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第六百七十三話 地下室の真実

<視点 ニムエ>


・・・どうしよう。

私は今とても困っている。

マルゴット女王から、今回のお別れ会の流れを書き留めるように言われてるのだけど、

今、私の視界の中で繰り広げられている感動的なシーンを的確に表現できる自信が全くない。


それこそ吟遊詩人や、バードスキルを持っている人を呼んできた方が良かったのではないか。

いくらできる子メイドにも出来ることと出来ないことがある。


・・・そう思っていたら、当の女王が近づいてきた。

私にご用が・・・ってわけじゃないわよね。

メリーさんとアスターナ様の所へ向かわれたようだ。


 「・・・正直、妾も心の底からこの光景をずっと見ていたいのじゃが・・・」


途端に慌てふためくアスターナ様。

 「こ、これは陛下っ、

 大変失礼いたしましたっ!

 ついつい我が物顔でこの晴れの舞台を独り占めしてしまいましてっ!」


 「気にするでない。

 本当に本心から妾もいたく心を震わせておる。

 しかし、カラドックとメリー殿に残された時間も少ないのでな。

 悪いがその辺で区切らせて貰いたい。」


 「陛下の寛大なるお心に感謝いたします。

 夫や従者ともども、これで心置きなくメリーさんを送り出せます。」


 「うむ、聞けばカラドックの世界ではアスターナ、其方は妾の遠い子孫ということだな。

 其方のような美しく、そして優しき心を持った者が妾の臣であり、また別の世界では妾の血を受け継ぐ者だったというのは、まさに至上の喜びよ。

 今後も妾やこの国のために尽くしておくれ。」


 「勿体なきお言葉、必ずや夫ともども陛下やこの国のために尽力して見せましょう。」



うん、ダメだ。

アスターナ様とウチの親とじゃ比較にならない。

同じ貴族なのにどうしてここまで差が開くのか。


 「メリー殿も済まぬな、

 それで・・・そなたの求める真実は見つけられたのか?」


確かこの世界に送られた時に、メリーさんには、この世界に探し求めている真実があるって言われてきたのよね?


詳しくはよく分からないけども。


 「・・・・・・。」


あ、まだメリーさん、まともに会話できないかな?


 「こないだ・・・」


あ、大丈夫みたい。


 「ミカエラと・・・

 いえ、聖女ミシェルネといっぱいお話ししたわ。

 あの子も・・・私に気を遣って直接的な表現は避けていたみたいだけど・・・

 もうね、私もだいたい分かっているの。」


何が分かったんだろう。

探していた真実とやらが分かったということなのだろうか。


 「それを妾が聞くのは・・・野暮というものか?」


 「そうね、真実というものは人の数だけあるのだと思う。

 私の真実は、あなたの真実とは大きく異なるのではないかしら。

 だから私の真実をあなたが聞いても、そこに大した意味はない。」


 「なるほど・・・。」


そうなのだとしたら、

メリーさんは満足してこの世界から離れられるのかな?



すると、メリーさんは思い出したかのように先ほどの獣人従者の方へと向き直った。


 「せっかくだから、この話もしておかなきゃだわ。」


 「まあ、メリーさん、ハギルに何かありまして?」


 「ええ、アスターナにも関係あるわ。

 あなたたち家族にはみんな聞いて欲しいの。」


当然、クリュグ様もマデリーン嬢も何事かと身を乗り出してきたわね。


 「私が最後に心残りにしてるのは、あなた方のもう一人の娘、

 いま、世界樹の女神のもとで魂を眠らせてるあの子のこと。」


アスターナ様達の顔色が変わったわ。

もう一人の娘?

確かアスターナ様にはマデリーン嬢しかお子様はいらっしゃらないはずよね?


 「世界樹の女神によると、いつか生まれ変わるにしても、どれくらいの年月が必要になるかはわからないと言っていたわ。

 ・・・まさか、一年や二年でなんて思えないけど、もしかしたら十年後、或いは二十年後に生まれ変わることができるかもしれない。」


あ・・・

そう言えば以前、アスターナ様がご懐妊されてた話は聞いていたわ。

流れてしまったのか、生まれてすぐに亡くなったのか。

話の内容からしてその子のことね。


ただ、そんな悲しい話を聞いてしまった以上、その後は口に出すのも憚られてしまうものだ。

そのせいもあって私も失念していたようだわ。



そしてメリーさんの話はまだ続いている。


 「そうなった時に、あなた達に生まれ変わったあの子を判別できるかどうかも分からないけども、

 もし、あの子に出会えたなら・・・」


そんな奇跡が果たしてあるだろうか。

確率的には絶対に有り得ないとは思うけども・・・、

失った子供に逢いたいという親の願いはよく分かる。


 「もちろんですわ、

 たとえ生まれた国が変わろうとも、種族が変わろうとも私たちの娘です!」


迷いはないわよね。

本当に貴族としても女性としても、アスターナ様は素晴らしいお方だと思う。


 「ハギルとは・・・出来れば両思いにさせてあげたいけど、歳が離れたら親子となる可能性もあるかもしれないわね。

 それでもあの子を大事にしてね。」


 「は、はい、必ずや!

 で、でもオレ結婚できるかな?」


従者身分じゃ結婚はなかなかね、

しかも、獣人でしょ?

獣人同士の方が結婚しやすいと思うのよね。

かえって従者の身分だと同じような境遇の子を見つける方が大変な気がする。



あれ?

マデリーン嬢がモジモジし始めたわよ?


 「う、うふっ、ハギル?

 そ、その、アレよっ?

 このマ、マデリーンが、貴方の子供産んであげてもいいんだからねっ?」


まあ!

なんておませさんっ!!

マデリーン嬢ったら、もう女の顔になってるじゃないのっ!!


 「えっ、あ、い、いえ、そ、それっ!?」


獣人の子もどう反応すればいいのか分からないわよねっ?


って・・・




きゃあああああああああああああああああっ!?


オーガがっ!?

獣人少年の後ろに二匹のオーガが現れたああああああああっ!?


 「はーぎーるーっ?」

 「おーやーしーきーにーもーどーったーらー」


あ、オーガじゃなかったっ、

アスターナご夫妻だったわ!!


だって、だってさっきまで穏やかだった形相があんなに凶悪に変化してるんだものっ!!


ローゼンベルク家は武功で名を上げた貴族、

あの気迫で先陣に立たれたら味方としてはこれほど心強いことはない!


ないのだけど、

・・・敵に回ったらとんでもない恐怖よね・・・。


 「ちょ! ま、待ってくださいよっ!!

 オレ何にもしてないじゃないですかっ!!

 まさかまた地下室になんて連れてかれませんよねっ!?」



 「ふーふーふー、おーたーのーしーみー」

 「じょーせーふぃーぬーがーおーまーちーかーねー」


ジョセフィーヌさん?

女の人の名前に聞こえるわね。

その割にどうして私の腕にさぶいぼが浮かび上がるのだろうか。


 「・・・相変わらず楽しいご家族だわ、

 でも確かにマデリーンの娘なら、血縁的にあの子が生まれてくる可能性は高くなるのよね。」


メリーさんは気にもしてないわね。

彼女らしいといえば彼女らしいけども。


 「い、いやだ、オレ、こ、今度こそ奪われる・・・っ!

 もうオレはおしまいだ・・・

 さよなら、オレの純潔・・・。」


あ、なんか私気づいちゃったかもしれない。

きっとあの獣人少年に新しい世界への扉が開かれるんだわ・・・。


どうしよう、

見たいような見たくないような・・・


うりぃ

「ジョセフィーヌはん・・・

ウチもなんか恐ろしい気がしてきたで・・・」


いぬ

「確かその名前、新宿2丁目にあった『ヌルヌルねばーランド』の店長さんじゃ・・・まさかこの世界に」


シリアスモードで

アスターナ様にフラグが立ったかもしれない・・・


アスターナ

「え、わ、私に何か?」


マルゴット女王

「ううむ、一考の価値はあるかもしれん・・・」


次回は再びカラドックメインです。

最後の戦いかな?

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