第六百九十話 Sランクパーティー出現
危ない・・・
更新ギリギリだった・・・
次回どうしよう・・・
<視点 キャスリオン>
「・・・回復薬の納期はどうしても前倒しは出来ないということですね・・・。
いえ、医療ギルドの方々も精一杯なのでしょう。
交渉してもこれ以上どうにもなりそうにありませんね・・・。」
「ダリアンテ様の方でも大量に発注しているようです。
兵士の方々も大勢犠牲になっているようですので、無理もないかと・・・。」
「・・・・・・。」
そうでしょうね。
その話は当然とも言えること。
私は書類を確かめながら、アルデヒトの言葉を特に反応することもなく受け入れました。
「あの、・・・キャスリオン様?」
「・・・はい? どうしました?」
「あ、いえ・・・なんでもありません。」
アルデヒトは何か言いたいことでもあるのでしょうね?
なら遠慮なく言えばいいでしょうに。
どうも最近彼の言動に違和感がありますね。
まあ、話す気がないならこちらからもわざわざ問い掛ける余裕もありませんしね。
「・・・・・?」
おや、
この私の執務室にいるもう一人の幹部職員が不審そうな顔をしていますね。
彼は完全な事務職で、主に会計の仕事が専門です。
当然冒険者ギルドの必要物資の購入には、彼の承認もいるのでこの場にいるのですが、どうも私とアルデヒトの会話に戸惑いを感じているのではないでしょうか?
ただ、前回も言いましたが、
魔物のスタンピードという最悪の現象が起きたばかりなのです。
現象そのものは終結したとはいえ、被害の回復にはかなりの時間が必要となるでしょう。
そんな特殊な事態に陥っている今、
普段通りの呑気な状態でいられるはずもありません。
だからこの奇妙な空気はそのせいだと、思うのが普通なのでしょうけどね。
「あ、あの、キャスリオン様?
それとアルデヒト?」
「今度はあなたですか?
どうしました、オコーナー?」
「・・・・・・。」
今度はアルデヒトの方が口を塞いでしまったようですね。
そうそう、
言うまでもないと思いますが、オコーナーというのが会計責任者の名前です。
「ふ、二人ともどうしたんですか?
そりゃ未曾有の事態なんですから、
真剣にならざるを得ないのは分かるんですけど、気を張り詰めすぎてやいませんか?
冒険者ギルドのトップとナンバー2がそんな状態だと、他の職員や冒険者にも影響が・・・。」
・・・ふむ。
面白いことをいいますね、オコーナーは。
私がどう返答しようか考えていると、
今回は先にアルデヒトが口を開きました。
「・・・オコーナー、
お前が何を気にしたのか知らないが、オレは普段通りのつもりだが。」
「え? アルデヒト、お前・・・?」
うふふ、
オコーナーの言葉の続きは予想できますよ。
「お前自分で気付いてないのかよ」とでも言いたそうなのを堪えましたね。
まあ、オコーナーの判断は正解ですが、何故そこまで気が張っているのかまでは理解出来ないでしょうね。
そして私も彼に言うべきセリフが纏まりました。
「オコーナー、あなたの気の回し過ぎですよ。」
「え、いえ、でも誰がどう見ても」
「ですが、あなたの真贋を見極める目は大事にしてください。」
「え?」
「本当に。
ギルドを運営していく上では、どんな些細な違和感にも気付かなくてはならないのです。
例えばですが、もし私に万一の事が起きた場合、あなた方がこのギルドを引っ張っていかなくてはならないのですよ?
いつそんな事が起きても慌てないように、心構えをしっかりして下さいね?」
「え? いえ、何を?」
「キャスリオン様!
縁起でもない事を言わないで下さい!!」
おやおや、
今度は私の真意に気付いたのはアルデヒトの方でしょうか。
恐らく、
後数ヶ月もしないうちに、このギルドも大きな変革を迎えるでしょう。
それが、
アマリスとアルデヒトの爛れた関係の悪影響からか、
それともストライドさんが私と一悶着起こすスキャンダルのせいとなるかは、さすがに私も予想できません。
ただそうなった時、私かアルデヒトか、
どちらかはこのギルドを去る事になるでしょう。
となれば、私の目の前にいる幹部職員オコーナーを持ち上げるしかありません。
彼は有能です。
ただし、完全な事務畑なので、
現場の空気や現実を今ひとつ理解できないかも・・・
それだけが不安要素です。
今も彼は私にその将来の姿を測られていることに気づきもしないでしょう。
ですので、私はこれから残された時間の間に、彼の教育を施さないとならないのです。
私の後釜をも務められるようにと。
・・・そして、
アルデヒトはそこまで見抜いていますよね。
もっとも、アルデヒトも私とストライドさんの一夜の過ちは知り得ないでしょう。
まだ今の段階では。
となると、アルデヒトは自分の首を切られることを考えているのでしょうか?
そしてオコーナーをサブギルドマスターに?
・・・どうしましょうかね。
少なくとも今の段階では、
まだアルデヒトの首を切るわけにはいきません。
アマリスとの情事も、彼ら以外には私しか知らないはずです。
今、こんな混乱状態の冒険者ギルドでは、有能な人間、誰が抜けても困るのです。
それにしても・・・
本当にアルデヒトの頭の中では、私との関係はどういうことになっているのでしょうね?
かつて、いえ、彼は事あるごとに私のことは恩人と言ってました。
尊敬しているとも。
さすがにアルデヒトが、思ってもいないことを口に出来るような詐欺師とも嘘つき野郎とも思えません。
ですので、それは彼の本音なのでしょう。
少なくとも私はそう信じています。
彼にとって、私はただの恩人なのだから、
アルデヒトがどこの誰に惚れようが、誰と付き合おうが、それは彼の自由であるし、
その事で私に後ろめたい感情を覚える必要はない筈です。
私に現場を抑えられた時のアルデヒトのあの表情・・・。
私にはあの光景自体がショックだったのですが、一番堪えたのは、あの時のアルデヒトの情けなくも私に対して申し訳なさそうな表情でしょうか。
アルデヒトのあんな顔なんか見たくなかった。
どうしてあの時の、アルデヒトはあんな顔を私に対して向けたのか。
私など彼の恋愛対象ですらなかっただろうに。
アルデヒトは誰とでも自由に付き合えるのだから。
先ほどのアルデヒトの言葉も、彼の本音に違いない筈。
アルデヒトにとっては、私は今もなお敬愛する対象なのだ。
その点だけは、
今も変わってないのだ、と思いたい。
カラーンカラーン!!
「「「!?」」」
一階のロビーから緊急事態を知らせる合図が!?
通常の討伐クエストの依頼が来ただけで、
この合図が鳴らされることはありません。
まだどこかに討伐しきれていない強力な魔物が現れたのでしょうか?
それとも以前メリーさんが現れたように、正体不明の来客でも現れたとか!?
いずれにしても打ち合わせはここまで。
すぐに私たちは一階に向かわねばなりません。
私たちは落ち着いて威厳を示し、
何があったとしても狼狽えるそぶりなど見せてはならないと、
ゆっくりと階段を降ります。
果たしてロビーではどんな喧騒が・・・
確かにその光景はいつもとは違ってました。
ただ机や椅子が乱れているようなことはありません。
この時間にしてはいつもより冒険者の数が多いかな、と思う程度でそれ程の混乱は見えません。
・・・ただ、そこにいる殆どの冒険者が、
ロビーの一つの方角へと視線を集中させていました。
それだけなら、
誰かが暴れているという状況でも、
私たちの街のどこかに厄介な魔物が侵入したというわけでもなさそうですね。
正直、少しホッとしました。
・・・ではこの場でいったい何が起きているのかと。
「あっ、ギルドマスター!!
どうぞこちらへ!!」
受付嬢のアマリスはキッチリと報告をしています。
そう、最近アマリスはめっきりミスが減りました。
アルデヒトを落としたら、もうポンコツを演じる必要が無くなったと言わんばかりに。
・・・それだけに不気味なんですよね。
まだ何か隠しているのではないかと。
いえ、
今はアマリスが私たちを呼んだ理由を。
このロビーにいる冒険者、職員全ての目がある一点に集中していました。
そこには三人の男女が立っていたのです。
私に見覚えのない人達です。
他所の土地から来た人間であるのは一目瞭然。
鑑定を使うまでもありません。
あまりにも巨大な魔力・・・!
その滲み出る圧倒的な強者オーラ。
アマリスが私たちを呼んだのは真っ当な判断です。
先頭に立っていた女性は、
魔力が・・・私でも今まで一度も出会ったことのないほどの異常な魔力の持ち主・・・
ダークエルフ!!
その後ろには二人の獣人!
とても長い・・・あれはもしかしたら魔剣の類では?
一人はその反りが入った長い剣を持つ狼獣人。
もう一人は・・・そっちもただのブロードソードではなさそうです、
剣自体からとんでもない魔力を発している?
若い可愛らしい兎獣人。
三人とも絶対に只者じゃない!!
そして、「彼女」は・・・
豊かな胸を揺らしながらこちらに近づいてきた。
「貴女がギルドマスター、キャスリオン殿?
我が名は冒険者『蒼い狼』の魔導士、ダークエルフのアガサ!!
グリフィス公国冒険者ギルドグランドマスター、ヴァルトバイスの紹介にてこちらに参った次第!!」
え・・・それって邪龍を倒したSランク冒険者っ!!
私Sランク冒険者って初めてお会いするのですけれどっ!?
うりぃ
「こら、最終回、七百話越えそうやな・・・。」
いぬ
「ぼっち妖魔制作委員会の人たちもうずうずというか、落ち着き無くなってますよね?」





