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第七百七話 魔法使いバレッサ

あれ?

長くなっちゃった。


最後の西エリアまで辿り着く予定だったのに・・・

<視点 エルフのバレッサ>


はいっ?

なんですか、これ?

あたしに何しゃべれっていうんですかっ?


ええっ?

もう始まってるっ!?

そ、そんな、


うう、あたしただの魔法使いなのに・・・


え、えーと、すいません、

ハーケルンの街の冒険者パーティー、「苛烈なる戦乙女」の魔法担当バレッサです・・・。


こんな感じからでいいんですよねっ?


えっ、余計なことは話さなくていい?

そ、そうは言われても・・・


じゃ、じゃあ気を取り直して・・・



うう、ほんとに何から喋りましょうか。

皆さん、あたしがエルフだってことはご存知なんですよね?


そうです、

ヒューマンの国からは少し離れた広大な森林地帯にエルフ五大都市が存在します。


あたしはその中の一つの街の生まれ。

ヒューマンからは、結構憧れの種族と思われがちですけど、そこに生きるエルフたちにとってはそれほど暮らしやすい土地じゃあありません。


ああ、ええ、別に争いや貧困が存在するというわけではありせんよ。

それほど物騒な事件は滅多に起きませんし、

子供が飢えて死ぬようなケースもあまり聞きません。


ただそこに住む人々の間に明確な上下関係があります。

これは身分や職業の問題ではありません。


魔力。

あるいは魔法の実力。


エルフと言えども生まれてくる者全員が全員、魔力に恵まれているわけではないのです。


もちろんヒューマンに比べれば、全体的に魔力は豊富だし、魔法を使える者の数も圧倒的にエルフが上回っています。


ただし、エルフは閉鎖的な社会ですので、

表立ってヒューマンと関わろうとはいたしません。


そうなるとどうなるかというと、

エルフ達同士の中で明確な上下関係が出来てしまうのです。


日常生活で不自由しない程度に魔法が使えて当たり前。

それができないエルフはあからさまに見下されます。


反対に、他のエルフがそうそう真似できないような魔法を使えれば、その者は周りから一目置かれる存在となるのです。

そうなると就職も楽だし、いろいろな集まりで発言力も高くなっていくわけです。


どう思います、みなさま?




・・・あ、はい、

皆さん当然疑問に思いますよね・・・



じゃあお前はどうなんだ、と。



そう、ですよね。

自分で言うのもなんなんですけど、


普通・・・だと思いますよ。

いろんな意味で。


明らかにあたしより魔法が下手な子たちもいましたし、

逆にあたしよりずっと楽々魔法を使う人たちも見てきました。

そんな人たちはほとんど必ずこっちを見下すような態度に出るんですよね。


私自身、私より使えない子たちに偉そうな態度を取ることはなかったと思いますけど・・・

簡単な初歩魔法すら手こずる子たちを見て、優越感に浸っていたことがなかったのかと言われると・・・



ですけれど。


そんなあたしたちなんですが・・・


どんなに魔法が優れていようとも、上には上がいるもので、

・・・森都ビスタールのハイエルフの人たちや、魔法都市エルドラのダークエルフの人たちには決して敵わないのです。


もちろんあたし達の街でも、時々突出した魔法の使い手が出ることはあります。

それでもなんとかハイエルフ、ダークエルフの平均レベルを超えるか超えないかというところ。


その程度では彼らには決して肩を並べられないのです。


そうなると結局はあたし達の街も閉鎖的にならざるを得ないわけですね。


お互い干渉せず、なるべく自分たちでやっていきましょうと。

その方が嫌な目を見ずに済むと。


もちろん行商人はいますから互いに交易はあります。

滅多にないですけど、強力な魔物が現れた時には協力して事にあたることはあるでしょう。


でもその時だけなんですよ。


もう、あたしは嫌になっちゃったんですよ。

そんな暮らしが。

そして何より自分がそんな色に染まってしまいそうになるのが、どうしても耐えられなかった。



だから街を出たんです。

エルフの世界を出てヒューマンの世界へ。


・・・まあ、

それで話が解決したわけではないのですけれど。


だって、

ヒューマンの街でどうやって生きていけるのかと言えば、

結局は自分の体に染み付いてるエルフとしての魔法の才能頼り。


エルフの中では平均的なあたしの魔力も、

ヒューマンの社会では貴重な存在としてもてはやされるわけです。


・・・あたし、なにやってるんでしょうね・・・



結局は口だけの卑怯者だったのでしょうか。


ただ、ヒューマンの街では、

魔法が使えるとしても、それが全てでないのは確かです。


冒険者ギルドでエルフの魔法使いといえば引く手数多でしたが、

一歩外へ出たら死と隣り合わせのハードな世界。


前衛を務める剣士の方々に比べれば、魔物に襲われる確率は低くなるとはいえ、パーティーの敗北は全員死亡を意味します。


そういう意味では公平とも思えたのです。


そしてある時、

このハーケルンの街のギルドマスターはあたしと同じエルフの人と聞きました。


その人は何故エルフの街を出たのでしょう?

何故冒険者の道を選んだのでしょう?

そしてまた、どうしてギルドマスターの地位に就いたのでしょうか?


私と似たようなことを考えていたのでしょうか。



いつの間にか、あたしはこのハーケルンの街に住み着きました。

最初はオドオドしながら、いくつかのパーティーにお邪魔して・・・

少しずつ経験値を貯めて・・・


けれど人間関係うまくいかなくて・・・


あ、あたしが悪いんじゃない・・・と思うんですけどね。

どうもあたしがエルフとか魔法使いとかの話じゃなくて、

もっと単純に男の人たちの中に一人だけ女性ってのが・・・色々と、

はい、嫌な目に遭ったこともあります。


まあ、詳しく言うつもりなんかないですけど。



そんな時ですよ。

「苛烈なる戦乙女」のテラシアさん達を紹介されたのは。


そしてあの人達を紹介してくれたのが、

他でもない、ギルドマスターのキャスリオン様なわけです。


ちょうどあの人達のパーティーには魔法使いがいなかったようで、あたしのパーティー加入はすんなり行きました。


全員女性ということで、なんの気兼ねも気遣いもなく、ようやくあたしは羽根を伸ばせるようになりました。

キャスリオン様やテラシアさん達には感謝の気持ちでいっぱいです。


あ、一応言っておきますけど、

別にあたしは男嫌いというわけでも、そっちの気があるわけでもないですからね。

いたってノーマルですよ。



だからカッコいい男の人やイカした男性に憧れることは当然ありますが、

・・・だいたい冒険者の男ってロクでもないやつばかりなんです。


たまに、

ごくごくたまにいい男の人がいたとします。


ですけどね、

そんなもん、当然ちゃんと隣に可愛い、あるいは美人さんのパートナーが喰らいついてらっしゃるわけですよ!!

そりゃたまにしかいないカッコいいイケメン男性なんて、ハゲタカのようにギラギラした女冒険者がほっとくわけないんですよ!!



 「そんなこと言ってて、バレッサ、

 お前『銀の閃光』の・・・

 名前なんだっけ、サムソンだかソムサンだとか言うやつに口説かれてなかったか?」


 「何言ってんですか、テラシアさん!!

 そりゃ、話しかけられればこっちも話し返しますよ!

 面白い話してくれればあたしだって普通に話くらいは付き合いますよ、

 ですけど別に口説かれてるわけじゃありませんし、口説かれたとしてもホイホイついていくわけないじゃないですか!!」


確かにあの人、隙あらばこっちを誘ってくるような言動してきますけどね、

総じてあそこの人達はチャラチャラしてますからね、今一つ信用できないんですよ。


 「そ、そうかい、

 けどあたし達のパーティーは、別に恋愛禁止とかないから、その気があるならあたし達に遠慮は要らないぞと言おうとしてたんだが・・・。」


 「・・・はあ、まあ、そうですねぇ、

 そりゃあ、どっかにカッコいい男の人とかいたらいいとは思ってますけどねえ・・・。」


 「ストライドとはどうなんだい?

 あいつとも結構喋るだろ?

 ・・・あ、そうだ、前から言おうと思ってたんだが、あたしの事を一々ネタにはするなよ?」


はい?

確かにストライドさんとはよく喋りますけど、

テラシアさんをネタ?

何のことでしょうか?

ああ、そう言われればというか・・・


 「うーん、ストライドさんは話しやすいとは思います。

 でもストライドさんて、あたしよりテラシアさんに懐いてる感じじゃないです?

 だからあたし達が話す時って、どうしてもテラシアさんの話題で盛り上がり易いってだけだと思いますよ。」


そこでテラシアさんは苦虫でも噛み潰したような表情に・・・

まあ、この人ならやりかねないですけれど。


 「・・・あれはあたしに懐いてるっていうのか?

 女ならなんでもいいんじゃないのか?」


 「ああ、どうなんでしょうねぇ?

 でもあの人、手を出す女の人は選んでるみたいですよ?

 あのギルドの・・・受付嬢のアマリスさんでしたっけ、

 あまり詳しく聞きませんでしたけど、ああいうタイプは危ないとか言ってた気がします。」


 「あの男、意外と慎重なのか?

 ああ、でも、確かにアマリスは裏で何かありそうなタイプかもしれないね。

 しかしそうなるとますますストライドは女を見る目があるということかい?」


 「ううーん、それは・・・あるのかもしれませんねえ、

 ああ、言っときますけどテラシアさん、

 あたしとストライドさんとはもっとあり得ませんからね?」


絶対にないです。


 「なんだい?

 もう、何かあったのか?」

 「いえいえ!

 そういうことでなく!!

 こないだみんなで飲んでた時、

 冗談まじりにストライドさん、すっごい無神経なこと言ったんですよっ!!」


 「・・・それ、あたしが聞いてもいいやつかい?

 それよりお前らあたしのいないところで」

 「ていうかむしろ聞いてくださいよっ!!

 ストライドさん、事あるごとにあたしのことかわいいかわいいとかいうじゃないですかっ!」


 「・・・言うね、毎回毎回よく飽きもせずというか懲りもせずというか・・・。」


ちなみにストライドさん、

テラシアさんには綺麗だとかカッコいいとか照れもせずに言いのけます。

あたしをかわいいと言った直後に。

まあ、テラシアさんについては確かに同意しますけども。

あ、今はあたしの話ですよね?


 「それでたまたまこないだ隣にいたジルさんが、『ストライドそんなに言うならお前ちゃんと口説けよ』みたいな事言ったんです!」


 「ああ・・・それで?」

 「その後、ストライドさん、なんて言ったと思いますっ!?」


 「分からないね、教えてくれないか・・・。」


 「そしたらストライドさんっ!

 『いやあ、バレッサちゃん、かわいいとは思うんだけどさ、付き合ったらオレの恥ずかしい話とか、昨日のデートはどこいったとか、オレがベッドでなんて囁いたとか、その後実際何したのとか、事細かにテラシアさん達に喋られそうでさあ・・・』って言うんですよっ!?

 何それ!?

 もう、ホント最低ですよね、そんな事言うなんて!!」



 「すまん、あたしはどっちも事実でどっちも最低だと思う。」


 「なんでですかっ!!」



今更ながらなんですけど。


「デイアフターデイ」のベルリンダさんと


カタンダ村の魔法剣士ベルナさんとの間にご関係は全くありません。

ただの偶然です。


更に言うと、

メリーさんに最初に首を刎ねられた、

ハーケルンの街の貴族、ベルクロワ・ダリアンテ様にも一切全く完全になんの関係もございません!


あれ?

後一人いたような・・・


???ー?

「私はまだ生きているぞ。

子供? 娘? 知らんな、

何のことだかな。」



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