表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
689/748

第六百八十九話 二人で朝食を

前回、話数間違えてました。

こっそり修正しています。


今回も少し長めです。

<視点 キャスリオン>


・・・まあ、

今更起きてしまった事、なってしまった事に慌てても仕方ないですね。


それに私もいい歳です。

大昔だって、冒険者と一夜の過ちを犯したことなんて思い出せば何度か・・・


流石にこの要職についてから、そんな事しでかす筈もありませんけどね。

別に今回の件も、私が脅かされたり力ずくでどうこうされたわけでもありません。

そう、ストライドさんは何も悪くないのです。


ですから大切なのはこの後のお互いの身の振り方。


とりあえず落ち着いてお話しはすべきでしょうね。


 「あ、あの・・・」


くすくす、ストライドさん、

そんな後ろめたそうな顔しなくてもいいのですのに。

結構遊び慣れていてチャラついていそうに見えたのですけど、意外と真面目な方なのでしょうか。


 「昨夜はお互いハメを外しすぎてしまったようですね・・・。

 どうぞもう少しくらいなら、ゆっくりして行ってくださって構いません・・・。

 目玉焼きくらいならご馳走しますよ。」


今日もギルドに出勤しなければなりませんからね。

軽くお話しして、

昨夜のことは無かったことにいたしましょう。


・・・ええ、それが一番ですとも。


そこまで考えて、

私はベッドから降りようとしました。


・・・あら、いけない。

私素っ裸でしたね。


カーテンの隙間から差し込む朝日が、私のくたびれた体に明暗のコントラストを作ります。

もちろん一人きりならそれがどうしたというところなのですが、

若い男の子にお見せするものでもありません。

ナイトローブは・・・と


 「あ」


いきなり腕を掴まれました。

意表を突かれたのでビックリしましたけど、痛いというほどでもありません。


でもいったい・・・


 「あ、あの、キャスリオン様、昨夜は」

 「お互い盛り上がってしまいましたけど、別に記憶がなくなってるなんてことは有りませんよね?」


それで翌朝こんな状況で目が覚めたら、誰だって大混乱するでしょうしね。


 「は、はい、まあ、細かいとこはともかく、流れと成り行きは・・・全部覚えてます・・・。」


 「ならこの後のお話をしましょう。

 別に貴方を責めるなんて事は考えてません。

 むしろ、こんなおばさん相手にしてくれて申し訳ないくらい・・・。

 だから手を放してくれませんか?

 こんなくたびれた体を若い子に見られたくないのです。」


でもストライドさんは手を放してくれそうにありません。

もちろん私も見られたくないというのは本音ではありますけど、今更というのもありますからね、

そんな慌てて恥じらう必要はないのですけども。


 「そんな事ないっす・・・。」


ん?

今ストライドさんは何を否定されたのでしょうか。

その前の私の言葉に何か反論するようなことがあったでしょうか?


 「綺麗・・・っす。」

 「えっ」


ストライドさん、何を言ってるのですか?

意味が分からないのですけれど。


 「キャスリオン様の体・・・綺麗っす。

 美しいです・・・

 おいくつなのかは聞きませんけど、そこらの女どもより全然綺麗っすよ・・・

 ウエストもキュってしまってるし、肌にはシミも弛みもないですし、肌もなんか、透き通るようで・・・

 あ、あの、もうちょっと触らせてください・・・。」



なっなっ

な、なにをいってるのですか、この子は!?


あっ、て、ていうか、いきなり私の下腹部に手を沿わせて、ど、どこを撫でようとしてるのですかっ!?


きやあっ、舐められたっ!?


 「ちょっ、ちょっ!!」


 「分かってます、

 酒の勢いと、あんなことがあったからっすよね?

 でも、昨夜のことは夢とかじゃなくて、本当に起きたこと、

 お互いの顔を真正面から見つめあって、

 お互いの肌と体を確かめ合って、

 お互いの名前を呼び合って、

 ・・・ずっとお互いを求め合いましたよね?」


ああああああああああああ、朝っぱらからなんて事を・・・

い、いえ、確かにその通りなんですけどねっ

今更言い訳もなにも出来ないのですけど、改めて言われると恥ずかしすぎて顔が真っ赤になるのですけれど。


 「いや、オレだってキャスリオン様とこんなことになるなんて夢にも思ってませんでしたよ?

 でも、キャスリオン様が綺麗で美人だなってことはずっと前から思ってましたよ?」


まさか本気で言ってるんじゃないですよね?

この子ったら、そんなお世辞も言えるのですかっ?


 「あ、朝から本当によく口が回りますね・・・

 確か昨日も同じようなこと言ってくれたと思いましたけど、私の体は私が一番知ってますよ。」


 「あ、いえ、ホントですって!

 確かにオレ自分でも許容範囲広い方だとは思いますけど、キャスリオン様は許容範囲どころか、まさにど真ん中のどストライクっすよ!」


ですからそこで足の付け根を舐めないでくださいますか?

変な匂い発していそうなんですけど。


 「すっげぇいい匂いっす。」


きゃあああああああああああっ!?


 「す、ストライドさん、あ、あの!

 これから私は仕事がっ!?」


 「あっ、す、すいません、キャスリオン様の体、あまりにも美味しくて、耐えられなくなっちゃって・・・

 ほら? お尻もこんなに小さくてかわいい・・・」


お、お、美味しいって、わ、私の体はなんなのですかっ

ああああ、お尻撫でないでくださいっ!!


と、とにかく正気に返らないと!!



ようやく体を放してもらえました。

ナイトローブに袖を通してお台所に向かいます。

ふう、全く何なのでしょう・・・


20年くらい昔ならともかく、

こんな歳になってしまった私を・・・

そりゃ、ヒューマンより若い外見を保てるエルフの肌なら、この街の同年代の女性よりかは若く見られるのは分かってましたけど・・・



ふー、

とりあえず目玉焼きとサラダ、

毎朝届けてもらってるパンは・・・ストライドさんと半分こして、

後は作り置きしているヨーグルトくらいですかね、ご馳走できるのは。


コーヒーはその後いつも自分で淹れてますし、分量が二倍になっただけなので、大した手間もありません。


 「美味いっす・・・

 すいません、朝メシまで・・・。」


 「いいえ、お粗末さまですよ。

 それで、改めてこの後なんですけど・・・。」


私の醜聞は構わないのです。

けれど、私がいなくなって、後任があのままのアルデヒトだと、まず間違いなくハーケルンの冒険者ギルドは瓦解します。

 アルデヒトの能力の話ではありません。

 恐らくアマリスはもっと恐ろしいことを仕出かす可能性すらあります。

 そうなった時に・・・

 いえ、そんな事になっても邪魔にならないようにアルデヒトを落としたのかもしれません、あの女は。


つまり私は何があったとしても、今の職務を辞するようなマネだけはできないのです。


そんな話を口から出そうとしたのですけども。


 「あ、あの、キャスリオン様の立場は分かってるつもりっすよ?」


あら?


 「だ、だから冒険者のオレとこんなことになってるのがバレたら不味いってことっすよね?」


 「・・・ええ、そうですね。」


現状把握は出来てるようですね。

それは説明しなくていいのは楽なのですけれど、「それでも」とか言い出したらどうしましょうか?


 「あの、オレ、キャスリオン様に贔屓してもらおうとか、特別扱いしてもらおうとかなんて、微塵も考えてないっすからね?」


ここまでは良い意味で想定範囲内でした。

根が正直な男の子なのでしょう。


ただ・・・この先悪い意味での想定範囲が。

まさか私なんかと秘密にズルズル関係を続けたいなんて言われたら・・・


いえ、ここは私が主導権を握るしかありません。


 「では・・・

 お互い、昨夜のことは忘れましょう。

 この後、ストライドさんは何もなかったように、私の家から出て行ってください。

 そして私は冒険者ギルドにいつものように出勤いたします。

 それで、全て元通りに。」




ストライドさんの目が泳いでます。

これは・・・まさか悪い方に


 「ま、待ってくださいっ!」


ああ


悪い方向に行くのでしょうか。



私も女ですし、一度とはいえ体を許した相手への情も全くないわけではありません。


ありませんが、話がこじれた場合、

他の皆さんに隠し通すのが難しくなるのです。


その場合は・・・


 「ストライドさんには何の不都合もない筈ですよ。

 元に戻るだけなのですから。」


 「い、いや、そうなんですけど、

 あ、あのオレも別にキャスリオン様とどうにかなろうなんて大それたこと考えてないんすけどっ!」


あれま。

じゃあ何も問題ないでしょう。

何故そんな辛そうな顔をなさっているのでしょうか。


 「いや、やっぱり変す。

 おかしいっす、こんなのなんか違います。」


私にはストライドさんが何に拘ってるのか、

何に引っ掛かっているのかさっぱり分かりません。


 「ストライドさん、落ち着いて。

 あなたの言いたい事がよくわかりません。」


 「は、はい、自分でも調子いい話だなってのは、分かります・・・。」

 「いえ、私が分からないのですけど。」


 「あ、そ、そうっすよね、

 え、と、あ、今まで通りでいいっていうのは、冒険者とギルドマスターとしての関係での話ってことっす!」


なんかまたよくわからないことを・・・

あ、いえ、言いたいことはわかってきました。

つまり


 「今後もプライベートな時間でなら一緒に酒飲んだり、食事したっていいっすよね!?」


ああ、もう・・・


ストライドさん一人とそんな事したら、

あっという間に周りにばれてしまいますでしょうに。


やっぱりこの子もポンコツなのでしょうか。


 「それじゃあ、たとえ大人の関係でなくとも、周りのみんなに疑いの目を向けられますよね。

 私はその目すら避けたいと言ってるのですよ。

 つまりストライドさんの要望にお応えすることはできません。」


 「あ、ああ、そ、そうか、

 で、でもそれこそオレ一人と遊んだりする必要ないんですって!

 オレの仲間もなんだったら呼ぶし、キャスリオン様だって他の職員呼んだっていいし、

 オレらだけで贔屓になるってんなら、気心の知れた他の冒険者もいたっていいじゃないっすか!

 みんなで騒げば楽しいですって!」


頭痛くなってきました。


元に戻るどころか、思いっきり変わっちゃうじゃありませんか。


 「そ、それに、ホラ!

 そういう付き合いと繋がりできたら、

 アマリスのクソアマとかアルデヒトの恩知らずとかに対抗できるかもしれねっすよ!」


む?



今のは・・・

多分ストライドさんの思いつきでしょう。

深い考えで言ったわけではないと思います。


確かに上下関係だけの繋がりだけでは、他の職員仲間にしても、アルデヒトに強く出れる人間はおりません。


ですが仕事場を離れても繋がれるような仲間がいるのなら・・・


これは少し考える必要があります。

そもそもこの話は冒険者ギルドの中だけの話。

ストライドさん含む他の冒険者を巻き込んでいいかとなるとまた別の話。


ただ確かに大勢の冒険者の意見も加われば、

アマリスを糾弾したり、アルデヒトも庇えない状況まで持っていく事もできるでしょう。


ううむ、これは難しくなってきました。

ここで答えを出す時間はなさそうです。


 「あ、分かってますよ、

 キャスリオン様はそこの所の線引きをハッキリしたがる方だって。

 でも最初に言ったように、オレ、キャスリオン様の味方っす!

 美人ですし! 冒険者のことよく考えてくれるし!

 いつも真剣に相手のことを思いやってくれるし!

 昨晩の乱れ方も素敵っした!!」


ちょちょちょっ!

褒めてくれるのは嬉しいのですが、一部余計なことまで褒めてくれなくていいのですっ!!


 「お願いします。

 オレをキャスリオン様の味方でいさせてください・・・。」


ああ、どうしましょう。

私の決心がぐらついてきましたっ!

べ、別にこんな歳の離れた男の子にときめいたわけでもなくっ・・・


ないですよね?


 「あ、あのストライドさん、一つだけ・・・。」


とりあえず本当に時間がありません。

私も冷静でなくなってきたかも知れませんが、

一つだけ真っ先に確認するとしましょう。


 「な、なんすか、キャスリオン様・・・?」


 「ひ、一つだけ確認します。

 別にストライドさんも、こんなおばちゃんに惚れたとか恋人になりたいなんてことは・・・」


自意識過剰とも思われるかもしれませんが、最初にハッキリさせないと。


 「あ、それはないっす。」






・・・はあっ?


 「い、いや、キャスリオン様は尊敬してますし、素敵だと思いますけど、別にオレ、まだ一人の女に縛られたくないんで。

 結婚は考えてますけど、それこそそれは冒険者を引退した後の話っすから。

 まだまだオレらは冒険者活動続けるっすよ!」



ああ・・・

ええ、


そうですよね。

ストライドさんてそういう人でしたよね。


分かってました。

別に私も決して夢を見たつもりもありませんので。


とりあえずストライドさんの先ほどの提案は保留にしておきましょう。


次回、ハーケルンのギルドに訪問者が。


あくまで予定です。

そこまで行くといいな・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ