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第六百九十六話 ダンジョン突入

まだ戦いません。

<視点 ケイジ>


 「よいしょおおおっ!!」


気合いの一声と共に「デイアフターデイ」のウォーハンマー持ちがド派手に入り口をぶっ叩いた。


ダンジョンの入り口を封鎖していたのは大量の土砂を練り固めたもの。

硬度はそれほどでもないが、掘り抜くのは魔物でも骨が折れるだろう。


それを今力自慢の冒険者達でくり抜いている。


地上付近に魔物が集まっているとも思えないが油断はしない。

この場の全員で入り口が拡がってゆくのを注視する。



・・・大丈夫のようだな。

無事に入り口は拡がった。

オレとリィナで真っ暗な奥を窺うが何かがいる気配は感じない。


さてとオレはアルデヒトに目配せしてダンジョン内部に・・・


 「いえ、ケイジ、まずは私。」


お?

記念すべき第一歩をアガサが務めるのか?

オレはもちろん構わないが、万一魔物が潜んでいた場合・・・


あ、アガサさん薄笑いを浮かべてらっしゃる・・・


 「魔物が潜んでいたとしても何の問題もなし!

 『ライトネス』!!」



うむ、


ダンジョン内部が電気が供給されている館のように明るくなったぞ。

光魔法「ライト」が電球のようなものだとすると、

「ライトネス」は全体照明だからな。

まあ、奥の方までは届かないけども。


これで地上一階部分はほとんど陰の部分がなくなる。

オレのイーグルアイが最大の効力を発揮する・・・


と言いたいけど、それ以前にいきなりの光源に魔物の目も眩ませてしまうに違いない。


 「ええええ?

 奥の方まで明るいじゃないですかああ!?

 ライトネスでここまでの明るさがあっ!?」


いい反応するな、エルフのバレッサ。

まあ、光魔法使える人間は少ないそうだからな。


こんな光景を目撃できる機会もそうそうあるまい。


 「オレも・・・いや、なんでもない。」

 「イーヒッヒッ、レックスいま光魔法使おうとしたろ!?

 良かったなあ、もう少しで力の差を皆さんにご披露するとこだったなあ!?」

 「うるせぇ! ファリア!!

 オレは魔法使いじゃないからいいんだよっ!!」



「デイアフターデイ」の連中が騒がしい。

ん?

だが、今の会話の内容は・・・

あのレックスという金髪の男は騎士だとおもっていたが、光魔法使えるのか?


なら・・・経験貯めればいつかクラスアップして・・・



いや、今考える話じゃないな。

さあ、いよいよダンジョンに足を踏み入れるとするか。


このダンジョンは入り口から入った地上部分はエントランスのようなもので、迷路自体存在しない。


それこそ広い空間が拡がっているだけのようだ。


通常であれば、ここで夜露を凌ぐためにテントを張るものまでいるらしい。

魔物がいるのは地下一階以降。


それも滅多に地上に上がってくるものはいないそうだし。



うむ、全員揃ったな。

騎士イブリン率いる「伝説の担い手」チームは外で待機。


赤い髪のテラシアとエルフのバレッサを除く「苛烈なる戦乙女」チームはここで拠点を作る。


オレ達はこのまま下層階への階段を目指す。

道案内は「銀の閃光」がいるから問題ない。

こいつらも地下5階くらいまでならマップが頭に入っているそうだからな。


ふと、そこでアガサの足が止まった。


 「どうした、アガサ?」

 「ここで、みんなに・・・いえ、

 特にケイジやリィナに宣言。」


オレ達に?

改まってどうしたんだ?


 「カラドックが自分の世界に戻った今、

 戦闘で彼の精霊術を期待することは不可能。

 私の魔術はカラドック加入以前の状態に弱体。」



なんだ、そんなことか。

 「全く問題ないぞ。

 気にすることはない。」


オレはリィナと視線を合わせ互いに頷く。

一方、後ろの連中は少し不安そうな顔になっただろうか。


でもなあ・・・

弱体ねえ・・・



地上一階部分は隠れる場所も障害物もない広めのほら穴。

奥の方に行けば岩陰などもあるが、地下へ降りる階段付近までは何もない。


ゆっくり歩いて行けばいいだけのようだ。

・・・うん、天井にも何もひっついてないな。

いたとしてもトカゲとかヤモリくらいか。


おかげでまだみんな会話する余裕はあるだろう。




 「こ、これで弱体してるんですか?

 とんでもない明るさなんですけど・・・。」


プリーステスのベルリンダか。

僧侶系職業と魔術師系職業では、求められる技量も魔力量もそのまま比べる必要ないんだが、

流石にここまで規格外だとな。

彼女も驚嘆するしかあるまい。


そういや一つ思ったことがある。


 「ベルリンダ、だったよな、『デイアフターデイ』の・・・?」


彼女ははにかみながら明るい笑顔を浮かべる。


 「あっ、な、名前覚えてくださっていたんですね、嬉しいですっ!」


名前くらいで、そんな大した話か?

まあ、こっちも肉食系獣人フェイスに気後れせず笑顔を見せてくれるだけでも嬉しいけどな。


 「『デイアフターデイ』って冒険者パーティーにしては珍しいっていうか、地味目な名前だよな?

 ああ、いや、バカにするつもりは一切ない。

 単に気になっただけで。」


それって毎日毎日とか来る日も来る日もって意味だよな?

ブラック企業とやらに勤めてたら、絶対に受け入れ難そうな名前かもしれない。


 「あはっ、そ、それ私が名前決めたんです!

 今のみんなでずっとこんな冒険しようねって・・・。

 誰一人欠けることなく、ずっと、いつまでも・・・。」


お、

ベルリンダ本人だけでなく、

周りの連中みんな恥ずかしそうな顔しやがった。

あの口の悪い踊り子もどきのファリアでさえも。


だが・・・


 「そうか・・・

 それは、いや、凄くいい名前だと思う。

 いいよな、ずっとみんなと一緒にいられたら・・・。」


思わずオレの頭にいなくなったみんなの顔が浮かぶ。


みんなそれぞれの理由で離れてゆく。

それを止めることなんてもちろん出来ないが・・・。


 「ケイジさんっ!

 そ、そう言ってくれると・・・

 嬉しいです!

 ホラ、みんな聞いた?

 凄くいい名前だって!!」


 「い、いや、だからよ、

 みんな反対しなかったろ・・・?

 た、ただなんか小っ恥ずかしいだけなんだよ・・・。」


粗野そうに見えたレックスも顔を赤らめてるな。

パーティーリーダーのガラダスとエスター、それにウォーハンマー持ってる奴は誇らしげな顔になったか。


麻衣さんがここにいたら「フラグが」とか言い出しただろうか?

あ、未だにフラグとかいうものの意味がわからないんだけど。


まあ、こんだけのメンツ揃っていればどうということもあるまい。

秘密兵器も持ってきてるしな。


 「あ、あの、ケイジさん。」


ん?

今話しかけてきたのは「銀の閃光」のヒューズだったか。

彼にはオレ達の荷物を持ってもらっている。


 「ああ、背中の荷物が重いか?

 済まんな。」


背中に背負わせている直方体の箱が結構嵩張るんだよな。

あまり衝撃を与えたり無闇に揺らさないよう細かい注文もつけてしまった。

ちなみにこの街に来るまでは馬車を使っていたから、オレ達はそれほど運搬には苦労していない。


 「あ、い、いえ、それは頑張りますけど、いったい何が?」


まあ・・・

中身を知りたいのは当然かもしれないが・・・


 「知らない方がいい。

 いや、もしかしたら気に入ってくれるかもしれないが、使わないにこしたことはないものだ。」

 「えっ」


この街にくる際、マルゴット女王に渡されたもの。

ここだけの話だが念入りに封印をかけている。


それを解き放ったらとんでもない事態が起きるかもしれないしな。



 「もしかして中にメリーさんなんて入ってないですよね?」


この発言はパーティーリーダーのストライドか。

それに釣られてか、赤髪のテラシアも興味深そうに寄ってきた。


 「ああ、ここのみんなはメリーさんを知っていたんだっけか・・・。

 いや、済まない。

 メリーさんは自分の世界に帰って行ったよ・・・。」


みんな静かになってしまった。


メリーさんはこの街で何をしていたんだろうか?

みんなが優しい表情になっているような気もするから、そんな困ったことはしてなさそうだと思うんだがな。


そこで見かねたのか、サブギルドマスターのアルデヒトが口を挟んできた。


 「メリーのことをよく知ってるのは、オレ達ギルド職員と、ゴブリン討伐戦及び彼女をグリフィス公国まで連れて行った『苛烈なる戦乙女』と『銀の閃光』だな。

 みんな彼女には感謝している・・・。」


 「そうか・・・

 ならこの調査が終わったら、オレが知り合ってからのメリーさんの話でもしようか?

 彼女が何を思ってこの世界から旅だったかなんて、流石にオレも分かるとまでは言えないが、聞いて損な話にはならないと思う。」


バレッサやストライドから「是非!」という声が上がる。

重い箱を抱えてくれているヒューズもだ。


すぐ後ろにいたベルリンダも「私にも聞かせてください」と手を挙げていた。


まあ、お安いご用だ。

この調査が終わったらな。


次回は戦います。

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