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第六百八十八話 何故こんな事に

以前、ハーケルンの舞台を描き終わったころには既に予定していた展開です。

物語が終わった後日談としてはこんな形にしようと思っていました。


嘘じゃないです。

<視点 トライバル王国ダリアンテ領ハーケルンの街のギルドマスター>


なぜこんなことになったのでしょう。

これは夢ではなかったのでしょうか?


いま、私の目にはよく知ってる天井が映っています。


ええ、私の部屋ですものね。

間違いありません。


いつもの部屋、

いつものベッド、いつものシーツ、いつもの布団、いつもの枕、

 

全てがいつも通りです。


・・・いえ、

ただ一つ、いつもと全く違うことがあります。



あったかいのです。


私の右半身が。

もう、ほんと体が汗ばむくらいに。


ていうか、

めっちゃどデカい物体が横たわっているのですよね。

しかも、規則正しい呼吸の音まで聞こえているし。

あ、まあ、どデカいといっても、平均サイズよりかは小さめです。

単に私の布団の中に、

そんな大きさのものが、

本来あって良いはずのものではないという意味です。



いえ、あの、

覚えてますよ?


お酒飲んだのも覚えてます。

ついつい、立場上言ってはならない相手に言ってはならないことをベラベラ喋ってしまいました。

まずはそこから反省しなければなりません。


アルコールには強い方だと自分で思っていました。

だから理性が無くなることもないと。


「彼」と出会したのは本当に偶然。

私が時々利用する酒場で一人で飲んでいた時に。


そこにはサブギルドマスターのアルデヒトを連れて行く時もあれば、比較的打ち解けている職員達と利用することもあります。


その日は、

その日はどうしてもアルコールを飲まないとやってられないような出来事があって、


一人で



そう、他の誰をも連れていけないような事があって一人で飲んでいたのです。




混乱。


わざわざ言わなくても分かりますよね?

邪龍復活とかいう訳の分からない騒ぎのせいで各地のスタンピード勃発。

もちろんこのハーケルンの街だって起きましたよ、スタンピード!!


たくさんの被害が出ました。

大勢の方が亡くなりました。


冒険者たちだけでなく、

領主様も兵隊達を派遣してくれましたよ。


落ち着いて考えれば、

スタンピードはほんの数日で解決出来ました。

勇者が立ち上がって邪龍を倒してくれたんですってね。

そのパーティーの中に、あのメリーさんがいたなんてびっくりしちゃいましたけど。


それはほんともう良かった事なんです。

被害はそこで食い止められたのですから。


でも、でもやっぱり被害は大きかったんですよ、

私だってギルドマスターです。

その後始末に奔走しなければならないのです。

当たり前ですよね。


配下の職員だってフル稼働させますよ。

それについて文句言うようなヤワな・・・


一人だけいましたよ。

いたんですよ。


そんなアホの子、ウチの職員の中にいないと思いたかったんですけど、

休みが欲しい、働かせ過ぎだ、定時なんだから帰らせてもらうなんて、空気読めない、読もうともしないアホの子が!!


誰のことか分かりますよね?

散々、その片鱗はお聞かせいたしましたものね!


そう、受付嬢のアマリスですよっ!!

はっきり言って、彼女へ説教する時間すら私にはなかったのです。


だから、彼女の対応を、

サブギルドマスターのアルデヒトに一任しました。

同性の上司より異性の上司の方が上手く扱える事もありますよね?


そう考えた私悪くないですよね?



・・・違ったのです。

あの女・・・


恐らくいつかそうなることを巧妙に、

長い時間をかけて計画していのです。


私が彼女を甘く見ていたのでしょう。


アレは・・・

あの女は・・・全て演技だったのです!!


事もあろうに!!

アルデヒトに自分を親身に説得させるように持ち込んで!!


子供でもやらないような失敗をしたり、

うっかりミスやおっちょこちょいを繰り返すのは全て演技!


事もあろうに!

アマリスの糞小娘は私の片腕たるアルデヒトを寝取ってしまったのですよ!!

誰がそんな展開予想出来ますか!?


平時ならまだ分かりますよ!?

い、いえ、分かりたくはないですが、

男女の仲です。

何が起きたとしても私がとやかく口を挟む筋合いはありません!!

そんな資格は私には有りませんから!!

たとえ私の目から血の涙が流れ落ちたとしても!!


ですがですがよりにもよってこんな時期に!

みんながみんな、その身を粉にして、

家族との団欒の時間を削りに削って、

中には愛する者を失った人達だっているのに!


そのどさくさに紛れて狙ってた男を落とすなんてギルド職員として!

い、いえ人としてあり得ないでしょうに!!


あの二人があり得ない時間にあり得ない場所であり得ない行為に及んでいたのを、

元シーフ出身である私の索敵スキルで気付いてしまった時!


同時にアルデヒトの方でも私の存在にお互い気付きあって!!


あ、あ、あの時のアルデヒトの困惑と後悔と衝撃と申し訳なさ全部いっぺんに浮かべたような顔と、

そしてその横でニチャアと笑っていたアマリスの邪悪な形相!!


あの女は!!

全て、全て!!



・・・と

そんなドロドロのマグマとヘドロを混ぜ交わした爆発寸前の感情を抱えたまま、

私は一人酒場で飲んでいたのですよ。


そこへそこへ、

彼は既に他の仲間と飲み終わっていたところ。


そこに私の姿を見つけただけのお話でした。


 「あれっ!?

 キャスリオン様じゃないっすか、

 珍しいですね、お一人で飲んでいられるの。」


もうそこはプライベートな空間です。

あえてギルドマスターとして偉そうな態度を取るつもりなど酔ってなくても有りません。


私は普通に挨拶しただけのつもりです。

でも、彼には私が普通でないことがわかってしまったんでしょう。


冒険者としての実力は今ひとつでも、

ギルドの中ではかなり顔の広い方で、誰とでもコミュニケーションを取れる若者です。


普通に、気軽に、明るく陽気に、

何の気負いもせずに私に話しかけてきたのです。


 「ごめんなさいね、

 ちょっと嫌な事があって、一人で飲みたかったんですよ・・・。」


ギルドの恥ずかしい内情を冒険者の彼に語れる筈もありませんからね。


 「ああ、今回のスタンピードは最悪でしたからねぇ、

 こないだのゴブリン掃討戦なんか、ほんとにまだ平和だったんだなって思い知らされましたよ。

 ウチもサムソンが大怪我しちまったし。」


ええ、最初は彼もスタンピードの騒動で私が疲弊していると思ったんでしょうね。

それが普通ですよ。

普通ならそう考えますよね。


でも


現状は全く違う問題が起きていた。



だから


つい


私も


それが耐えられなくなって


抑えられなくなって


「違うのです!!」


思いっきり叫んでしまったのです。


彼は

私の態度が尋常でなくなってることに、当然気付いてしまいます。


優しい。

ええ、彼は相手が誰であれ、

女性がそんな状態になっていることを見過ごせない若者だったのでしょうね。


 「何があったんすか、キャスリオン様、

 オレで良ければ・・・

 何の力もないっすけど、話を聞くだけならオレにも出来ますよ・・・。」


そこで、

あんなにも他の人間に知られてはいかないと決めていたにも拘らず・・・

私は酔った勢いで事の真相を喋ってしまったのです。



彼も驚いてましたよ。

それは驚くでしょうね。


 「アマリス・・・あの女、

 ぜってぇ信用ならねぇと思ってたけど・・・

 まさかアルデヒトを狙ってたなんて・・・

 ふざけた女だなあっ!!

 そりゃキャスリオン様は何にも悪くないっすよ!!

 この話、オレはどんな事があってもキャスリオン様の側に立ちますからねっ!!」


嬉しかった。

本当に嬉しかった。


こんなに歳の離れた・・・

それこそ自分に子供が産まれていたら、こんな年齢くらいに育っていたとしても何もおかしくない彼にそこまで言ってもらって・・・



二人で意気投合しましたよ。

もうそれはそれは二人で肩組んで一緒にお酒をあおるくらい・・・


時には二人で見詰めあったり、

ふざけてお互いの頬をくっつけあったりして。


ちょっとは、その後の妄想も


それこそあり得ない妄想しながら、そこまでは流石にないよね、と思いながら。





気がついたら

こんなことになってしまいました。


 「う、うう〜ん・・・?」


どうやら彼も目を覚ましたようです。


私はこれからどんな態度をすれば良いのでしょうかね。


 「あ、あれ、ここ・・・」


そして彼は私が見詰めていることに気付き、驚愕の表情を浮かべてしまいました。


 「あ、キャ、キャスリオン様・・・っ!」

 「おはようございます、

 よく眠れましたか、ストライドさん・・・。」


若きホビットの冒険者、ストライドさんとこんな関係になるなんて!


ただこの後どうしましょうか。


少し溜まっていた下書きはこれで尽きました。

次回更新できるかどうか分かりません。

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