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第七百三十話 そんな時もある、にんげn・・・エルフだもの

あ、ちょっと、短めご勘弁を。


いま、下書きがいいペースで進んでて、

最後の修羅場真っ最中。


結構前にもう血生臭い展開はないと書きましたけど、

少しだけ血は出ます。

<視点 ケイジ>


な、何を言い出した、アガサ?

そりゃ、今まで寝食を共にしていたオレ達パーティーが解散することは、オレを含め誰もが悲しい。


タバサだって大泣きしていた。

だからアガサもその時がくれば、タバサと同じような反応をしたとして、おかしなことは何もない。

数日後にアガサと別れる時は、きっとそんな事になるだろうと、オレも確かに予想していたさ。


でも何故いま、このタイミングで!?

だっていま話をしてたのはオレ達の話題とは何の関係もないアマリスの件だぞ?



アガサはオレの心を読んだように首を振る。


 「・・・私はギルドで期待されて、

 評価もされて、みんなに驚嘆され、賞賛されているけども・・・

 けれど、けれど、未だ誰とも対等な関係は構築未達・・・

 むしろ、

 頑張れば頑張るほど、結果を出せば結果を出すほど、みんなとの見えない壁が厚くなるばかり・・・

 こんなのは、こんなのは私の望みとは全く別・・・!!」



それは・・・



なんてことだ。

今の今まで、そんな様子は一度として見せていなかったよな?

アガサがそんな事に心を痛めていたなんて。

そしてまた、そこまで強く思い悩んでいたなんて。


オレとリィナはすぐに椅子ごとアガサの近くに寄り、彼女のカラダにピッタリと寄り沿う。


そのアガサは訴えるかのような視線をオレ達に。


 「ケイジ、リィナ・・・

 わ、私は、私は、今まで常に最善、最適

、最高の結果を目指して前を向いて来たけども、

 気がつくと、

 私の足場なんか何もない、フワフワな雲の中みたいにその先も予測不可・・・

 い、今まではケイジやリィナ、タバサがいてくれた、

 でも、でも、みんないなくなってしまうと思ったら・・・思ったら、

 今の、これからの私の居場所は・・・何処に・・・?

 なのに、なのに!!

 あんな、そんな、私の居場所となるべきギルドが、まるでガラガラと崩れそうなあやふやな存在だと思ったら・・・

 こ、こんな不様な私を貴方達に見せることになるなんてっ!

 で、でも、急に急に私の心に不安と焦燥が・・・っ!!」


あ、ああ、そういう事だったのか・・・。



どれだけ気丈に振る舞っていても、

アガサはオレと何の違いもない、不安定な心の持ち主である人間だ。


どれだけ魔法に秀でいていても。

どれだけ有能に仕事をこなすにしても。


オレにはリィナがいる。

リィナにはオレがいる。


けど、オレ達がいなくなったらアガサは一人。


そりゃ、彼女は自分で新天地を選んだ。

そこで新たな人間関係を育むべき、というのが通常の正論だろう。


だが、

一人、トップスピードで手柄を得てゆく彼女には、真の意味での仲間がいない。


オレ達がパーティーを結成した時は違った。


 「あ、あの時は最初から私たちは一時的な関係と認識・・・

 それにケイジ達とどんな関係、どんな距離感でいるべきかは、常にタバサが私の物差し、

 そしておそらくタバサも私を物差しにしていたのは容易に想像可能。

 だ、だからケイジ達と一緒の時は、こんな事で思い悩む必要なんて最初から・・・」



だよな・・・。

あの時はあくまでも一時的に「深淵の黒珠」捜索のため、アガサはオレ達のパーティーに加入した。

タバサについては、「魔人」の調査と、それぞれ別の目的だったのだが、結果的に二人の優れたエルフがオレ達の仲間になった。


もちろん最初から信頼関係や仲間意識があったわけじゃない。

アガサのいう通り、オレ達は一時的に結成したパーティー。

ミッションが済めば二人は元の場所に戻るだけ。

オレ自身そう思っていた。


けれど、冒険を続けるうちにどんどん話が大きくなり、強い敵と出会うたびにお互いの力を認め合って、頼り合って、


そしていつしかオレ達は本当の仲間になっていたんだ。


互いの別れがこんなに辛く思えるほど・・・。



そしてリィナだって思いはオレと変わらない。

彼女はとても優しい眼差しでアガサに語りかける。


 「・・・そうだよね、

 アガサは今まで一度も弱味なんかあたし達に見せなかった・・・。

 あたしやケイジの心が不安定になってた時も・・・

 だからアガサやタバサは凄い強い心の持ち主だと思っていたけども、

 やっぱりいざ一人になると思ったら辛いよね・・・。」


アガサは駄々っ子のように首を振る。

流れる涙はさらに激しく・・・。


 「・・・ち、違・・・否!

 私は、私は強くなんかないっ!!

 誰よりも弱い心の持ち主!

 だ、だから、頑張ってきた!

 みんなに認めてもらいたくて!

 失望されるのが怖くて!

 結果を出せば!

 みんなに有益なところを見せれば!

 きっと一人にならなくて済む!

 みんなと一緒に居れる!!

 みんなチヤホヤしてくれる!!

 だから、だから頑張ってきただけ!!

 ほんとうの!

 ほんとうの私は・・・こ、こんなにも矮小、ちっぽけ、それに独りよがりな・・・ううっ!!」


アガサ、

お前は一人で、

・・・そんな思いを。




この食堂の周りの連中も、何事かとオレ達を注視している。

別に大騒ぎをしてるわけでもないから、

そんな迷惑が掛かってるわけでもない筈だ。


強いて言えば、

このテーブルで胸の大きい美女が泣き崩れてるのを見て、

気になって気持ちよく酔っ払えないとか、その程度に違いない。

これが女だけで泣いてたら、下心剥き出しで声をかける連中も出てくるんだろうがな。

あいにく今はオレが完璧にガードしている。


まあ、邪心など全くなく、普通に飲んで騒ぎたい奴らの空気を吹き飛ばしてしまってる事に関しては、申し訳なく思うよ。

けれど、オレもそいつらに何か配慮してやれる余裕ないしな。

今はリィナと二人でピッタリとアガサに寄り添っているだけ。

だから、そいつらに言える事があるとしたら、オレ達のことは気にしないでくれとしか言いようがない。


ここはオレ達三人だけの空間だ。


アガサの方も、しがみつく様にオレ達のカラダを掴んでいる。

いいぞ、

好きなだけモフれ。



どれだけそんな時間が続いたろうか。

アガサの涙や嗚咽は少し収まってきたようだ。

その様子の変化を見てリィナが優しく言葉をかける。



 「・・・そうなんだね、

 よく分かったよ、じゃあ・・・さ、

 アガサの望みは・・・。」


泣きじゃくっていた顔をアガサは起こす。

そして語られた彼女の望み。




ああ、この問題は多くの人間が関係している。

だから、絶対に、彼女の望みを叶えられるかどうかなんて保証は出来ないが・・・


少なくともオレとリィナはその為に動いてやるからな。


オレとリィナは視線を交わす。

大丈夫だ。

こういう時、オレとリィナで意見を違えることなどない!


よし、なら・・・

アガサの為に!!


最後の一肌脱いでやるぞ!!


やっぱり今月中に最終回までいかないかも。

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