



 「・・・メリー、どうした?

 さっきっから僕の声が聞こえないのか!?」


ああ・・・

まだ検証を終えてないにも拘らず、

背後・・・というより、やや下の方から一人の男性の声がかかる。


ゆっくり振り向くと、

そこには貴族のような服装の男性が立っていた。

・・・服はいろいろ薄汚れてしまっているけども。



歳の頃は30歳前後だろうか、

いえ・・・覚えがあるわね、確か・・・


 「ユージン、だったわね、

 半年ぶりくらいかしら。」


記憶の通りならヨーロッパの小さな国の貴族だったと思う。

小心者で見栄っ張りだが、多少の霊感が備わっている筈。

・・・半年どころか20年くらい経ってるような気もするわね。

ううん、こっちの話。


 「は、半年ぶり!?

 な、何言ってるんだ?

 君とはずっと一緒にいたじゃないか!?」



ああ、そうか、この世界では時が止まっているというのだったっけ。


・・・いえ、「それも」本当かどうか疑わしいわね。


私を飛ばしたあと、もとの時空間に戻しただけかもしれない。


ユージンがその後も喚いているようだけど、

現状確認を続けよう。



・・・狭い螺旋状の階段部分を上がってる最中、だったか。

建物の中。



私が先に階段を登っていたけども、

そのまま動きを止めてしまっていたから、

ユージンは私を追い抜くことも出来ずに困り果てていたわけか。


ここの階段、とても狭いしね。

人間一人分のスペースしかない。

吹き抜けになってるので左右には壁もないから、落ちたら下まで真っ逆様。

しかも建てられてから気の遠くなるような時間が過ぎ去っているのもあって、建物自体がかなり傾いてる。


今更人間・・・

いえ、一人は人間ではないけれども、

さらにいうと、その一人は人間より遥かに軽いけれど、人間二人が内部の階段を登るくらいで倒壊したりはしないだろう。


今は昼間だけれども、当然陽の光などはここまで差し込む事はない。

もともと内部照明は、電気による設備なのだろうけど、当然「この時代」「この地域」にそんなものはない。


ユージンが持つ携帯ランプの光が周りを照らしているだけだ。


 「・・・はあ、はあ、全くどこまで登らなくちゃならないんだ、

 もっと体を鍛えておけば良かったよ・・・。」


私に文句を言うより、この建造物への不満のほうが切実なのでしょうね。


その間に私も大体のことを思い出した。




ここは、

私が人形メリーの体に「転生」してから、さらに数百年も過ぎた世界。


そしてヨーロッパの端からユージンの船に乗り込み、アメリカ・・・

かつてはニューヨークと呼ばれた都市の残骸。



ユーラシア大陸の方ではそれなりに文明が再興されているけども、

この辺りでは今のところそれだけの形跡は見られない。


まだ「人間」自体に出会ってすらいないのだ。



いくらなんでも、人間全てが「駆逐」されてるなんて思えないのだけど。


・・・まあ、私にとってはどうでもいい話。



そう、

どうでもいい。


再確認するまでもない。


私の中から感情が消えてなくなっている。


異世界転移の時に与えられた感情の復活、

それが完全に消えてなくなっている。


まあ、最初からそう言われていたのだから、当たり前と言えば当たり前の話。


驚くようなものでもないし、

感情が消えているのだから、特に残念だとか思うこともない。


私は私の「やるべき事」をやるだけだ。



・・・異世界に行く前には、別の目的でこの建物の天辺まで登ることにしていたわけだけども。


これからの目的のことを考えたら、このプチ登山は都合がいいと言えば都合がいいのだろう。


「何より」私の側にいる男、ユージンを「引き剥がす」にはそれしかない。


今の私には大した力も有りはしないのだから。




 「はあ、はあ、こ、この中には『あいつら』はいないのかな?」


黙っていた方が体力を使わないのに、

誰かに話しかけでもしないと気が紛れないのかしらね。

まあ、さっきからずっと同じ景色を眺めながら階段登っているから、他の刺激を欲しがっているのかもしれない。


・・・ていうか、高さでいうと今どの辺りなのかしら。


 「生きているものの気配は感じないわ。

 ここが『あいつら』の根城だとしても、わざわざ階段登り降りするにも大変な、上の方には巣くっていないと思うわよ?」


 「はあ、はあ、だといいんだけどね、

 ああ、オブライエンと代わってれば良かった・・・。」


オブライエンって誰だったかしら・・・。

ああ、ユージンが契約していた渡航船の船長だったわね。

必要物資の入手目的もあり、途中までは一緒に行動していたはずだ。



でも、

オブライエンの役と替わるとなると、

この地域に生息している、「出来損ない」と私たちが名付けた者たちに襲われる危険性が増すのだけど。




あいつらもなんなのだろう。


姿かたちは人間を模しているといえる。

ただし私たちと意思の疎通は出来ない。

ただ感情は普通の人間のようにあるから、ある程度私の能力も通用する。

そんなわけでここへ来るまでに、

7、8体は私の死神の鎌の餌食となった。


本当に彼らがあちらの世界の魔物のような化け物だったなら、私の人形としての力は無力だしね。


それで、なんとかここまでやってきたのだけど。



 「あっ、上の方明るくなってきてないか!?

 そろそろ頂上だろうっ!!」


ユージンのいう通り、上方から光が差し込んできた。



私もこの建造物の事は知っている。

知識としてはある。

けれど、最初の人間・・・いや、

遺伝子異常の化け物だった時には、私は当然人の前には出られない。


だからここに来たのも初めて・・・と言っていいだろう。


よくもまあ、一千年は経っているだろうにも拘らず、この地に建っていたと思う。


そう、ここは展望台。

建物でいうと「王冠」の部分。


ここからなら周辺の様子が手に取るように分かるだろう。

「当初」はその目的で登っていたのだ。


 「着いたようよ、ユージン、

 ここが・・・かつての文明によって建てられた建造物、『自由の女神』像の最上階。

 ここからなら周りの景色を一望できるでしょう。」


 「うおおおおおおおおおおっ!!

 つ、ついに!

 ついに登りきったんだな!!」



展望台はホールのようになっていて結構広い。

感情が残ったままだったら、ユージンのように何かしらの感動を覚えていたかもしれないけれど、私の目的は明確だ。


それ以上考えることはない。



・・・ユージンは子供のようにはしゃぎ回っているわね。

体力が残っているのは何よりだ。

しばらく私をほっといてそのまま辺りをうろついているといい。



・・・窓はいくつか割れている。

恐らく建物の性質上、強化ガラスがはまっていると思うけど、鳥でも突っ込んできたくらいでは割れない筈だ。




誰か私と同じことでも考えていたのだろうか・・・。



辺りの金属部分は塗装が剥げてサビも浮いている。

床もタイルか何か知らないけど、かなり歪んで波打っているような箇所もある。

更にいうと、建物自体が傾いてるから、ここの床も斜めと化している。


ユージンは転ばないよう気をつけた方がいいわよね。



 「どうした、メリー!?

 感情はないとは聞いているけども、君だって興味がないわけじゃないだろうっ!?

 こっち来て窓の下を見てご覧よ!!」



異世界へ行く前だったら、多少の興味を残していたかもしれないけども・・・


もう、私には

これ以上の情報は不要なの。




ただ・・・

私はユージンのセリフとは別の目的で、

彼とは少し距離の離れた窓へと向かう。



考える時間はたっぷりあった。



女神アフロディーテが覗いた私の過去。


アスターナ邸での出会いと出来事・・・。



そして、


私の最愛の一人娘、

ミカエラの写し身、ミシェルネ。


あの子と一晩、

それこそ本当の親娘のように過ごせた事は、

間違いなく、私にとっては幸せな一夜であった。


もしかしたら、

心優しいミシェルネは、

必要以上に気を遣って、「私の娘」の役を演じてくれていただけかもしれないけども。



それでも別れの時には、

あの時と・・・


ミカエラがお嫁に行く時と同じように、

私たちは抱き合いながら別れを告げた。


あの時と違うことは、

互いに涙を流さなかったことくらいか。



今の私にそんな機能はそもそもないし、

・・・逆にあの子にとっては、



ミシェルネは

涙を流す資格はないと

自分自身で思ってしまったのではないだろうか。


あの子には残酷な役回りをさせてしまったかもしれない。



・・・少し後悔するとしたらそのくらいだろうか。


また来週。

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