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第六十九話 違和感

ぶっくま、ありがとうございます!


洞窟の中に入って一時間は過ぎたろうか?

ケイジはマップと睨めっこした上で、

他のパーティーが調査した区域に不審な点がないか検証している。


その間にリィナちゃんが小声で私に囁いてきた。

 「さっきはゴメンな、

 なんつーか、あたしのもやもやを消したいだけだったんだよ。」


 「いや、リィナちゃんが謝る事ないよ。

 私だって、知らないヤツと比べられてああだこうだ言われたら気分が良くない。

 キミは間違ってないさ。」


この子はすぐ照れるな。

側から見て丸わかりだ。

 「そ、そうか、

 なら良かったよ!」

 「それより私もお礼を言いたい。」


 「へ? 何を?」

 「まだ私はこのパーティーで何もしていない。

 なのに、既にある程度信用してくれているね?

 じゃなきゃあんな行動取らないだろう?」


そう言われて、あーそうかと頭を掻くリィナちゃん。

 「まー、信用というか、

 昨夜のケイジとのやり取り見て、

 何かウチら上手くいきそうかなって、

 そんな気がしてさ。」


昨夜の?


 「普通なら自分売り込むのに、

 自分が如何に有益かアピールするか、

 ウチらに取り入る為に、心象良くしようとおべっか使うとかするだろ?

 カラドックは全然そんな事しなかった。

 むしろ初対面のケイジに親身に話し込んでたよな。

 さすが異世界の王様とも思ったのと、

 さっきのあたしの話とは矛盾するみたいだけどさ、

 ああ、この人ならケイジの事、絶対に見捨てたりしないよなって気がして。」


ヤバい。

また意表突かれて涙腺が緩みそうになった。

頭ではケイジは恵介じゃないと認識できている。

でも、私の行動パターンは、

彼を恵介として扱っているようだ。

だからこそ初対面のケイジにズケズケ物を言うことが出来るし、

彼の立場にも思いを巡らしているのだ。

そして、その事を私は拒否も忌避もしない。

それが最善だと信じている。

それをリィナちゃんに認めてもらえたみたいで、

それが何より嬉しかったんだ・・・。


私の選択は間違っていないよ、って言ってくれたみたいで。



 「え? あ、ちょっと、王様が泣くなよ、こんなとこで!!」


い、いやまだ泣いてないぞ!

耐えてる耐えてる!!


 「最近、歳のせいか涙腺緩くなってね、

 でもまだ泣いてないから!

 リィナちゃんの期待を裏切らないよう努力するよ!」


それを聞いて彼女は本当に嬉しそうだった。


惠介が、

おっとケイジが惚れるのも無理はないと思う。


 「でもさ・・・。」


ん?

 「ケイジはまだ心を開ききってないと思う。」

 「それは仕方ないさ、男同士だし、

 まだ何も実績ないし。」

異性ならともかく、同性同士だと何かと張り合うのが常だものね。


 「うーん、そういう事でなくて。」

うん、何のことだろう?


 「これは、あたしの勘違いかもしれないけどさ・・・、

 あいつ、怯えてるみたいなんだ、時々。」

 「怯えてる? 何に?」


リィナちゃんはそこで私の顔を見上げてきた。

 「カラドック、アンタにだよ。」

 「怯えるって・・・

 身体ステータスじゃあいつの方が上だし、何でそんな事?」


 「だからさ、あたしの勘違いだとは思うんだけどさ、

 あんたがグリフィス公国の人間なのかどうかが、吹っ切れてないのかも?」


ああ、自分を殺しにきたのかとか言ってたしな。

でもなあ、もう私が異世界の人間だとは信じてもらえたと思うんだが。


そのうちリィナちゃんは自分の頭をポリポリ掻き始めた。

 「ああ、悪りぃ悪りぃ、気にしないでよ。

 アイツも混乱してんのか、あんたが来てから感情の変化が激しいんだ。

 子供みたいに喜んだり、死刑宣告でもされたかみたいに落ち込んだり、

 まあ、顔には出さないようにしてるぐらいだから戦闘になっても影響ないと思うよ。」


何だかな?

私が来て喜ぶ?

まさか恵介の記憶を持ってたり?

いやいや、なら落ち込むこともないよな?

何より私に会って無反応で居られるはずもないだろうし、その理由もない。


それともマルゴット女王関連だろうか。

まさか幼いイゾルテ嬢に変なこと教えてたんじゃないよな?

それがバレたかどうか気になってるとか。


・・・いや、追及は今度だな。




ケイジたちはその間、マップのチェックをしていた。

全てをしらみ潰しにチェックしていくなら1日あっても終わることはないだろう。

それだけ広大な洞窟なのだ。

人が安全に通り抜けることができる空間はかなりある。

二人のエルフは行き止まりの道や中央の各所で鑑定魔法を試しているが、

今のところ異常と思える箇所は見つからない。


これでは北の大地に抜ける道を見つけるどころじゃないな。

魔物やら門番とやらもいる気配がない。

この洞窟はハズレだったということなのだろうか。


そんな時、

私の感覚に違和感が生じた。

精霊術「妖精の鐘」の結界内に何か異物の反応があったというわけではない。

瞬間的にだが、

結界内の魔力の流れが不自然に変化したのだ。


勿論、この結界は地形の凹凸の影響を受ける。

天候や自然現象による変化も起こりうるのだが、

この洞窟内には何の現象も起きていないはずなのだ。

地形と一致しない魔力の流れはあり得ない。


 「みんな!」

私は声を上げた。

何事かと全員集まってくる。

 「どうした、カラドック?」

ケイジの問いに、私はそのままを話した。


 「つ、つまりどういうこと?」

リィナちゃんは自分に分からない事は素直に聞き返してくる。


 「目に見えてる景色と実際のマップが一致してない可能性がある、

 獣人の君らにも気付かれないとは、嗅覚も誤魔化せる類いのものかもしれないな。」


リィナが口に指を当てる。

音を立てるなということだろう。

彼女の聴力はケイジをも上回るのだが・・・


 「ダメだ、異音も感じない。

 あたしの五感全て何も異状はないと訴えてる。」


参ったな、何か確かめる術は?

こんな時に感知系の術者でもいればいいんだが。


 「カラドック、お前が感じたのは魔力の流れの不自然さってことか?」

説明しづらいが、ケイジのその問いは近い表現だ。

 「そうだな、何て言うか、

  道を歩いていてその道の端に、民家がはみ出して建っているのを見つけたようや感覚・・・いや、逆かな。

 住宅密集地の中に不自然な小道を見つけたような、か。」


自分で言ってて分からなくなってきた。

本来、この術は領域範囲内の異物を探知するもので、

有るべきものが無いことを見つける術じゃないからなあ。


 「ならその家? か、道に相当するエリアがあるんだよな?」

 「そんなはっきり分かるものじゃないんだけどね、

 場所的にはそっちの方角だ。

 ただの岩壁があるだけだろ?

 なら魔力の薄い流れは壁に沿って動いていくもんなんだが、

 ここで壁からやんわりと立ち昇るように流れている。」


 「あり得ないことなのか?」

 「そうでもない。

 壁の中に魔力を発生させる何かがあれば珍しいもんじゃない。」


 「ふぅむ、タバサの鑑定でわかるか?」


待ってましたとシャナリシャナリと近づくタバサ。

 「ふふふ、これでカラドック王に私の有用性をアピール、『鑑定』!!」


心の声が漏れてますよ、タバサさん。


タバサの手のひらが光に包まれ、

鑑定で読み取ったデータを彼女は読み上げる。

 「・・・アークレイ北の大洞窟、花崗岩中心・・・。」


あまり有益な情報はないか。

悔しそうに項垂れるタバサ。


と思っていたら視界の隅に揺れる二つの物体・・・

胸を張るように前に出てきたアガサだ。

 「次は私の番、グラマラススーパーダークエルフがスポットライトを浴びる時。」


頼もしいな。

だが何する気だ?


 「待て待て、アガサ!

 お前の魔法は頼りになるが、この洞窟で派手な術はやめてくれよ?」


ケイジの懸念ももっともだ。

私自身、このおかしな魔力の流れを解く方法がないわけじゃないが、

派手な術を使うと上から崩れてくる危険性がある。

花崗岩の部分は頑強だろうけど、

天井部分の組成は調べてないし、

迂闊に火系呪文なんか使ったら酸欠か、

爆発が起きる危険もある。


 「心配は無用、呪文の威力をコントロールするし、破壊力極小な風の魔法を使用。」


風系か、

確かにそれなら私の精霊術に近い使い方が出来るな。

アガサは迷いもなく、呪文の詠唱を行う。


 「『大空あまねく旅する風たちよ、

我が腕に集いて力を溜めよ・・・

 今こそ羽を開きて控えめに暴れ回れ、トルネード!!』」


アガサさん、それ、風系最大呪文っ!!


 


カラドック

「ま、まさか・・・」


ケイジ

「はぁい、いぞるてちゃーん!

お医者さんごっこしましょーねー、

さあさあ、ふくをぬぎぬぎしてね〜?」

イゾルテ

「けいじあにうえさまー、

こーですかー、きゃはは、くすぐったーい!」



カラドック

「ケイジ、君はなんて事を・・・っ!」


ケイジ

「ねーよ!!

カラドック! お前オレを社会的に殺しにきたのか!?」

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