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第七百二十七話 起承「転」

あ、今回も長くなってる・・・


<視点 リィナ>


はい、

ここで一旦あたしにお役目が回ってきましたよ。


い、いえ、別にケイジが重傷を負ったからとか、そんな話にはなってませんからね?


そういえば、もうあたし達のパーティーにタバサはいないんでした。

あたしも手加減してあげないといけないんですよね。


あ、今回はベルちゃんにお願いして・・・


え?

何の話かって?


あ、そ、そろそろ話を始めないといけませんよねっ!?



というわけで気を取り直して、

領主様及び次期領主のオーギュスト君との会談の次の日です。


そしてここはお馴染み冒険者ギルドの一角。

あたし達は特にやることもないんですけどね。

皆さんの邪魔にならないように、

ホールの隅っこでケイジやストライドさんたちと一緒にいます。


ちなみに次のダンジョン調査は明後日の予定です。

速攻で行ってきても良かったんですけどね、

一つ目のダンジョンを開放した後、

ギルド側も殺到しようとする冒険者たちとの調整に時間がかかってるようで・・・。



なお、アガサは通常業務でアマリスさんと一緒に受付に座っています。

・・・アガサはどこにいても卒なく仕事できますよね。

あとちょっとしたら彼女ともお別れになると思うと寂しい気分になります。



 「ああ・・・太陽が黄色いっす・・・。」

 「ずっとラウネの世話をしてもらってすまないな・・・。

 ストライド達のお陰でこっちは助かった・・・。

 恩に着る・・・。」


ちょっとそこ。

あたしの気分をぶち壊さないでくれますかね。


隣のテーブルでは、ご機嫌にツヤツヤした妖精ラウネの周りを、「銀の閃光」の皆さんが取り囲んでチヤホヤお世話をしています。


・・・みんなげっそりやつれているのに、

どうしてそんな満足そうな微笑みを浮かべているの?

ううん、理由は分かってるんですけどね。


 「確かに体力ごっそり持ってかれましたよ・・・

 でも、これはケイジさんに頼まれた一件っすからね、そして確かにオレらにしか出来ない仕事だと思いましたよ。

 見てください、オレ達は・・・やり遂げたっす・・・。」


今にも天に召されそうな顔つきのストライドさん。

そしてそれを沈痛な表情で見つめるケイジ。


いや、あんたらね。

そろそろこのリィナさんもツッコミ入れさせてもらっていいですかね?



おっと、

先に赤い髪のテラシアさんが話を振ってきましたよ。


 「しかし、その次期領主ってか?

 噂は聞いていたけどそんなガキだったってのか、

 この先、ウチの領は大丈夫なんだろうな?」


あ、ここには「苛烈なる戦乙女」の皆さんもいらっしゃいます。

大所帯ですね。

むしろこれだけ大勢固まってると、余計な人たちに絡まれる心配要らないので安心です。

場所を占拠しちゃってることは申し訳ありませんが。


 「確かにガキとも言えるが、その分素直そうに感じた。

 これからどう変わるかは、周りで支えるしかないだろうな。」


そうそう、前から思ってたんですけどね。

ケイジが他の人に対する評価ってあたしとかなり違うんですよね。


ケイジはストライドさんとかも評価してるみたいですけど、あたしから言わせると彼なんてただの女好きにしか見えないし。


まあ、ちょっとからかってやりますか。


 「ケイジはダメ男には優しいよね。」

 「は?」


あれ?

ケイジのヤツ、鳩が豆・・・

いえ、狼が豆鉄砲喰らったような顔してますよ?

・・・どんな顔だよっ!


あ、ち、違くてあたしのセリフは、ケイジにとって予想外だったみたいですね。

一瞬考え込んでいます。


でもすぐに納得したかな?


 「それは優しいっていうのか、

 オレの場合、反省できる奴には手を差し伸べてもいいんじゃないかって思ってるだけなんだがな、

 自分の過去の所業に通じるところもあるし。」


ああ、ケイジの前世の話がありましたか。

・・・前世で何やらかしたか、未だに聞けてないんですよね。

あたし・・・てか、リナって子を死なせて道を踏み外したってとこまでは分かってるんですけどね。


そしてそれをカラドックが知ったら、カラドックはケイジを死刑にせねばならないとまで言い切ってましたね。


それをこの世界に転生したケイジは、

その自分の過去を疎ましく思っているということなのでしょう。


 「ていうか・・・」


うん?

ケイジは何か反論してくるつもりです?


 「リィナだって魔王ミュラにお世話焼きまくってたよな?

 オレのこと言えるか?」


え、あ、あれ?

 「ちょ、ちょっと、何言ってんの、

 別にミュラ君はダメ男でもなんでもないでしょ、

 単に人付き合いがうまく出来なかったってだけで・・・。」


 「それはダメ男の範疇に入るだろ?」


ちょっと待ちなさい、ケイジ。

それは偏見というものですよ!

あんな可愛い男の子が潤んだ目でこっち見上げてくるんですよ!?

そんなのダメ男のわけないでしょうが!!


 「片や、魔王に説教するリィナ様、

 片や、領主たちに説教するケイジ様、

 お前ら似たもの同士だろ。」


え、あれ?

テラシアさん?

ちょっと待ってください。

そ、そういうことになるんですかね?

え、おかしいです。

どこか何か間違ってませんか?


 「そう言えば、次期領主様ってついこないだ、婚約が決まりそうとかって話になってなかったですか?

 あの話完全に終わっちゃたんですかね。」


あ!

バレッサさんが話題を変えてくれました!!

今の話はなかったことにしてしまいましょう!


それはいいんですが、

ケイジがあたしに視線を振ってきます。

あたしに喋れとでも?

ま、まあ、確かに「あの人」の事はあたしにとって他人事ではないですけどね。


 「あ、あはは、オリオンバート領のツェルヘルミアさんのことなら・・・

 あたし達こないだお会いしてるけど、当のご本人にそんな気は全くないと思うよ。

 今はミシェ姉・・・じゃなくて聖女様の護衛騎士として、現状に満足してるみたい。」


あの二人のあたしを見てくる目・・・

本当に優しそうで・・・

あたしにも帰るところが出来たって気がするんですよね。

実の両親が無事に生きていたことも嬉しいんですけど、

あの弟くんの事もあるから何となく気まずいし・・・。



同じ女性同士、バレッサちゃんとテラシアさんの意見はほとんど一緒のようですね。


 「ま、まあ、豚貴族に嫁がされるのと、聖女様のお付きや護衛と、どっち選ぶか決めろって言われれば・・・」

 「はは、あたしでも豚小僧よりかは、その聖女さまとやらの護衛の役目を選ぶな。

 けどオリオンバート領の侯爵令嬢って、確か『オリオンバートの宝石』とまで言われた深窓の令嬢だろ?

 そんな小娘に聖女様の護衛なんて務まるのかい?」


まあ・・・普通はそう思いますよね。

ケイジ?

何かコメントは?


 「あの人は・・・多分オレより強い。」

 「「はあああああああああああああああ!?」」


うん、あたしもそう思います。

ある程度実力は伯仲するとは思いますけど、

最後の最後で一歩、ツェルヘルミアさんの方が上回るんじゃないかな。


そんな気がします。


 「そ、それって、あれか?

 あ、聖女さまか何かの加護がついてるとか、そんな?」


ああ、そんな解釈もできますか。


 「いや、なんて言うか、

 オレと彼女は強さのスタートラインが近いって言えばいいのかな、

 詳しく言えないが、オレが他の冒険者より一歩抜きんでいるはずの部分を、彼女はバッサリと帳消しに出来る存在なんだ。」


あんまり他人のプライバシーは曝け出せませんからね。

ケイジもはっきりしたことを言うわけにはいきません。



そして同じく、あたしもはっきり言えませんけど、

あの人、

・・・向こうの世界でのあたしのお母さんなんでしょうか、

それともおとう・・・ゴホンっ!



まあ、仮の話ですけどね。

もしツェルヘルミアさんが、

あのオーギュスト君のところにお嫁に来た場合、

スパルタ教育始めますかねえ?


ちょっとそんな世界を見てみたい気も。



さて、


今回のお話は、こんなところで終えようかと思っていたんですが、



ここで冒険者ギルドの扉が開きました。


入ってきたのは制服姿の一人の男性。


珍しい光景です。

あの制服って・・・よく郵便配達の人が着ている・・・


あ、そう言えばたまに見かけた記憶がありますけど、配達っていつもこんな時間だったでしたっけ?


郵便配達の人は、迷いもせずにアマリスさんのところへと歩いていきます。

アガサの方は眼中に・・・あ、一瞬だけアガサの胸の方に視線がぶれましたけど!


 「お、おつかれさまです、冒険者ギルドのアマリスさんでしたよね?

 あ、あの、街道の土砂崩れの件はご存知ですよね?」


あ、昨日領主さまの所で聞いた話ですね。

郵便屋さんが巻き込まれたという話も聞いてます。

今回はそれに関係したお話でしょうか。

アガサも隣で興味深く話を聞いてますが、

当のアマリスさんが何の話か、理解してなさそうな・・・


 「は、はい、話は聞いてますけど、それがあたしに何か・・・?」


 「ああ、すみません、それであの事故で配達中の郵便が土砂に巻き込まれましてね、

 ほとんど中身は無事だと思うのですけど、郵便物の表側は土まみれで酷い事に・・・

 それで差出人名が判別できるところに一件一件お邪魔して、このまま送って良いか、それとも封筒を変えて再配達するか尋ね回ってるんですよ。

 あ、もちろん中身も無事かどうかは、皆様で確かめていただきたく・・・

 あと、今回は避けようもない事故ということで、中身の補償は出来ませんが、再配達料金は取りませんのでそちらについてはご安心を。」


ああ、そういうことなんですね。

それは仕方ない話でしょう。


ところがここでアマリスさんの態度が一変しました。


 「は、はあ!?

 差出人名欄はあたしの住所にしてるはずですよぉ!?

 なんで職場に来てるんですかあ!?」


 「えっ!?

 あっ、す、すみません、

 ご自宅にはこの時間どなたもいらっしゃらないので・・・

 直接お話するには職場しかないかと・・・

 あなたの事はこちらで働いていらっしゃるのは存じ上げてましたので・・・。」


ん?



これは色々違和感ありますね。

皆さんはどこか変だと思いましたか?


あたし達の世界では、

特に個人のプライバシーとかにはそこまで深く認識されていないので、

別に家に人がいないなら、職場に出向いたとしてもそんなに咎めるようなことでもないと思うんですけどね。


むしろそこまで配慮してくれてありがたいと思うほどです。


麻衣ちゃんの世界なら、何か事情を記した印刷物を貼り付けて、家に送り返して終わりになるんですかね?

まあ、ここに麻衣ちゃんいないから、本当にそうなのか分かりませんけど。


(あたしだってそんなケース滅多にないから知りませんっ!!)


あれ?

何か幻聴でしょうか。

麻衣ちゃんの声が聞こえたような気がしましたけど、きっと気のせいでしょうね。


まあ、とにかくあたしから見た感じでは、

郵便配達屋さんのお話は特におかしく感じない。

アマリスさんの反応は何かおかしい。

そう感じただけのお話です。



そしてその後、

納得せざるを得ない感じでアマリスさんは、その自分が送ったという手紙の封筒を受け取り、すぐに・・・


あ、懐にしまおうとして、封筒が泥だらけなので服の中にしまえないと気付いて・・・


なんとその場でビリビリに破いてしまったのです!!


いったい、

何の手紙だったんでしょう・・・。


オーギュスト君

「ああ、

麗しのツェルヘルミア・・・

僕は君の事が忘れられないのだ。

だから待っていて欲しい・・・

きっと僕は立派な領主になってみせるのだ!

その時こそ君に改めて・・・!!」


ミシェ姉

「あれ、ツェルちゃん、風邪?」

ツェルヘルミア

「い、いえ、何故か一瞬寒気がしただけです、

なんでもありませんわっ!!」



この物語で語る事はないけれど、

近い将来何かあるかもしれません。

一応、ツェルヘルミアには血生臭い未来を用意しています。

ギャグでなくシリアスモードで。

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