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第六百九十四話 腕試し

<視点 ケイジ>


さて、話を今に戻そう。

オレは現在対人戦の真っ最中。

とは言え血生臭い話は何もない。


力強い剣撃がオレを襲う。

なかなかの鋭さだ。

けどな、

オレのイーグルアイは全ての剣筋を見切ることができる。


逸らして・・・打ち込む!!

 「ぐあっ!!」


これで終いだ。


もちろん相手は革の防具を付けている。

こっちの木剣にも布を何重にも巻いてるけどな。

それでもしばらくは立ち上がることは出来まい。


 「そこまで!!」



ここはハーケルンの街の冒険者ギルド。

その裏庭にある、冒険者が利用できる訓練場だ。


今のオレの視界には4〜5人の剣士たちが這いつくばっている。


 「さすが邪龍を倒したパーティーのリーダーだな、

 ウチのギルドには相手になるものなどいないか・・・。」


このギルドのサブマスター、鉄壁のアルデヒトとやらがため息を吐く。


別に腕自慢がしたくてこんな事をしているわけでもない。

一応、ギルド及び冒険者本人達の希望で立ち合うことになった。


ギルド側としては

 「この後、封鎖してあるダンジョン開放のために募る冒険者の品定め」、

そして冒険者達からは純粋に腕試し。


 「さ、さすがSランクの方ですな・・・

 まさか騎士剣術も納めておられるとは・・・。」


オレのそばで膝をつく、40歳前後に見える男はイブリン。

冒険者になる前はこの地方の騎士だったとか。


そこそこの腕前だが、

そろそろ年齢的に前線に出張るのは辛いんじゃないか?


 「ち、ちくしょう・・・

 こ、このあたしが一本も入れられない、だと・・・!?」


赤い髪を大地に拡げて仰向けに寝そべっているのは女性剣士テラシア。

実戦ではバスタードソードを使うという。

なかなかのパワーだった。


多分同じレベルだったなら、オレが力負けしていたかもしれない。


なお、どうしても二つの山盛りに目が行くが、

普段からアガサを見慣れている者としては、しっかり自制することができるからな?


うん、今も彼女の呼吸の度に、

二つの盛り上がりが上下に波打っている・・・。


・・・できるからな?



他にもこのギルドで腕自慢の剣士が何人か。

悪いが遠慮なく圧倒させてもらったぞ。

別に接待する必要あるわけでもないし、される理由もないよな。

互いの実力を見極める目的があるなら、手を抜く方が失礼だ。


 「このギルドに所属している剣士はだいたいBランクまでか?」


ここは結構デカい街だからな、

Aランク剣士がいても良さそうなんだが。


そこでアルデヒトは顔を落とした。

 「我がギルドにも虎の子のAランクパーティーはもちろんいるとも。

 だが例のスタンピードで大怪我を負ってしまってな。

 治癒が間に合って命に別状はないんだが、

冒険者を続けられるかどうかが・・・

 今は休養中ということになっている。」


ああ、それは仕方ないか。

Aランクなら前線に出張らざるを得ないものな。

その時の負担もキツかったろう。


となると後進のパーティーを育て上げるしかないんだよな。


 「無論、あのスタンピード防衛戦に参加して生き残っただけでも、得難い経験だ。

 実際、レベルアップやクラスアップした者たちも大勢いる。

 出来ることなら、そいつら全員ランクアップさせてやりたいところなんだが、それこそまさに我々ギルドの方が対応に追いつけてないんだよ。」


それも仕方ないよな。

まあでも、それをこれからやろうってんだろ?


 「その為にも領内のダンジョン調査を必要とするわけだな?」


 「うむ、ケイジ殿やリィナ殿、そしてアガサにも頼むが、領内の三つのダンジョンの調査を行う。

 あくまでダンジョンが元の様相に戻っていることを確認するだけで、ダンジョンクリアが目的ではない。

 ある程度の階層まで確認できれば十分だろう。

 そこに入る冒険者たちは、各パーティーの希望と我々の審査によって決定する。」



という流れだそうだ。

オレらに全く異存はない。


すると



 「ちぃくぅしょおおおおおおっ!!

 あたしのファイナルスキルを喰らええええっ!!」


後ろの方で女の甲高い声が聞こえてきた。

リィナのいるところだ。


 「ちょっ! ファリア、その技は!?」

 「やめろ! 勇者様になんてこと!?」


一人の女剣士・・・いや、シーフか?

細剣を手にした軽戦士が、息も絶え絶えにリィナに襲いかかったところだ。


やってることはオレと同じ。

自分と同じ特性を持った冒険者たちとの手合わせ。


リィナも同じように多くの冒険者をダウンさせ、最後に残ったのが今の細身の女性ということか。


恐らく彼女もリィナに手も足も出なかったんだろう、

そして一矢報いようと最後に選んだのが自らのファイナルスキル。



 「ハンドレッド・・・エッジィイィイッ!!」


鋭い踏み込みからの目にも留まらぬ連続突き!



・・・まあ、オレには見切れるだろうがな。


リィナの方はどうかと思ったが、

まるでその攻撃を読んでいたのかの如く、リィナは凄まじい剣撃を潜り抜け・・・


女軽戦士の鳩尾にエルボーを打ち込む!


 「ぐぼっ!

 そ、そんな・・・ま、まるで読まれた、みたい、に。」


そこで試合終了だ。



オレはゆっくりとリィナに近づく。

 「おつかれ、そっちも危なげなかったようだな。

 最後のヤツは結構、強い方じゃないか?」


 「ああ、ケイジ、

 多分、油断してたらあたしも危なかったと思うよ。

 ただ、なんか、どこかで見たような戦闘スタイルだったからね。

 それに比べれば一段落ちる感じだったし、なんとかね。」


ほう、

見れば倒れて未だ起き上がれない女・・・


よく見ると軽戦士やシーフというか、

衣装が派手だな?

ヒラヒラと薄いレースも目立つし、

どっちかっていうと踊り子みたいなイメージだな。


 「はあ、さすが勇者だねえ、

 ウチで一番気の強いファリアを歯牙にもかけないか。」

 「おい、レックス、お前もケイジさんに揉んでもらったらどうだ?」

 「あん?

 はっ、どうせまだ勝てねーよ、今はな、

 それよりエスター、お前こそ腕試ししといた方がいいんじゃねーか?

 お前もファイナルスキル覚えたって言ってだろう?」

 「私は槍使いだからね、あまり有意義な訓練にはならないさ。

 やるなら君やソードマスターのガラダスの方が適役だと思うけど。」


お?

こいつらは女軽戦士と同じパーティーか。

見れば全員前衛っぽくないか?

強いて言えば槍使いが中衛としても全員で4人、

それなりに強そうだがバランスはそれでいいのか?


 「彼らは今現在一番Aランクに近いと言われる『デイアフターデイ』というパーティーだ。

 こちらとしては実力は申し分ないとして、すでにダンジョン探索メンバーに認定している。

 今一番の成長株だな。

 もともとそれなりの実力パーティーだったが、あのスタンピード以降、急激に力をつけ始めてね。」


それはいい話だな。

人間なんて何の拍子に大化けするかも分からない。

まあ怪我の巧妙とはこういう事を言うんだろう。


 「だが、アルデヒト、

 こいつらみんな近接武器の使い手のようだが、魔法使いとかいないのか?」


 「うむ、そこが彼らの弱いところと言いたいが、この場にいないだけで、回復術や支援魔法を使える者がいてね、

 だから魔物が強力でも大怪我をして帰ってくるようなことはほとんどない。

 現在、その二人は怪我人の治療に駆り出されていてな。」


ああ、なるほど。

今のタイミングじゃ僧侶や回復職は引っ張りだこか。


 「おい、立てるか、ファリア?」

 「あ、ああ、なんとかね、ちくしょう、

 おい! そこの兎勇者!

 後で酒場来い!!

 このファリア様が次は飲み比べで勝負してやるよっ!!」


なんか凄い無茶なこと言ってる。

まあ、側から聞いてるとそんな悪い気はしないんだが、当事者のリィナはげんなりした顔を見せているぞ。

第一リィナはそんな酒強くないしな。


 「ああ、済まない、勇者様、

 このファリアは口は悪いけど悪気はまったくないんだ。

 むしろファリアは君を気に入ったのかもしれない。」


こいつはさっきの槍使い。

オレと得物が違うせいもあってか、練習試合はしていない。

それでもそれなりの強さを感じさせる。


 「あ、う、うん、それは嬉しいけど、その誘い方はどうなの?」


やっぱりリィナもどう反応していいかわからんよな。



結局最後は、紳士風の優男と他の金髪剣士達に連れられて、例の女はぶちぶち文句言いながら立ち去っていった。


ふと思う。



・・・こいつらどこかで見たことあったか?

トライバル王国へは何度か来たが、この街へは初めてなんだがな。


いや、やはり覚えがないと思う。

冒険者で槍を使う奴なんてそもそも珍しいし、ソードマスターなんてかなりのレアジョブだ。


まあ、オレの気のせいなのだろう。


名前つけるのが大変だった。

他の誰かと被りそうで。


Bランクパーティー、デイアフターデイ


リーダー

ソードマスターのガラダス 一人称、僕


スピアマスター エスター 一人称、私

騎士 レックス 一人称、オレ

軽戦士 ファリア 一人称、あたし


ソードマスターやスピアマスターは、

剣士、槍士、騎士、からクラスアップできます。


パーティーメンバーは後二人います。

あ、そんなに話は長引かせるつもりは・・・

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