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第七十一話 黒き番人

インペリアルクロスのガイドライン


そして私たち5人は、次第に洞窟内が明るくなっている事に気付いた。

もはやライトは不要。

アガサは魔法展開をオフにする。


この段階でも魔物の番人とやらは現れないのだろうか?

それとも、この洞窟が魔人の住むエリアへの連絡通路だとして、

先程の隠匿結界だけが、関門だったということか?


 「・・・やな予感がするな?」

後ろからケイジの声が飛ぶ。

 「何か匂ったのか?」

 「ああ、水辺に棲むリザードマンの匂いに近いような・・・。」


それって爬虫類系ってことか?


どうやら出口が見えてきたようだ。

洞窟の先に一筋の光が射している。

そこでリィナちゃんが私たちの歩みを制す。


 「聞こえてきた・・・。

 地を揺するような呼吸、

 すごいゆっくり・・・

 これ、大物一匹で寝てる?」


私の「妖精の鐘」はまだ感知圏外か。

だが、もう必要なさそうだな。

リィナちゃんの見立てが確かなら、

ゆっくり進めば大丈夫だろう。

罠がないか注意だけして洞窟の外へ・・・



眩しい・・・

リィナちゃんから慎重に外に顔を出す。

すぐに後ろを振り返って無言でこっちに来いとジェスチャー。


そして私も、ゆっくりと外の懐かしい空気を味わいながら足を踏み出し、

リィナちゃんが首を向いている方角を臨む。



・・・いる。


タバサ、アガサ、ケイジ。

三人続いて私と似たような反応。

まあ、洞窟の外に出ていきなり攻撃されなかっただけマシか。


洞窟の前には大きな川が流れている。

川底が見える程度の、高低差はない川なので、

私の精霊術で水面を凍らせてしまえば、何とか渡る事は可能だろう。


だがその先にいる巨大な真っ黒い塊・・・


 「まさか・・・ドラゴン?」

確かに睡眠中なんだろう。

うずくまって顔も見えない。

首を捻って胸元の陰に隠れてしまっている。


だが、あの黒光りする鱗は・・・


さすがに私も実物のドラゴンを見た事はない。

どこどこの高名パーティーが倒したとか、

小さな村が壊滅したとか話は聞いたことがあるが・・・

遂に初対面か。


 「いや、あれはドラゴンじゃないな?」

ケイジが呟く。


 「この距離から鑑定可能かい?」

私にも鑑定スキルはあるがタバサの方がレベルは高いらしい。

彼女に見てもらった結果だが・・・


 「鑑定・・・名前なし、

 年齢156歳、性別オス、種属ブラックワイバーン!」


 「ブラックワイバーンかよ!

 ドラゴンよりは下位とされてるけど、ワイバーン種の中で最強と言われる魔物じゃないか!」


ブラックワイバーン・・・ワイバーン種はここに来るまでに討伐した事がある。

翼を広げれば10メートルにもなる巨大な飛行爬虫類というところか、

鋭い嘴と鉤爪、そして素早さと機動力には手こずらされた。

端的にドラゴンとの違いといえば、

防御力とブレス。

ワイバーンにはドラゴンのような硬い鱗はないので、届きさえすれば普通の剣でも攻撃は通る。

また、ブレス攻撃がないという事は、遠距離からの攻撃を食らう恐れは少ないという事だ。

・・・これが一般的なワイバーンに対する認識である。


さて、

 「ケイジ、ブラックワイバーンの特徴は!?」


 「オレもブラックワイバーンは初めてだがな、

 通常種より攻撃力は高く、ドラゴンの鱗並みの硬さを持っているということだ。」


やれやれ、これはとんだ入団テストになったものだ。

 「一応聞くけど、寝てる間にやり過ごすなんて事は・・・。」


 「却下だ。

 探索ルートを開通出来れば、他の冒険者達もこの先に向かう事が出来るし、オレ達だって何度も往復する必要がある。

 このワイバーンが、以前オレ達と戦ったドラゴンのように会話が出来るんなら、交渉なり情報収集を試みてもいいんだが、名前無しだし会話能力はないだろう。

 ここでケリをつける。」


そうか。

ではパーティーリーダーには従うよ。

 「なら作戦は?」

 「ワイバーンは気配に敏感だ。

 遠巻きから弓と魔法で倒す。

 逃げられたり上空へ飛ばれたりしたら厄介だからな、

 カラドックとアガサは氷系魔法で動きを止めてくれ。」


なるほど、定石通りだね。

洞窟から抜け出たここは、渓谷の谷底、

左右に道のようなものはなく、恐らくだが、あのワイバーンの先に更なる抜け道があるのだろうか?

例えるならここは、四方を塞がれたリングの中だ。

いや、退路だけは一応あるので最悪逃げ帰ることは可能かもしれない。

あのワイバーンの大きさでは、洞窟の中に入ってくることは出来ないだろう。


ブラックワイバーンとの間には、滔々と流れる川が横切っている。

人間が渡るには注意がいるが、

恐らくワイバーンなら川の流れなど無視して渡りきってくるだろう。

勿論、翼を広げて突っ込んで来ることも想定できる。


私たちとの距離は50メートル程か。

ケイジの弓やアガサの魔法の射程距離内にある。

短剣使いのリィナちゃんには遠すぎるな。

もう少し距離を詰めてもいいが、これ以上接近すると感づかれるだろうか?


 「魔法はまだ使うなよ?

 魔力集中の過程を感知されるかもしれない。」


身を潜める場所がないのが痛いな。

洞窟まで戻るのは可能だが、

そこからだと致命傷を与えるのも難しいだろう。

私たちはそんなに広がらずに、それぞれ足場を確保する。

ワイバーンに対し川上側に私が立つ。

川下側にアガサ。

そして真っ正面にケイジが弓を構え、

その足元にリィナちゃんが待機。

ケイジの背後にはタバサが控え、

他のメンバーの支援を行う陣形だ。


この陣形をインペリアルクロス、いやインペリアルファングと名付けよう。

ケイジのポジションが最も危険だ。

覚悟して戦え。


 「ん? カラドック、今ニヤッて笑わなかったか?」

 「んん? いいや? 気のせいだろう。」 

 「そ・・・そうか。」




さぁ、目の前の敵に集中しよう。

ブラックワイバーンはまだ眠っているようだ。

地形はすり鉢状になっているので、直接、太陽の光は当たりづらいが、

一応今は真昼間である。

そこでぐーぐー寝てるとは、この魔物は夜行性なのだろうか?


そうこうしているうちに全員戦闘態勢は整った。

ケイジは弓を手にゆっくりと弦を弾く。


風の切れ目を待っているのか、

一心にブラックワイバーンを睨む狼獣人の横顔、

そしてその足元で同じく敵を見据える兎獣人・・・

思わず見とれてしまいそうになる。


さて、いよいよ戦闘開始だ。

見たところブラックワイバーンの急所らしき部分はこちらからは見えない。

狙うのは首元か?




シュバッ!


ケイジの弓が放たれた!

風を切り裂きその矢はまっすぐワイバーンの首元に・・・!


 「あっ!」

リィナちゃんの叫び声とどっちが早かったか!

突然ブラックワイバーンが覚醒!

胸元から長い首を抜き出し、激しく暴れる!!

 「キエエエエエエエッ!!」

けたたましいいななきと共に身をよじったせいで、ケイジの矢は狙いを外し右肩の翼の付け根を穿つ!

 


ついに戦闘開始だ!!


次回・・・


リィナちゃんとケイジの新たな事実に、

カラドック驚愕。

 

「祖父から孫娘へ」

あ、これタイトルじゃありません。

リィナちゃんの切り札です。

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