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第七百十三話 解放されし者

ようやくトロール戦終わりが見えてきました。

あと三話くらいで終えられそうだろうか?

<視点 アルデヒト>


何が起きた!?


オレの位置からではトロールファイターの体が邪魔してよく見えない。

けれど確かに聞こえた!

「シャイニングソード」と!


オレの記憶に間違いなければ、騎士系クラスの最高位「聖騎士パラディン」が身につける剣技のはずだ!


 「ブモオオオオオオオオっ!?」


通った!!

騎士レックスの剣技はトロールハイマジシャンの魔法より先んじてダメージを与えたのだ!


レックスの放った技がシャイニングソードで間違いないのなら、そのスキル効果、すなわちその剣に纏わせた光がトロールハイマジシャンの目を眩ませたのだろう。

もちろん目が眩んだだけでは呪文を止めることとイコールの話ではない。

しかし、そのトロールハイマジシャンが怯んだことで魔法の発動に影響を与えたのは確かだ!


 「あれれ!?

 レックス、いつの間にそんなスキルを!?」


パーティーリーダーのガラダスすら知らなかった奥の手か。

聞きたい事はいくらでもあるが・・・


 「グルロロっ!」

 「あっ、やべっ!?」


いかん!

先んじて攻撃をかけることは成功したが、

トロールハイマジシャンの再生力も桁違いか!!

無詠唱で何発ものストーンバレットがレックスを襲う!!


 「ぐあっ!

 いてててててててっ!!」


 「レックスさあーんっ!!

 だ、ダメ、この位置からじゃ回復魔法をかけられないっ!」


悲痛な叫び声を上げるベルリンダ殿。

思わず飛び出そうとする行為をランドラード殿が静止する。


いかんな。

ベルリンダ殿を最前線に行かせるわけにもいかないが、レックス殿をあの位置に放置するわけにもいかない。


あの場所は仲間たちから完全に分断されてしまっている。

いくら聖騎士スキルを使えたところで、

再生スキルと高レベルの魔法を操るトロールハイマジシャンの前では嬲り殺しにされるのがオチだ。


 「大丈夫。」


だ、大丈夫って、その声は・・・

アガサ!?


 「もはや確信、この戦い、勝利は確定!」


バ、バカな!

まだそんな兆候は何も!?


 「リィナ!

 エネルギーは充分!?」


オレの戸惑いを無視してアガサが叫ぶ。

リィナ殿は一人で戦闘中。

そんな質問に答える余裕なんか・・・


 「ああ!

 充分たまったよ!

 流石にトロールの体が大きいからね!

 少し時間食っちゃった!!」


いったい何の話を


 「『ウインドカッター』!!」

 「ブモッ!?」


アガサが放つ、不可視の刃がリィナ殿の相手をしていた斧持ちのトロールファイターを襲う。

いい加減オレにも分かる。

アレはトロールの隙を作るための攻撃だ。


そして


 「あーまーのーむーらーくーもーっ!!」


その一瞬の隙にトロールファイターの死角に回り込み、

その脇腹に深々と紫電煌めくブロードソードを突き刺した!!


 「叫べ! いかづち!!」

その瞬間!


 「ンゴオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」


空間全てを切り裂くような破裂音!?

そしてけたたましい悲鳴!!

一瞬にしてトロールファイターの体毛が・・・いや、身体ごと焼け焦げたのだっ!!


 「ふうっ、

 いくらなんでもここで天叢雲剣全開で雷撃放つと、みんなにも被害でるからね、

 威力を溜めてから直接、体の中に雷撃ぶち込むのが一番だよね。」


そのまま・・・


丸焦げになったトロールファイターは、

すぐには倒れなかった。


ブスブスと・・・

微動だにしないまま、体のあちこちから白い煙を出していたが、

やがて、ゆっくりと、

そのまま大地に大きな音を立てて沈んだのだ。


 「そして、てことは!」


その瞬間を逃さず、ケイジ殿が再び生まれた射線に矢を放つ。

レックス殿にトドメを刺そうとしていたトロールハイマジシャンは、詠唱を阻害されて防御行動に出る。


 「レックス! 無事かい!?」

 「へへ、やられちまったがな、

 それより、ガラダス、

 おめー、他人のクラスチェンジ出来るよな?

 オレのクラスを変えてくれっ。」


レックス殿が負ったケガは致命的なものではないようだ。

大怪我には間違いないだろうが、なんとかガラダス殿達のいる位置まで戻ってこれた。


槍使いのトロールファイターの追い討ちを危ぶんだが、そのままリィナ殿が威嚇してくれたおかげで、パーティーで会話する余裕も生まれたのだろう。


しかし、今何と言った?

クラスチェンジ!?

それは・・・


オレ達ギルド職員のような管理職クラスでしか・・・

いや、もちろん民間でも貴族でも地位を上げれば・・・


まさかガラダス殿は貴族だったのか?

いや、今はそんなことどうでもいい。


今のレックス殿のクラスは騎士の筈。

それを今この場でクラスチェンジするとしたら・・・


 「これでいいのかい?」

 「ああ、おかげでバッチリだ!!

 クラスチェンジ『聖騎士パラディン』!!」


クラスチェンジの光景そのものは、オレ達ギルド職員にとっては馴染みのものだ。

クラスチェンジを承認するスキル持ちのヤツが対象者に触れるだけでオーケー。

その間にクラスチェンジする本人がステータス画面を開いて選択先を選ぶ。

ただそれだけ。


けれど・・・しかし。


 「は、はわわわ!

 レックスさんが聖騎士っ!?」


同じパーティーのベルリンダ殿まで驚いているじゃないか。


なのに・・・

何故、アガサがまるでこうなることを知っていたかのように落ち着いている?


 「さ、て、と、よしよし、

 これでオレも回復スキル使えるな、『ヒール』。」

 「えっ、転職してすぐに新しいスキル使える覚えられるのかい?

 ・・・て、ああ、こないだのスタンピードでスキルポイントは溜まってるか。」


・・・理屈は分かる。

その理屈ではな。


い、いや違うな?

レベルは!?

通常初めてそのクラスに就いたなら、聖騎士レベルは1のはずだ。

ただ聖騎士クラスでどのレベルまで上げればスキルを覚えられるのか、流石にオレにもそんな知識はない。


し、しかし、これで、

相手の魔物は再生持ち、

そしてこっちには回復スキルを使えるものが三人に増えた。


これで更に長期戦を覚悟しなければ・・・

いや、これはこちらにとって有利な展開と


 「心配無用。」

 「あ、アガサ、

 君はこうなることを、最初から?」


 「以前、彼らには手を焼かされた経験有り、

 味方になるならこれほど心強いものはないという話。」


い、いったい何を言っている?

「蒼い狼」は「デイアフターデイ」と戦ったことでも?

いや、見ればベルリンダ殿も何のことかわからずにキョトンとアガサを見詰めている。


それに気付いたのか、アガサがベルリンダ殿に話しかける。

 「ベルリンダ殿、貴女に謝罪を。」

 「は、はい? 私は別に謝られるようなことは何も?」


 「貴女の承諾なしに鑑定実施。

 貴女が一つの称号とユニークスキルを持っていることを私は認知。」

 「え、あ、そ、それは・・・

 確かにあのスタンピード以降、私のステータスに突然現れましたけど、称号の意味が全く分からず・・・」



なんだと?

称号にユニークスキル?

あのスタンピードを乗り切ったんだ、

ベルリンダ殿を始め、彼らに何らかの称号が付いたとしてもそれほどおかしな話ではないが・・・


二人の会話はそこで終わった。

目の前の戦いに集中する方が大事だったからだ。

今の話については、戦いが終わってから聞き出せばいいだけの事。


とはいえ、そこから先は圧倒的だった。

リィナ殿が浮いたおかげで、槍使いのトロールファイターは更に追い込まれ、

迂闊にも最も警戒していた筈のエスター殿の姿を見失ってしまう。


狭い場所では自分の持ち味を生かせないとエスター殿は言っていた。


その意味がよく分かった。


トロールファイターが自分の姿を見失った瞬間、棒高跳びのように槍を使って跳躍。


そしてまさに天井付近の高さから


 「『流星破槌』!!」


このオレも初めて見る槍スキル!!

トロールファイターの脳天をエスター殿の槍が貫いたのだ!!


 「・・・いよっと!

 いくらトロールでも脳は再生できないだろう。」


エスター殿は着地でよろめいたが、

そんなものは大した話でもない。


普通に戦っていたのでは、

トロールの頭部に攻撃は届くまい。

それにいきなり今の大技を使っても、避けるか防がれてしまうだろう。

このメンバーで取り囲んで、警戒を全て下方に向けていたからこその戦術か。


強い!


これであと残す前衛は、剣と盾を持ったトロールファイター一匹、

そして最後はエリアボスのトロールハイマジシャンか。


何故クラスチェンジ前にスキルが使えたとか、

すぐに他のスキル使えたとかはボーナスが付加されていたということで。

スタンピード後についた称号「解放されし者」の効果。


なお、正確には「スタンピード後」ではありません。

まあ皆さんもお分かりですよね。


そして次回、ついにベルリンダのあのスキルが!!

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