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第七百三十六話 兎勇者最強伝説

すいません、長くなりました。

これでアマリスさんの騒動は終わりです。

<視点 キャスリオン>


はい、というわけでございます。

事件は全て収束を迎えました。


これ・・・私はホッと安心しきっちゃっていいんですかね?


リィナ様が・・・

なんか私の記憶から抹消すべきお話のような気もしますけれど、

リィナ様が世界の創造主の近親者らしいとい話が出たおかげで、


アマリスの戦意は木っ端微塵に砕け散ってしまった模様です。

それならば・・・もう、死人も怪我人も出なくて済むと考えて・・・いいと思うのですけれど。



もはや仮眠室で話を続ける必要もないので、

私の執務室へと場所を変えました。


そう、負傷したアルデヒトはと言いますと、

階下に控えていた「デイアフターデイ」のベルリンダ様に治療をしていただき、今は執務室の前で見張りをしてもらっています。

この後どんな話で落ち着くのか、未だに予想を立てられないのです。

そんな段階で、迂闊に他の職員に聞かれたりするわけにはいきませんからね。

彼の心中も安らかではないのでしょうが、自分に振られた役割を全うして欲しいと思います。


それと、

話の流れによっては、アマリスの勤務交代時間まで押してしまうことになるので、

アマリスの代わりにアガサがシフトに入ることになりました。

後でこの話の続きを聞かせてくれれば良いとのことです。


・・・もうアガサは何の心配もしてないようですね。

ケイジ様達を信頼しているということですか。

本当に羨ましいご関係です。

つい私も自分の冒険者時代を思い出しそうになってしまいますが、今は感慨に浸ってる時ではありません。


とはいえ、私は何をすればいいんでしょうね?

一応、立場的に話の進行役は務めてますけど、

尋問とか質疑応答とかは、もうケイジ様に任せっきりでいいと思うのですけども。



 「それで、冒険者ギルドの受付嬢となることで、自分たちの存在を世間に周知されてないか、知るのが目的ってのはわかったが、どうして帝国まで手紙のやり取りしていたんだ?」


もしかして、そのアマリリスって種族の総本山が帝国にあるのでしょうかね?


 「うう・・・それは、お仕事、です。」


仕事ですって?

もちろんそれは冒険者ギルドとは何の関係もない話だとはすぐに分かります。


 「仕事?

 仲間のためとかではなく?」


 「あ、出来れば、な、内緒にして欲しいんですけど、あたし達の種族の仲間のうちでも有志が、正体を隠しながら帝国と契約してるんです・・・。」


それは・・・

まさかスパイのような?


 「それは・・・こないだ手紙を送ってたエマリスって人も?」


 「エマリスは昔からの付き合いで、あたしの同族です、

 一応帝国との顔繋ぎ役ですね。

 彼女に情報送ったり、または彼女から指令が届いたりします。」


 「ってことは、帝国の指示でアマリスさんは冒険者ギルドの仕事に就いてるってことか?」


 「は、はい、さっきも言いましたけど、一つの理由は仲間を守るため、

 もう一つの理由は帝国の指示で、敵性国家のいろいろな場所に潜り込むこと・・・。

 別にあたし自身は帝国とは何の関係もないんで、仕事先に出身を疑われることもないから・・・。」


ふむ、すると履歴書の出身地自体には嘘の記載はなかったということでしょうかね。


 「じゃあ帝国からは冒険者ギルドに潜り込んで何しろと?

 魔物情報の話はあくまで自分たちのためだろ?」


 「あ、は、はい、その、いま、その・・・」


うん?

よほど喋りにくい話なのですかね。

アマリスの顔には落ち着きというものが完全に欠落しています。


あ、リィナ様が身を乗り出してきました。


 「ひ、ひぃ! 喋りますう!

 最近、帝国の末端の国とグリフィス公国がまたきな臭くなってきたんで、

 宗主国であるこのトライバル王国の中を掻き乱して足を引っ張れって指示ですう!!」



ええええ・・・

まさか、そんな理由で・・・



思わずこめかみに手を当てたくなりましたが、

そろそろケイジ様の会話に割り込ませていただきましょうかね。


 「ちょっと待ってください、アマリス。

 では、最初の頃からやたらとミスが多かったり、私たちや冒険者の皆さんに余計な仕事増やしていたのは・・・」


 「あっ、そ、そういうことです・・・

 でっ、でもあまりにあからさまなマネしたら、すぐにおかしいって気付かれちゃうだろうし、クビになったら元も子もないので、取り返しの付かないようなマネはしないよう気を付けてましたよっ!?」


確かに・・・まあ、そこまで致命的なミスは・・・

そうなんですよねえ・・・


せいぜいアルデヒトに折檻させる程度で、

アマリスのミスのせいで誰か死んだなんてこともありませんし・・・


ただ、そこまで見極めながらミスするフリを繰り返すのって・・・

めちゃくちゃ頭が良くないとできないはずですよね?


その労力と能力をまともに使ってくれさえしたら・・・


ああ、本当に頭痛くなってきました。


あ、あと、そうなると。

 「では、今回、アルデヒトを誘惑したのは?」


 「あ、そ、そ、それは、ご、ごめんなさいです、

 ちょ、ちょっとキャスリオン様とアルデヒトさんの間に溝を作っちゃえば、ここのギルドもかなりガタガタになるかなあ、なんて・・・」



・・・はぁ、素晴らしい観察眼ですね、アマリス。

あなたの言う通りですよ。

本当に、あと一歩でこのギルドは瓦解するところでした。

スタンピードのゴタゴタの直後というタイミングも絶妙ですよね。

それならこのギルドがおかしくなった原因を、スタンピードのせいにも出来ますからね。



おや?

リィナ様達の方では結論が出たようですね。


 「ねぇ、これって結局つまり・・・」

 「ああ、オレ達がマルゴット女王から受けていた要望と逆の行為だよな。」


ああ、それは良くわかります。


すなわちケイジ様達は、このトライバル王国で活躍して、ご出身のグリフィス公国の印象を良くしようと、


そしてアマリスはこの国の治安を微妙に掻き回して、トライバル王国のグリフィス公国への支援活動の足を引っ張ろうと。


ケイジ様達がこの街に来てくれたのは、

偶然というか、巡り合わせのようなものですが、ケイジ様達にとっては今回の結末は、グリフィス公国にとっても予想外の功績となるでしょうね。

帝国のスパイがこの国に入り込んでるという事実も明らかになったのですから。


あ、もちろん私にとっても本当に助かるお話でした。

しばらく毎晩寝る前に、ケイジ様とリィナ様を拝んでおきましょうか。



さて・・・残す問題なのですが。



 「あ、あの、そ、それで、あたしはこの後・・・」


本当にどうしましょうかねえ、

アマリスの処遇。

ハッキリ言ってギルドの裁量範囲外ですよ。

帝国に雇われたスパイなんて。


普通に考えれば国に・・・

まあ領主のダリアンテ様に引き渡したいところなのですが。


 「んー、彼女の処遇について、オレ達が口出する筋なんかないのは分かっているが、麻衣さんと同じ種族だと聞いたら、穏便にしてやりたいところなんだよなあ。」


なるほど、ケイジ様のお気持ちは分かります。

リィナ様も同じ意見のようですね。


 「あ、あの!!

 王国にだけは売り渡さないでくださあい!!

 その気になればすぐに逃げ出せますけど、一度でも捕まったって評判立っちゃったり、これで世間にあたし達の存在が明るみになっちゃうだけでも、あたしの信用ゼロに落ちちゃうんですよおおお!!」


知ったことですか。

ただ、彼女の妖魔としての能力を使われると、どれだけの被害が出るのかわからないのも事実。



それに・・・アガサの心情も考えると・・・


 「アマリス。」

 「は、はい、な、なんでしょうかあ・・・っ。」


こういう反応はいつもと変わらないんですよね・・・。


 「仮にですが。」

 「は、はい?」


 「このまま、あなたの秘密をどこにも報告せず、何のお咎めもないと言ったなら、

 ここであなたは真面目に働く気はありますか?」


 「ほへっ?」


そんな鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしないでくださいな。

その隙に捕まえて羽をむしっちゃいますよ?

ああ、羽はないから鱗を剥がしましょうかね。


 「こちらとしてもこれ以上人手を減らしたくないんですよ。

 もちろんあなたが、このままこのギルドに害を為すつもりであるのなら、このギルドに置いておくわけにはいきません。

 その時にはリィナ様にあなたの処遇を・・・」

 「働きます働きます!!

 誠心誠意、真心を込めて働きますううっ!!

 ですからアビス様のところに引き立てるのは王国以上にもっとやめてくださぁいいいっ!!」



私はため息をついてケイジ様達の方を向きました。

おや、リィナ様もケイジ様も満足そうですね。

それは何より・・・といいたいのですけれど。


何か私、このギルドに爆弾抱え込みすぎてる気がするんですよね。



 「あ、あの、それで、ここでこのまま働かせていただくのは有り難いんですけど・・・。」


 「おや?

 あなたが何か要求できる権利があるとでも?」

 「いっ、意地悪しないでくださいよお、キャスリオン様あ!!

 あたしこの後、仲間になんて報告すればいいんですかあっ!!

 実際無事なのに連絡途絶えたりしたら裏切り者認定されちゃいますよう!!」


ああ・・・それも知ったこっちやありません、

と言いたいのですけども。


その対策にはアフターサービスもばっちりのケイジ様が回答してくださいました。


 「正直に報告すればいいだろう。

 さっきのやり取りそのままに、深淵の孫娘に睨まれて逆らえませーん、でいいんじゃないか?」


あ、そんなんでいいんですかね。

リィナ様も苦虫を噛み潰したような顔に・・・。

さすがに勇者様も昆虫食なんてしませんよね?


 「あ、そ、そうかっ、

 アビス様のお孫様がグリフィス公国の側に就いていると言えばっ・・・

 それならあたし達の種族にとっても有益な新情報になるし、あたしの面目も立つ・・・っ!!」



良かったですね、アマリス。


どうやらこれで万事解決・・・しましたよね?

もう何も問題残ってないですよねっ!?


 「問題というほどではないんだが。」


え、ケイジ様、何か懸念事項が?


 「いや、よくよく考えてみると、

 リィナって深淵の身内らしいし、

 魔王を手懐けてるは、聖女様がバックに就いているはで、はっきり言ってこの世界で最強の存在なんじゃないかと思ってな。」


その気になったらこの世界でやりたい放題できそうですね、リィナ様。


 「それ・・・コメントしづらい・・・。」


まあ、当のご本人にしてみればそうでしょうね。


ミシェ姉

「あら?

最強の称号、リィナちゃんに取られそうだけど大丈夫?」

ツェルヘルミア

「あの子になら別に構いませんわ、

とはいえ体術なら私に負ける要素はございませんことよ?」



はい、そして次回、いよいよケイジ達の最後のシーンとなります。


うまくまとめられるかな・・・。

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