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第七百三十八話 エルフ界崩壊への序曲

そういえば、アマリスさんの一族は、

妻が夫を、ではなく

子供が父親を殺す設定です。

書こうと思って忘れていました。

そのうちこっそり挿入するつもりです。



<視点 ???>


祈りを・・・



ずっと・・・

この願いが天に届くようにと・・・


私はずっと祈って来た。


果たしてそんな望みが叶うのか?

その可能性はほんの一欠片であったのかもしれない。


けれど・・・

どうやら、

私の祈りは通じたようだ。


それが世界樹の女神様の恩寵か、

それとも、この世界にあまねく存在するという神々の悪戯か、

はたまたあれから行方すらも分からない深淵なる存在の気紛れなのかも分からない。



だが、こうしてその機会は訪れた・・・。


感謝を。


私は涙を流して感謝する。

こうして・・・

その後の全てを記す機会を得た事を。


そもそも・・・

何故私一人だけ後日談が用意されていないのか!!


あんまりだ!

あーんーまーりーだーっ!!


私とほとんど同じ立ち位置、ほとんど同じセリフ量、

ほとんど同じキャラ設定のアガサがあれだけ活躍したのに!

私のパートがないなんて酷過ぎる!!


胸?

胸か!!

しょせん胸の大きさで敵わないからということなのか!!

しょせん、この世界もっ・・・くっ!!



い、いえ、お見苦しいものを・・・

今の一連の話はなかったことに。


どうやらこのタバサちゃんにも一話分だけ話をする猶予が与えられたようだ。

改めてその何者かに感謝しようと思う。

存分に、この期待の急成長株エリート、グレートスーパーワンダラスホーリープリンセス、タバサちゃんの物語を語って聞かせようではないか。



・・・とはいえ森都ビスタールは平和だったんだ、うん。



いや、もちろん私の帰還は、それはもうやり過ぎってくらいの大騒ぎで、お祝いパレードが催された。


まあ、その元凶は父上と母上なんだけど。

二人とも中央神殿のトップだから、やりたい放題できるのは当たり前のこと。

一人で皆の賞賛をあびるのは少々恥ずかしかったけども、「本当にこれからはそういうのにも慣れなきゃね?」と母上に言われてしまうと何も言い返せない。


確かに私はこの後、出世街道を歩まなければならなくなるのだ。


それが私の望みであろうとそうでなかろうと。


今や私の僧侶としての力量はハイエルフの中でも5本の指に入る筈。


もちろん、一口に僧侶と言っても、

それぞれ得意なものは人によりけりだ。

治癒を得意とするものもいれば、

退魔術に特化したするもの、

結界術を専門にしたりと、その分野において私を凌駕するものは他にもいるかもしれない。


けれど度重なる強敵を退け、

邪龍とその眷属との戦いに身を置いて来た私の総合力は、狭いエルフ社会の中では最早比べられる相手などいないだろう。


更に言うと。

先程5本の指に入るとは言ったが、

その他の方々は皆高齢の部類に入る。

同世代で、

いや、二、三世代上を見渡した所ですら、私に追いつける者などどこにもいないのだ。


・・・だからこそ、畑違いとはいえ、私と肩を並べられるアガサの存在は貴重だった。


そのアガサはダークエルフの世界を離れ、

ヒューマンの街で冒険者ギルドの仕事に就くという。

ゆくゆくはダークエルフの・・・

いや、エルフ社会に冒険者ギルドを根付かせる野望を燃やしているのだ。


ああ、我が永遠のライバルよ、

さすがとしか言いようがない。




・・・翻って私はどうか。


このまま父上の跡を継げば、この中央神殿の神官長の道が待っている。


そのまま何十年も地道に活動していれば、

エルフ五大都市の有力者に・・・

正直女性初の教皇になるのも夢ではない・・・


とは思うのだけど、

果たしてそれは私のやりたい事なのか。


別にそれが嫌だと言ってるわけではないの。

昔から自分はずっとこの神殿で過ごすのだろうなあ、と思っていたのでそれ以外の道を知らないだけとも言える。


さりとてアガサのように、何か革新的なものを創り上げたいと思っているわけでもない。

正直羨ましい感はあるが、

それを真似るのもアガサの後を追っかけてるようで気分が悪い。


私は私の道を見つけるべきではないのか。



とはいえ、それは焦る話でもないのは確かだ。

まずは自分の生まれ育った神殿に戻り、自分とそれを取り巻く環境についてよく考えてみよう。



邪龍と戦う前に一度里帰りしたとはいえ、

あの時はゆっくりしている時間などなかった。

今回は父上、母上はもとより、かつての同僚、友人たちも私に会いに来て時間を作ってくれた。


・・・何よりも嬉しい。


外の世界では大きな変化はあったが、

森都ビスタールは何も変わらない。


また穏やかな日々が始まる。




・・・でもなかったんだよ。


私の大ファンであった少年合唱団「ストーム」が解散してた・・・。



それはもう聞くに耐えないような酷い話。

彼らが所属してた神殿の神官長が、何人ものメンバーに性的行為を強要してたりとか、

そのメンバー自身がファンの女の子に手を出してたりしたのが明るみになって・・・



貴様ら、このタバサちゃんが魔物どもと死闘を続けていた間、何をやっていたのかと・・・。


それはそれとして、このエルフ界を大騒ぎさせたスキャンダルは、この私の進むべき道にも影響を与えた。


 「・・・それでね、

 実はその神殿の神官長が更迭されて、今そこの神官長はしばらく不在の状況なのよ。」


後日、母上からそんな話を聞かされた。




・・・なるほど。

母上は多くを語らなかった。


私はずっとこの神殿で過ごし、

いつか父上が引退したらその後を継ぐものと思い込んでいた。


・・・それはいったいいつの話なのだろうか。

父上とて不慮の事故や不治の病にでも罹らなければ、後数十年は現役だろう。

私がこの神殿を継ぐときにはお婆ちゃんになってるかもしれない。


ならば今のうちに他の道を歩んでもいいのではないだろうか。


答えを出すのに時間はかからなかった。



母上が私にその道を明言しなかったのは、

どうやら父上が反対していたからのようだった。


・・・理由はとてもくだらない話。

単に私を手放したくなかっただけという。



ふざけるなと。

いつまで子離れしないのだ、あのクソ父上!!



私がその神官長不在の神殿に赴くことに最早躊躇いはない。

然るべきルートを通じて話を繋げると、

あちらの感触も良さそうだ。

むしろ早く来てほしいとの声も多いと言う。


ん?

然るべきルートとは?

話は簡単。

私のひいお爺ちゃんは教皇だ。


使えるものは何でも使う。

そしてそれより強い権力を持ってるものはいない。

それだけの話。


そうして、私は生まれ育った神殿を出る準備をしていた頃、



アガサから一通の手紙が届いたのである。



そこには私と別れて、

ケイジ達と共にヒューマンの街へ行き、そこでギルド職員になったこと。

行った先が人間関係ぐちゃぐちゃになってて心が折れかけてボロ泣きしたこと。

ケイジやリィナに思いっきり慰められて嬉しかったこと。

邪龍討伐時に私が弔った前時代の聖女たちが、この時代に生まれ変わっていたこと。

・・・それと、麻衣と同じ種族の妖魔?

その妖魔が同じギルドにいるのが分かって、とても仲良くなったことなどが書き込まれていた。


分かる。

・・・とてもよく分かる。

その時のアガサの心情が手に取るように分かる。


まるで自分がアガサになったかのような錯覚を覚えながら、私は彼女の手紙を読んで、


涙を流して・・・、驚いて、一人で笑ったりしながら、

羨ましくもあり、嫉妬して・・・そしてアガサを祝福したいと思った。

 


 コンコン


ん・・・

誰だろうか。

こんな時間に部屋の扉を叩くなんて・・・


 「タバサちゃん、起きてる?」

 「・・・ぐすっ、まだ大丈夫・・・。」


母上だったか。

既に自分は泣き止んでると思ったが、

そうでもなかったらしい。

一度鼻を噛んでおこう。



 「開けるね、

 ・・・あらあら、アガサちゃんからお手紙届いたのは聞いていたけど、悲しいお話でも書かれていたの?」


涙を拭いたところで、さっきまで泣いてた様子など、母上にはバレバレだろう。

別に母上に見られて困るわけでもないのだけど。


 「・・・全く問題なし。

 アガサはとても充実した生活を満喫。

 少し羨ましく思っただけ・・・。」


 「そうなのね、

 タバサちゃんは昔から一人で本当に何でも出来たけど、アガサちゃんみたいな友達は一人もいなかったわよね?」

 

少し考えてから首を縦に振る。

そう、別に友人自体は少ないとは思わない。

ただ僧侶としての自分と同じ目線に立てる者は一人もいなかった。


 「本当にタバサちゃんはいいお友達と出会えたのね・・・。

 あ、ママが来たのはね、

 タバサちゃん、もうじきこの神殿を出ちゃうでしょ?

 ちょっとお話しようかな、なんてね?」


母上と二人で?

別に特に話す事もないけども、

どうでもいい雑談だとしても別に遠慮したいわけでもない。

母上とくだらない世間話をする機会もこれからは無くなるのだ。


 「タバサちゃんはこれから自分の進む道を、これでいいと思ってるの?」


・・・凄くとても重要な話だった。

いつもお気楽な話しかしない母上から出たセリフとは思えない。


とは言え・・・


 「正直、悩み中。

 別にこの神殿から離れることに後悔もないし、新しい神殿に不安があると言うわけでもなし、

 ・・・ただ漠然と、そう、

 まるで自分の目の前にはとても深い森が広がっていて・・・どこをどう進めばいいのか模索すべき段階というか・・・。」


母上は優しそうに微笑んでくれた。


 「そうなんだ・・・、

 それはきっと誰でも同じようなことを考える事だと思うわ。

 でもタバサちゃんには、他の人と違うところが一つだけあるのに気付いている?」


私が他の人間と違うこと?


少し考えたが分からない。

母上は何のことを言っているのだろうか。


 「今、タバサちゃんは自分の前にあるものを広大な森に例えたでしょう?

 ・・・そうね?

 それに倣うのなら、普通の人ってそんな森を目の前にしたら、足がすくんじゃうか、既に踏み固められた道を歩むしかなくなると思うの。

 でもタバサちゃんなら、その森を切り拓いて自分の好きな道を歩けると思うのね。

 今までの誰かが歩いた道なんかじゃなく、ね・・・?」



いつになく母上の言葉が重く感じる。



母上は今、私がこれから歩もうとしてる道すら、誰かに用意されたものだといいたいのだろうか。


それとも、

母上の言葉の真の意味は、


私が、


自分で自分の道を決め付けているだけだと言いたいのだろうか。


 「タバサちゃん、

 そんな気負わないでね?

 ママはあなたに楽しそうに生きてって欲しいだけなの。

 それ以外はどうでもいいと思ってるの。

 本当に本当よ?」


この人は・・・



ううん、

きっとそれが母上の真実で、

私にとっても重要な話なのかもしれない。


そう、だよね。



まだ、私が自分でどれだけのことが出来るかは分からない。


けれど、それこそ、

エルフ界初の女教皇とか、

そんな目標に縛られることもないだろう。

別に教皇になってやりたい事があるわけでもないし。


そう言えば、

ケイジはヒューマンの世界で獣人差別社会をどうにかしたいとか言ってたっけ。


実際そんなことは難しいとも言っていたけども。



・・・エルフ社会も似たようなものか。

魔力至上主義。

私自身その恩恵に与る立場なんだけどね。


そこらへん・・・

全部ぶっ潰す女教皇って楽しいかもしれない・・・。


 「母上・・・。」

 「ん? なぁにー?

 タバサちゃん。」


 「とても素敵な考え、それを教えてくれて感謝感激雨霰暴風竜巻ハリケーン。」

 「あらあら?

 ママったらもしかしてエルフ社会崩壊の元凶になっちゃうのかしらー?」


タイトル詐欺です。

ごめんなさい。


これで・・・異世界組「蒼い狼」パーティーの後日談は全て終えました。


次回、元の世界に戻ったカラドック。

残り回数もカウントダウン状態ですので、

次の更新は一週間後くらいにいたします。

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