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第七百二十四話 カミングアウト

今回は間違えずに。


<視点 ケイジ>


 「ふむ、聞いておるぞ、

 ケイジ殿はマルゴット女王のご血縁とか。

 今後もよろしくお願いするのだ。」

 「ガラダス殿はその若さでAランク冒険者チームを纏め上げたとは。

 領地をまとめねばならぬ貴族の僕にはとてもマネできないのだ。

 とても羨ましく思うぞ。」


しゃべり方に思うところはあるが、この辺は普通なんだよ、この次期領主。

この辺はな。

あ、でも最後のは嫌味臭いな。

まあ受け止め方は人それぞれというところか。



おかしくなってくるのはこの先。


 「デュフフフフフ!

 アガサ殿の豊満な胸はとても柔らかそうなのだっ!!

 埋まりたいっ! 男なら誰でもそう思うのだっ!

 それだけもののを抱えていては、さぞかし野蛮な冒険者どもの視線を惹きつけてしまうだろうっ!!」


 「リ・・・リィナ殿・・・そのウサギの耳はとってもキュートであるなっ!!

 ああ、その困ったような表情、たまらないのだっ!!」


 「ベルリンダ殿はとても優しそうなのだ、

 僕はもちろん、この世のあらゆる男共がそなたに膝枕して欲しいと願うであろうっ!

 ああ、今日の出会いを世界樹に感謝すべきであるなっ!」



えっと・・・コイツどうしてくれよう。

ダメだろ、いろいろと・・・。


確かに悪気はないんだろう。

ホストとしてオレ達を歓待しようとする意図があるのも十分わかる。


けれどあからさますぎる。

男に対する態度と女に対する態度が全く違う。

しかも女に対してはやたらと性的な発言ばかりだ。


さらにいうとオレでもわかるぞ。

お前、リィナに向けてる視線は、

完全に「どうしたら彼女をモノにできるか」所有欲丸出しだ。

今のところそこまで踏み込んだ発言はないものの、こいつあらゆる方向に敵を作ってくタイプじゃないか?

目下の平民相手ならそれで通じてしまうのかもしれないが、

同格以上の貴族相手にそれやったら、即没落まっしぐらだぞ?


オレは忠告の意味を込めて、壁に控えている執事の顔を見た。

視線逸らされるかと思ったが、むしろじっと縋るような眼でこっちを見返されたのだけど。


・・・何とかしてくださいってことかよ。


その前に親は何やってる。



とはいえオレが何かしてやる義理はどこにもない。

むしろ国外の王族の血を引くオレが、こっちに何か干渉してしまう事のほうが問題が大きくなってしまう。

ここは最後まで何事もなく平穏無事に帰らせてもらうのが一番だ。



しかしこのオーギュスト、

さらに自覚なきまま地雷を踏み続けてしまうようだ。


 「デュフフフフフ!

 やっぱり女の子は若くて奇麗でかわいいのが正義なのだ!!

 ギルドマスターも美人と聞いているけども、

 とうの立ったおばさんより、僕のように早いところ世代交代していくといいんだなっ!」


・・・失礼すぎる。



さすがに女性陣も自分の容姿が褒められているうちはまだしも、

この言い草を聞いたら嫌悪感を浮かべざるを得まい。


 (リィナ心の声:いや、ケイジ、あれは褒められてるって言わないから。)



あ、

豚貴族って言葉、どこで聞いたか思い出した!


こいつそう言えば、

あの聖女の護衛騎士、ツェルヘルミア嬢が嫁がされそうになってたってヤツだよな。


・・・うわあ、

なるほど、理解したとも。

あの人には何度となく殺意を向けられたオレだが、確かにこんな奴に嫁入りしたくはないだろう。


向こうの親は親で、よくもこんな男との婚姻話を進めようとしたよな。

貴族社会ってオレが考える以上に世知辛い世界なのだろうか・・・。




しかも・・・



 ブチッ




ん?

今の音・・・オレの右手のほうから・・・


ああああああああっ

アルデヒトが茹蛸のように顔面真っ赤になってるうううううううううううっ!!


あと20%ほど怒りボルテージあげてしまったら、血管か顔面どちらか破裂してしまうんじゃないか!?



隣のアガサもびっくりして・・・


あ、これ、あれか!?

アルデヒトの奴、自分の尊敬するギルドマスターをくたびれた中年女みたいに言われてキレてんのかっ!?


さっきの馬車の中の話と逆ということか。

自分の「推し」が褒められているのは気分がいいが、

逆にけなされたらそりゃあムカつくよな。


ていうか、これまずいぞっ?

アルデヒトって意外とキレやすいタイプなのか?

オレ達はまだ知り合ってからそんなに時間が経ってない。


今までのイメージでは、常に沈着冷静を努めて振舞っていた印象だったんだが・・・




 「ちょっといいかな、オーギュスト殿。」


そこで唐突に手が上がる。


それはオレがアルデヒトをどうフォローすればいいのか悩んでいた時、

向かいの席のガラダスからのものだった。


む、

少しオーギュストの眉間に皺が寄ったな。


話を遮られたこともあるかもしれないが、

貴族同士のように「オーギュスト殿」と呼ばれたことに反応したのかも知れない。


 「・・・なんなのだ、ガラダス・・・殿?

 冒険者である君にそのような呼ばれ方をされる筋合いはないと思うのだ。

 ただ確かに冒険者たる者、礼儀には疎いのも仕方ないであろう、

 僕は懐も広いので今回は大目に見てあげるのだ。」



あ、さてはガラダスの奴?


 「はあ〜、今日は冒険者の立場でここに来たけれど、さすがにこれ以上は黙って見てられないよ。

 この場だけで収まる話ならスルー出来たけど、ケイジ殿もリィナ殿も国外ではそれなりの立場の方だ。

 君も迂闊な発言は、我がトライバル王国の誇りと名誉を汚す事になると覚えておくべきだと思うよ。」


 「な、何を言っているのだ!?

 いくら温厚な僕でも言って良いことと悪いことがあるのだっ!!

 いったい君はっ!!」

 「僕はオーギュスト殿とは何度か会ってるのだけど?

 忘れちゃった?」


おお、そうだよな?

トライバル王国はかなりの広さと多くの貴族を抱えているとはいえ、

ここにいるのは弱小貴族ではない。

ならば顔を合わせる機会があってもおかしなことは何もないのだ。



 「へ? へ?

 ガラダス殿達はつい最近この領地へ来たと聞いているが?」


 「ああ、やっぱり忘れられちゃってるかあ。

 仕方ないかもね、王都の新年祝賀会にも僕はたまにしか顔出せなかったからね。

 ていうか、前回会った時って君はもっとスリムだった筈だよ?

 それこそさっきまで僕の方こそ、君が本当にオーギュスト殿なのか、半信半疑だったくらいなんだけどね。」



 「お、王都の新年祝賀会!?

 そ、それは毎年貴族しか招待されない筈なのだ!?

 ガラダス殿は貴族なのであるか!?」


今日はガラダスいい役だな。

エスターとベルリンダが「やっちゃえ!」って顔になってる。


 「本来、爵位を継いだ後なら、君の方が立場は上になるんだけどね、

 まだ君は次期後継『候補』に過ぎないんだろ?

 現時点では僕の方がやや上位になる筈だ。

 改めて挨拶させてもらうね、

 ウインザー公爵家四男、ガラダス・ウインザーだよ。

 もう忘れないでくれると嬉しいな。」



 「ほんげええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」


反応は面白い。

あっ、オーギュストひっくり返りやがった。

近くにいたメイドが三人がかりでオーギュストを助け起こす。


ていうか、さっきの執事やメイド達の顔面がみるみる蒼白になっていくぞ。

そこで固まってる場合じゃないと思うんだがな。


仕方ない。

少し助け舟だしてやるか。


 「ワイナット殿、もうさすがにダリアンテ当主殿に報告すべきでは?」


相手が本当にただの冒険者風情なら、

次期領主予定のボンボンでも良かったと思うんだけどな、

本来オレやリィナなんか、VIP扱いでもおかしくないはずなんだよ。


もちろんそんな大それた扱いして欲しいなんて言うつもりは更々ないが。


 「お、お気遣い感謝いたします!!

 おい、お前たち!

 私はお館様に報告したらすぐ戻る!!

 それまでおぼっちゃまの世話は任せたぞ!!」


ワイナットはメイド達に指示したあと、足早に部屋から脱出・・・

いや、出て行った。


残されたメイドたちの絶望に塗れた顔が痛々しい・・・。

毎日苦労してるんだろうな・・・。



ん?

おい、アルデヒト・・・


お前その顔、してやったり感を隠す気ないだろ。

めっちゃ嬉しそうだぞ。

まあ、気持ちはわかる。

オレもキャスリオンはいい人だと思うしな。


次回でオーギュスト君編終われるかな・・・。

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